獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201011-2

Re3:FIPの感染について
投稿日 2010年11月1日(月)10時42分 投稿者 プロキオン

>変異したコロナウイルスが感染することはない。

これは、誰も証明してないと思います。発症に対して、事前にコロナウイルスに感染して抗体をもっていることが条件であると考えられているからではありませんか?
FIPウイルスに感染しても事前の免疫感作が成立していなければ、発症はないだろうという甘い希望的な観測にすぎないと思います。FIPウイルス自身が感染能力を失ってしまっているという事実がはたして、あるのでしょうか?

私が学生時代に卒論を書いている頃、同級生の2人がFIPで卒論を書きました、今から30年以上も前のことです。この時に対象となったのは、3頭のヒマラヤンの同腹子猫でした。アパート暮らしの頃、1頭の雄猫から血縁関係の無い地縁だけの4頭の兄弟猫が感染した例にも遭遇しています。つい最近でも、ある愛護団体にFIPの発生があり、そこで保護されていた猫達(保護した先はバラバラです)に感染が広まってしまったことも知っております。
すでに感染して猫の体内に潜んでいたコロナウイルスが突然FIPウイルスに変異するまでは納得できますが、1頭1頭の猫の体内における突然の変異を待っていたのでは、この病気は、はたしてこのような広がり方をしていたでしょうか? FIPウイルスが突然の変異だけに依存しているのであれば、発症した猫の死と共に、この病気は途絶えていたはずです。
そもそも同居猫という狭い範囲において、ウイルスの変異がそれほどまでに頻繁に起こりえることなのでしょうか? FIPウイルスが感染しないという説の方が不自然なことと考えられませんか? 感染しないのであれば、発症した猫の不運をなげくことはあっても、この病気を恐がる必要はないのではないでしょうか。

また、この病気の本態は、「免疫」にあります。ウイルスに対して免疫抗体が付着して「免疫複合体」をつくります。その免疫複合体に、さらに別の免疫抗体が攻撃しようとして付着します。これを繰り返して免疫複合体の分子量が大きくなっていきます。この成長していく免疫複合体がDIC(播種性血管内凝固症候群)を招来することが、この病気の特徴であるということが、やはり30年くらい前の海外論文にありました。今は、もう少し詳細な研究がなされていると思いますが、それでも、今現在の治療というのも、この過剰な免疫状態を抑制することに主眼が置かれています。
治療においても、インターフェロンの投与も推奨されていると思いますが、ここで勘違いしてはならないのは、ウイルス感染を防ぐ程度の量では目的を果たせないということです。猫の体が、もうこれ以上の免疫は必要がないと感じ取れるくらいの大量でないとならないということです。免疫を抑制するためにこそ、インターフェロンは投与されているということです。誤解が多いところなのですが、ここは重要な点です。

これは、FIP自体が感染症であっても、病態がアレルギー類似疾患のため、それに応じた治療が主体となるということなのです。このあたりの事情を説明しようとすると、どうしても、最後の方で感染症であるということが忘れられがちになってしまうのです。それは、説明している者にとっても、されている者にとっても同様に言えることなのですが。

これで、2つ目の投稿の免疫力を高めるサプリメントについての答えにもなっているかと思います。FIPウイルスが感染するのかという最初の答えも、すでにお持ちであって、確認したかったということですよね。

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