獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201212-93

Re2:犬猫の殺処分
投稿日 2012年12月10日(月)12時20分 投稿者 プロキオン

>ペットショップ 動物病院などで殺処分される犬猫を2.3匹おいて募集して下さいませんか?子犬ではないので2週間ぐらいのトライアルも必要だとは思いますがこのままでいいのでしょうか?

このままでよいわけはないのですが、私もムクムク先生と同じように考えています。

私の同級生の中にも、今回の提案と同様のことを考えている者もおりますが、残念ながらというか、彼は臨床獣医師として動物病院で働いているわけではありません。つまり、提案に賛同してくれても、実行には移してはくれないでしょう。
また、彼が動物病院で臨床に携わっていたら、逆に、そのような考えにも至らなかったのではないかと思います。

何を言いたいのかというと、今回の提案というのは、決して解決策とはなりえないであろうということです。
大抵の動物病院においては、バックヤードにおいて犬や猫を飼育しているからです。とくに、動物病院に捨てていかれる猫の数は、けっこうな数になりますし、治療後引取りにこないで放置の犬というのも、しばしば存在します。
動物病院は、動物の健康の為に存在しているわけであって、犬や猫を求めるためのものではなく、そこへ来院する人が「ついでに」動物を引き取っていくためにあるわけでもない。そのような引き取り方が一般的であるのなら、病院のバックヤードに犬や猫達が、居るということが最初からありえるわけがないのです。
つまり、今回のような提案が成立しないであろうということを、動物病院で働いている者なら、最初から認識しているわけなのです。

この提案を進めたいのであれば、「2週間ぐらいのトライアル期間」の後に、確実に動物病院から、犬を引き取ってくれるという保証とその裏づけとなる収容施設が必要になると考えられます。それがないうちは、動物病院のバックヤードの動物を増やすだけの提案でしかないでしょうし、それでは、動物病院でも困ってしまいます。

動物病院という存在は、決して非常なわけではありません。むしろ、非常になれないからこそ、そこに付け込まれて、捨て猫・捨て犬を押し付けられて来ているのが現実です。あそこの病院では、犬や猫を引き取ってくれるという噂でも流されようものなら、収拾がつかない事態となってしまいかねないのです。
今回のような提案は、動物病院とすれば、また動物病院に責を押し付けられるのかという感触のものであって、捨て犬や捨て猫をしている者の責任こそ問いただして欲しいと思うのではないでしょうか?

また、わが国における動物の虐待云々という話は、単純に語られる話でもなく、実際のところ処分されている頭数となったら、欧米の方が多いのではないかと考えています。
欧米にしても、「処分してはならない」とか「頭数が多い」という話ではないはずであって、問題とされているのは、「処分の方法」のはずなのです。そして、そのことが問題となり続けることの背景も知っておかないとならないと思います。
昭和30年代〜40年代に「野犬撲滅運動」が始まった頃、厚生省推計で全国に100万等を超える野犬が徘徊しており、年間24000件を超える野犬による咬傷事件が発生していたのです。東京都町田市において、1歳の男児が全身20箇所を咬まれるとか、北九州市では、2歳の女児が野犬の群れに咬み殺されるというような事件が多発しており、犬を捨てた飼い主の責任が問われる一方で、当時、東京都が毎月8000頭の犬を捕獲しても飼い主が引き取りにくるのは、1000頭に満たなかったとされています。

この残りの7000頭を毎月ごとに、どのように処分しなくてはならなかったかといえば、決して容易な話ではなく、現場に負わされた責任というのも、軽々しく語ることそのものが失礼に当たるように考えています。
その裏にあった話というのは、また別に項を改めます。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。