ウイルスってなに?
ウイルスは遺伝物質と遺伝物質を囲む蛋白(カプシド),それを守る「殻(エンベロープ)」からなる微生物です。自力では遺伝物質を複製することもエンベロープを作ることもできないので,他の生物の細胞に侵入して細胞がもっている遺伝物質の複製装置や蛋白質の合成装置をのっとり,自分と同じウイルスを複製させて増殖します。
生きた細胞から離れた状態では数日〜20日程度で感染力を失います。
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ウイルスと宿主特異性
ウイルスは種類によって感染できる動物(宿主)と感染できない動物があります。これを「宿主特異性」といいます。ウイルスが感染した動物が必ず病気になるわけではなく,ウイルスが動物の病気を引き起こすのはウイルスが感染する動物のなかでもその一部に限られます。
ウイルスは増殖に適した宿主に感染すると,短時間で増殖しますが,増殖に適していない宿主に感染した場合は増殖に長い時間かかるのが普通です。しかし,ウイルスが体内で生存競争を繰り広げると,増殖スピードが少しでも早いウイルスが一足早く体内で大量のウイルスを産生することになり,徐々にその宿主に適したウイルスが増えていくことになります。つまり,人間でH5N1型が感染した場合,感染した人間の体内で人間に適したウイルスの選別が行われているわけです。ここでウイルスがうまく人間に適応すると人間の体内で増殖するウイルスが生き残り,他の人間にも感染するという事態がおこります。
政府やWHO(世界保健機構)が恐れているのが,この人間に適応した新しいインフルエンザウイルスの出現です。ですから,鳥インフルエンザウイルスの人間への感染に関するニュースでは「人間から人間への感染」が起こっていないかどうかを注意するようにしましょう。(たとえ人間に感染するウイルスが出現したとしても,日本ではよく効く薬を利用することができますから,それほど恐ろしい病気ではありません。) |
H5N1型って?
インフルエンザウイルスはカプシドの種類によってA,B,C型に分けられます。エンベロープに蛋白質でできた2種類の突起(HとN)があり,この突起の組み合わせがH1〜H15型,N1〜N9型まであります。
基本的に,人間に感染するA型インフルエンザウイルスはH1,H2,H3型ですが,H5,H7,H9型の感染が報告された例もあります。(B型インフルエンザも人間に感染しますが,大きな流行となることは少ないようです。)
犬や猫,牛に感染するA型インフルエンザはこれまで報告されていませんでした(最近になってトラや猫で感染の報告がありました)。
<インフルエンザの型と病原性>
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H1 |
H2 |
H3 |
H4 |
H5 |
H6 |
H7 |
H8 |
H9 |
H10 |
H11 |
H12 |
H13 |
H14 |
H15 |
N1 |
ブタ
ヒト
クジラ
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
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N2 |
鶏 |
ヒト
鶏 |
ブタ
ヒト
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
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N3 |
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アザラシ |
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N4 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
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ミンク |
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N5 |
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アザラシ |
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N6 |
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ブタ
アザラシ |
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N7 |
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N8 |
鶏 |
鶏 |
鶏
ウマ |
鶏 |
鶏 |
鶏 |
鶏
ウマ
アザラシ |
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N9 |
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クジラ |
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カモには全ての型が感染します。
赤色で示したなかの一部に特に病原性の高い高病原性鳥インフルエンザが含まれます。
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ウイルスがまざるってどういうこと?
基本的にインフルエンザウイルスが感染する動物は限られていますが,まれに別の動物にも感染することがあります。インフルエンザウイルスは遺伝物質がいくつかの断片に分かれているため,別々のウイルスが同じ個体に感染すると,その個体の細胞のなかで遺伝物質がまざりあい,これまでは存在しなかった新しいタイプのウイルスが生じることがあります。
こうやって生じた新しいウイルスには誰も抵抗性をもたないので,流行が広がりやすくなると予測されています。
しかし現在ではA型インフルエンザに効果のある薬(アマンタジン)や,A型とB型のインフルエンザウイルス両方に効果がある薬(オセルタミビル,ザナミビル)がありますので,新しいウイルスのほとんどに対してもこれらの薬が使えるでしょう。症状が始まってから早めの服用が必要ですので,心当たりがある場合は早めに医師の診察を受けましょう。
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