獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201312-15

Re2:生後すぐ人に育てられた猫について
投稿日 2013年7月10日(水)12時26分 投稿者 プロキオン

こちらの質問にも、すでにムクムク先生からのレスがついており、概ね同じ意見です。

>ヒトでも母乳の方がいいとか言われていますが、完全に人工ミルクでは、免疫がつかないなど、健康面での心配があります。体の弱い子にならないでしょうか。

これは初乳による受動免疫のことと心配されているのだと思いますが、すでに生後1〜2週齢を経過しているのであれば、おそらく初乳は摂取済みだと考えられます。
初乳は分娩直後のわずか数日しか泌乳されず、分娩後72時間くらいを経過していれば、すでに初乳とは見なされませんし、初乳の役目もはたせません。

子猫の目が開くのは、だいたい10日頃になりますが、目が開いていなくても体重が200〜300gくらいの範囲にあれば、その子猫は初乳を飲んでいると考えてもよろしいのではないでしょうか。
逆に言い換えますと、初乳を摂取していない子猫であれば、母猫が面倒をみていないということになり、この時点まで生きてくることができただろうかという話しになりますし、人間が分娩直後に母猫から引き離してしまったというようなケースでないと初乳未摂取ということは置きにくいことになります。

また、現時点以降の人工保育ということになりますと、猫用のミルクを量と濃度を経時的に調整しながら、哺乳しているかぎり、とくに問題となるようなことはないと思います。

>次に性格、素行面での心配です。母親から早く引き離された子は凶暴になるとか、怖がりになるとか、兄弟と遊んだことのない子は加減がわからないので、強くひっかくとか言われています。実際私はそういう猫で苦労したことがあるのですが、今回もそのような猫になる可能性があるでしょうか。


所謂、社会化のできていない、猫語を話すことができない猫にならないかということですね。
こちらは、人間に育てられた猫においては、常にその心配はつきまとうことになると思います。ムクムク先生は、「自分を人間と思っている猫」と表現されていますが、まさにそのとおりではないかと思います。

猫は肉食獣であって、食物連鎖の観点から考えれば頂点に位置する動物であると言えます。(実際には、より大型の動物がおり、猫にとっての脅威も存在していますが) その分、赤ちゃんの時には無防備でごくごく弱い存在でもあります。
そのためか、新生児や赤ちゃんのときには、それこそ自らの安全を100%母猫に依存してしまっています。この母親がある日突然いなくなってしまうと、その100%の依存を哺乳してくる誰かに置き換えることになります。そのためか、私(子猫)とあなた(保育者)との2人関係以外の第三者を敵あるいは警戒対象としてしか見なす事ができなくなってしまうことになります。
母猫がいて、他に兄弟猫がいれば、自分は猫であると認識でき、猫として育っていく事ができますが、スタートの時点から私と人間しかいなけば、私は人間とおなじ生き物として認識し、育っていくこととなります。
そして、そのような猫にとっては、自分と育ての親以外は、必要のないものなのです。餌も水もすべて育ての親が自分のために用意してくれるわけですから。当然、それ以外の第三者は、2人の世界に侵入してくる余計な者ですから排他的にもなるわけです。

私のところでは、猫が他にもいっぱい居ましたし、中には気の良い若猫がいて、そんな子猫でも舐めたり遊んだりしてくれる個体がいました。
つまり、育っていく過程において、どうも自分は人間というよりも猫という生き物に近いのではないかと考える機会をもつことができたということになりますね。大人の猫は、哺乳期の子猫をどうも違う生き物と感じて、忌避する個体が多いのですが、興味をもって自分から近づいてきてくれる猫(大抵は好奇心の強い若い猫)がいてくれると、その猫を通じて猫社会への橋渡しが可能となるようです。

目が開いていて、母猫や兄弟猫を認識できている時期を過ぎてから、子猫の受け渡しをすることが望ましいわけなのですが、それが不可能なケースですと、できるだけ機会をもうけて「あなたを私」以外の第三者が大勢存在していることを認識できるように、他の人間や猫達との接触ができるように積極的に働きかけた方がよいでしょう。

今回のケースでは、子猫の受け渡し時期が先にできそうなので、この点を注意して時期を選べば、通常の子猫の譲渡と同じようにできるのではないでしょうか。
また、子猫の付き合い方となりますと、先の質問の際にもレスを下さっているsumireさんが多くの経験をお持ちではないかと存じます。




>また、その他、母親に兄弟と育てられた子と違うと思われることがあれば、教えてください。

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