獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201212-85

Re:獣医師の方へ2
投稿日 2012年11月24日(土)17時35分 投稿者 プロキオン

最初の質問タイトルが、「獣医師の仕事」でしたが、そこに記載されている質問内容としては、私は獣医師の仕事としては、極めて狭い範囲に限定されたものだと思います。
ムクムク先生が、お話されているように、小動物開業医以外の仕事に携わっている獣医師の数の方が圧倒的に多いからです。その点を踏まえておかないと「獣医師の仕事」が誤解されてしまうのではないかと不安を感じてしいます。

そこで、私としては、獣医師の仕事を理解していただくために、目を通していただきたいものを2点ほど紹介させていただきます。
1点目は、2007年の「動物感謝デー」の催事に、日本獣医師会が作成した「獣医師の仕事 最前線」という冊子です。こちらは、日本獣医師会のウェブサイトに行って、意見・要望のところから、こういうタイトルの冊子を欲しい旨を告げれば、入手できるのではないかと思います。
2点目は、「朝日新聞グローブ」という朝日新聞の日曜版の新しいものです。2012年1月15日発行の通巻第79号「獣医師たちのたたかい」という特集です。こちらは、公立の図書館、あるいは、朝日新聞等に連絡を入れれば、わかるかと思います。朝日新聞グローブそのものでも、ツイッターを設けているようです。
 http://twitter.com/asahi_globe

「獣医師の仕事 最前線」内容紹介
 獣医師の仕事というと、あなたはどんなことを思い浮かべますか? すぐに思いつくのは、犬、猫、小鳥などの家族の一員として飼育されている小動物の病気の予防、治療に関わる小動物臨床獣医師ではないでしょうか。獣医師はまた、それ以外ににも人と動物の共通感染症の指導や野生動物の保護と治療、動物に関するトラブル、苦情相談のほか、近年は動物とふれあうことによりリラックスしたり、それによって治療効果を挙げている人の精神病や老人病のケアにも携わっています。
 牛や豚などの産業動物と呼ばれる動物の病気の予防や治療、畜産農家に対する技術や薬剤の指導を行うのも産業動物獣医師の重要な仕事です。さらに忘れてならない大きな…。
 動物園や水族館で展示されている動物は、展示動物と呼ばれますが、こうした展示動物を…。
 こうした直接的な動物の病気の治療にだけ獣医師は携わっているわけではありません。もっとも身近なところでは、保健所などで私たちが毎日食べる食品の安全性や飲食店、浴場、クリーニング店の衛生面の監視や指導をし、また肉類の安全性の検査を食肉検査施設で行っているのも獣医師なのです。
 わが国には、毎日大量の食品や動物が海外から輸入されています。これらの安全性をチェックすることを検疫といいますが、その仕事も獣医師の重要な仕事です。
 さらにウイルスの研究などによるさまざまな病気の原因究明や治療法の確立、ワクチン開発など、新薬の開発に欠かすことのできない安全性を確立するための動物試験も獣医師の仕事です。」
と、冒頭の部分で紹介されています。

具体的な仕事内容としては、それぞれの分野で自分がどのような事をしているのかを関係分野の各先生方の言葉で紹介しています。
 農林水産分野での仕事として、岡山県の家畜共済の臨床獣医師のN先生や滋賀県の家畜保健衛生所のI先生の言葉がコラムとして掲載されています。
 公衆衛生分野では、八王子市保健所食品衛生課のK先生と滋賀県衛生科学センターのH先生のコラムが。
 小動物臨床分野では、「外科から内科、産婦人科などすべてを診るのが小動物獣医師」というタイトルでM先生、「人と動物を守るために、ズーノーシス(人と動物の共通感染症)診療ネットワークづくりに努める獣医師」としてK先生が紹介されています。
 野生動物分野では、福島県鳥獣保護センターのM先生と、爬虫類・両生類の診療では、上野動物園のH先生です。
 研究・海外協力では、麻布大学のU先生と国際協力機構のK先生が登場されています。


「獣医師たちのたたかい」内容紹介
 獣医さんと聞くと可愛いペットの治療をイメージしがちだ。実は、インフルエンザなど感染症の世界的な流行を防ぐ役割も担う。家畜診療から人間の食の安全性確保まで、10の現場を訪ねた。

1、「感染症の正体をつかめ コウモリからウイルスを探す」
 アフリカのザンビアで、マールブルグ病やエボラ出血熱の研究のために、コウモリを追いかけている北海道大学のT先生。

2、「動物病院、厳しい競争」
 板橋のH先生、文京区のN先生の話です。H先生は、文系大学を卒業して会社勤めを8年間されてから、酪農学園大学に入学しなおして、獣医師免許を得たのが37歳、臨床医の研修を経て開業して、現在2年目46歳とあります。半径1、5キロ以内に他の動物病院が5軒存在しているそうです。

3、「首都圏の胃袋を守れ 年27万頭、牛・豚を全頭検査」
 こちらでは、都職員になって5年目という女性獣医師のK先生の仕事が紹介されていますが、同僚の同じく女性獣医師が、「店に並ぶ肉ももとは胃や腸に菌を持って生きていた動物だということを忘れないで」と。

4、「口蹄疫の教訓を生かせ 畜産農家をまわり、対策を周知」
 当時、宮崎県に全国から応援の獣医師が大勢送り込まれてきましたが、牛や豚の診療に不慣れな獣医師が多く、初期防疫活動がスムースに運ばなかったことが悔やまれています。この話を語るのは地元の獣医師K先生。
K先生にしても 豚の静脈注射の経験は、それまで無く、「各自治体の公務員獣医師も いざというときのために家畜診療の訓練をしておくべきだ」と述べています。

5、「ペットを救え 先端医療、全国から患者」
 ここでとりあげられているのは、三重県の某先生。CTやMRIに限らず、放射線取り扱い主任者の有資格者では、ここの病院は群を抜いています。「何でそこまでするの? という人も居るだろうが、飼い主さんが望むかぎりはどこまでもやる」とは院長のM先生。

6、「鳥インフル防止 家畜管理、まず文化の尊重」
 国連食料農業機関の鳥インフルエンザの専門家として、ベトナムのハノイに赴任しているI先生。「社会状況も動物への考え方も国によって千差万別。その違いが面白い。」「良い獣医師とは何か?」との問いかけに 「動物のオーナーの多様な考え方を理解したうえで、最終的にどうすべきか、判断を引き受ける。感情や社会状況を総合的によみとる力が必要だ。」

7、「狂犬病、薄れる危機感  船から上陸を警戒」
 日本の獣医師や医師は、狂犬病の犬や人の臨床経験がほとんどなく、人を咬んだ犬が狂犬病だと判断できない恐れがある。危機感が薄い。これはまずいと思ったと狂犬病臨床研究会を立ち上げたのはS先生。
予防接種率を高めるしか防御の手だてはない。まずは獣医師が個々の病院で接種率100%をめざすことだと訴える。

8、「緒についた大学改革  専門医育成、まだ米国頼み」
 獣医学科を有する大学は、全国で16校しかないのですが、この16という数字も、専門家育成という観点からすると、教員が不足している。国立大学では、この不足に対応するため鹿児島大学と山口大学が「共同獣医学部」となるという話です。この組み合わせを端緒として、北海道大学と帯広畜産大学、岩手大学と東京農工大学が共通の講義を設け、連携や再編がすすむことになりそうということが紹介されています。
16しかない大学でも、求められるより高度な教育ということになると再編をすすめていかないと人員が不足してしまうということになります。

9、「枠を超え協力  課題は医師との連携、動き出す国際機関」
 昨年、北大において世界保健機関(WHO)、食料農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)の3つの国際機関の専門化が集まって、医師と連携をスムースに運ぶ必要性が指摘されています。また、東南アジアにおいては、一国の体制が整わず充分な防疫体制に遅れが生じる事が懸念されています。「ひとつの国では難しくても、国際機関が協力すれば連携が図りやすくなる。具体的な取り組みの輪を広げたい。」とのこと。

10、「動物愛護の悩み 生かすべきか死なせるべきか」
 福島県三春町の福島県動物救護本部第2シェルターのW先生を紹介。と同時に全国で約1200箇所ある動物の引き取り場所があって、そちらでは被災地で保護された数よりもはるかに多くの命が処分されています。そんな中で2010年度には約7000頭の処分が実施されたという千葉県の愛護センターのN先生は、「嫌ですよ。動物を飼う時の一番つらいところを任されている」と述べています。
田園調布のT先生は言う、「動物は口をきかないので、人間の勝手な感情を投影しやすい。だが、動物は人といて本当に幸せなのだろうか。動物と行き続けることの「業」に、人がどこまで気づけているのか、と思う。」





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