意見交換掲示板過去発言No.0000-201312-43
Re3:狂犬病集団予防注射 |
投稿日 2013年8月1日(木)11時55分 投稿者 プロキオン
>地域によって異なる可能性があるのですね 地域によってはありえるということはないでしょうね。あるとすれば「地域」ではなく「獣医師個人の問題」だと思います。 今どき、「つかいまわし」を認めていますという回答が獣医師会からあるとは、とても考えられないことですし、それ自体があってよいことでもありませんので。 私の県の獣医師会では、シリンジも注射針もすべて前年度の注射実績の1割り増しの数が、狂犬病ワクチンと伴に事前に各動物病院に配布されてきますので、余ることはあっても足りないということはおこりえません。 そして、ワクチン接種料金も、接種した獣医師本人に直接渡るということはなく、一旦、獣医師会に入って、ワクチン代・シリンジ代・消毒薬等の必要経費と税務署に支払う消費税を別にしてから、集合注射に参加した獣医師の人数で均等に分割してから、支払われます。つまり、接種した地域によっては1000頭接種する人がいても、400頭接種した人がいても、一人ひとりの獣医師は同じ金額を受け取るというシステムになっています。 ( 経費がすべて獣医師会持ちであっても、提供した労力が異なることになりますが、毎年同じ地域を受け持つというのではなく、地域をローテーションするということで不公平が生じないようにという調整の仕方をしています。 ) また、病院で接種するケースにおいても、ワクチン接種証明書を獣医師会が発行していますので、この発行枚数に応じたワクチンを必ず購入することとなっています。 これは、ワクチンが1バイアル10頭分になっており、最後の10頭目になってワクチン量が足りないということがおきないように製造メーカーは多少多めに入れているので、接種頭数が増えていくにしたがって、100頭も接種すると5〜6頭分のワクチンが浮いてきてしまうということがあるからです。 そういう書類上存在しないはずのワクチンによる不正ができないように 「あれ〜、ワクチン足りているけど…」ということも大目に見ないということを獣医師会が目を光らせているわけです。 なぜ、獣医師会が取り仕切っているかと言うと、狂犬病は「狂犬病予防法」という法律で接種が義務付けられており、これは国が決めている事です。 そして、この法律にもとづいて、各県にも「狂犬病予防条例」が設けられており、ワクチン接種の実務は県を始めとする自治体が責務を有するからです。が、実際にワクチンを接種することとなると、実務担当者として獣医師が必要であり、この実務を県や市町村を介して獣医師会に委託契約して実施しているからです。 責務が県や市町村に「行政接種」であるため、ワクチン接種料金というのも、獣医師会が単独で決めることはできません。これこれの料金にしたいということになりますと、県の主務課に要望を出して、県の方でOKがでれば、関係条例の変更という形で、これを県議会にかけて承認してもらうという手続きを経なくてはなりません。 ちょっと面倒なのですが、実際、私の県では値上の申請をした際に議会が空転していた時期にぶつかってしまったことがあり、審議にさえかけてもらえなかったこともありました。それでも議会の承認さえ受ければ、県の「手数料徴収規則」を改定して、新料金で接種すると言う運びになります。 まあ、狂犬病のワクチン接種というのは、このような背景がありますので、いい加減なことができないようになっていますし、また、注射事故が発生した時の責任の所在というのも国が負うというような文書も存在しています。 そういう取り決めがあって始まった集合注射ということになります。 もっとも、すでにその経緯を知っているという獣医師さん達は、年配となられていますし、今の大半の獣医師達は、国に代わって接種しているという認識を欠いていたり、成り立ちを知らないまま接種している者が多くなってしまっているようです。 私の県でも、犬に直接接種するではなく、「牛乳に混ぜて飲ませておけ」とワクチンバイアルを飼い主宅に置いていってしまった者がいたり、シリンジを持つ手が震えて犬を捕まえている飼い主さんの手にうってしまうを何回も繰り返す者がいたりして、そういう者たちを何とかならないかと市町村の担当者から相談されて対応してきたりした経過があります。 上記のワクチン量の不正を揺るさないシステムも、他県にあった毎年半分のワクチン量しか接種しない者がいたという事例に基づいています。 簡単に言いますと、法律で接種を義務付けた以上は、国に責任があり、その国に代わって獣医師会が委託を受けているからには、キチンとした接種でないとならないということになります。また、そうあるためにさまざまな経緯もあるということにつきます。 これは、付則とも言うべき内容ですが、昭和23年〜30年頃までの東京における狂犬病の発生例を見ますと、ワクチン接種を受けているのにも関わらず、発病してしまったという例が、そこそこあったようです。 このような現象は、流行当初に多く年次を経ていくにしたがって、急速に減少していきます。この事を調査された方は、実際にウイルスの接種試験の結果にもとづいて、考察されていますが、「流行地での子犬、特に初回注射に問題がある」→「潜伏期の犬でワクチンで防御しきれなかった」「ワクチンの抗体産生量に問題があった」ということのようです。 これが何を意味するかというと、「狂犬病はますます流行する、ワクチンは欠乏する、ということになると結局は闇取引となり、入手したワクチンも高価な為か、一部には有効量が注射されないことにもなり、更には薄められたワクチンが使用されるまでに追い込まれてしまったようです。」ということなのだそうです。 なんというか、流行当時であってもというか、流行当時だからこそというべきか、その頃から、キチンとした接種がなされていない事例というのはあって、それを踏まえた上で、キチンとした接種にしなくてはならないという活動が続いてきたことになります。 私も年代的にいけば、そのような事情や背景を知らない世代なのですが、食品Gメンをしていた当時に保健所に籍がありましたので、担当者の業務内容を知る機会がありましたし、先にあげました「手が震える獣医師」については当事者が不当に狂犬病集合注射から外されたと「行政監察局」に訴えた際に、獣医師会担当者がたまたま不在で隣の席の私が行政監察局から聞き取りを受けるはめになった経験があります。 今の時代となってしまうと、「行政接種」である狂犬病ワクチン接種の本当の姿を知らないままの獣医師が普通なのでしょうから、その意味では妙な手抜きを考えてしまう獣医師が10年前や20年前よりは、出てくる可能性が高いかもしれません。 伝染病というのは、そのような人間の油断を見澄ましたかのように発生するものなので、ちょっと心配になります。 消費税の段階的値上が予定されておりますので、私の県の獣医師会でもその値上にどのように対応するべきか頭を悩ませているそうです。
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