意見交換掲示板過去発言No.0000-201401-191
Re4:ノラネコの耳カット |
投稿日 2014年7月15日(火)19時42分 投稿者 プロキオン
耳介の切除以外に何か方法がありませんかという主旨の質問かと受け取りましたが、何か違っていましたか? 耳の切除というのは、ネットの中でいろいろ意見があることであって、賛成だけでなくひじょうに反発のある行為です。 そして、実施している方達にとっては、なんてことは無い事なのかもしれませんが、反対している方達にとっては「虐待」に他なりません。双方の意見を拝聴して、どちらをとるかは執刀された獣医師の気持ちが優先されてもよいのではないかと考えています。 おそらく、執刀された先生は、そのような騒ぎに巻き込まれたくなくて「傷が化膿するから」と婉曲に表現されたのかもしれません。 所謂TNR運動の場合、手術してすぐに猫を放獣してしまうことが多く、術後の管理や抗生物質の投薬もなおざりにされてしまっていることが多く、執刀した者とすれば、そのような状況でよいのだろうかという疑念が付きまとうことは多いものです。 (きちん抗生物質が投薬されていれば、耳の傷が化膿するということもないはずですので) そして、このような運動というか活動をされている方達は、どうも猫の管理責任というものがやはり一般の飼い主さんと比較して劣るように危惧されてなりません。 これも、各地においてそのような猫達が反発されている地域住民の方から迫害を受ける原因となったりしています。 よく自宅敷地内にトラバサミを仕掛けたりする話しを耳にしたりしますが、県内では人間同士の衝突から猫が空気銃で撃たれるという事件もありました。 このような人間同士の衝突まで招いてしまったケースとなりますと、標的はいきおい猫自身ということになってしまい、反発している側から見れば、猫の耳が切除されているというのは、私を狙ってくださいといっているようなものです。 次に、やはり実例があることなのですが、自由に屋外に出している猫の場合3軒先にまでいったら野良猫と区別ができません。具体的には、ある若い雌猫がいまして、これがひどいヒゼンダニに罹患していてAさんがなんとか捕獲して病院へ連れてきました。ダニの治療も順調に進み、次に避妊をして欲しいという話になり私のところで手術しました、この4月の話です。 ところが手術が終了してから、飼い主だと名乗る人が現れたようです。私のところでは術創の保護のために洋服を着せて返しているのですが、その洋服をみて誰かが手術をしたのだということは知っていたらしいです。洋服も脱がして抜糸も終了してから、この猫はうちの猫ですとAさんのところへ名乗り出てきたということのようです。 猫は法律上は物品ですので、かってに手術したとなると損害賠償の対象となりえます。もめたのですかと問うたのですが、ダニの治療も避妊手術もやってもらってしまったので、かえって好都合ということだったようです。これも首輪のように誰にでもわかる飼い猫の印があれば、Aさんだけがお金を支払うということは起きなかったと思います。 マイクロチップの方も2年程前にてっきり野良猫だと思っていた猫が避妊手術をしようとして、マイクロチップが挿っていたという事がありました。 3軒先へ行ってしまえば飼い猫と野良猫の区別がつかないわけですから、飼い主が存在していることが誰にでも認識できる形での印は必要だと思います。この点において耳の切除は万人に共通の印とは言えず、逆に反発のある地域では猫が被害を受ける印となりかねない危険性があります。 また、耳の先端を少し切るということなのですが、この少しが「共通」ではありません。出血が僅かで済むような遠慮した範囲ですと、野良猫同士の喧嘩傷で耳先が失われたのと区別がつかない場合があります。逆にはっきりとわかるようなレベルまで切除すると、さすがに痛々しい状況となります。どれだけ切除するという全国で共通のきまりはなく、それこそバラバラでこれが一般的と言えるほどの基準は存在していません。 手術してしまったら、屋外にそのまま放獣してしまい、あとの管理責任を負わないということが横行しているようであれば、耳の切除はこのましいものとは思えません。 逆に猫に危害が及ばないようにと考えても、一度切除してしまった耳をもとの形態に戻すことは不可能です。避妊手術ですら、マスコミに登場されるような人間が堂々と反対意見を述べているような現状があれば、元に戻すことができない耳先の切除が首輪の装着に勝る手段とは言えないように思います。 Aさんのケースにおいても、耳先の切除が実施されていれば、好都合という話だけでは終わらなかった事でしょう。 室内であろうと屋外であろうと給餌されている猫であれば、それは野良猫ではありません。飼い主がきちん責任の所在を示してその猫を守る責任があることになります。 動物病院にしても、首輪をつけている猫をかってに手術するわけにはいきませんし、飼い主がいることを誰にでも明確に示す事ができるのは、首輪の方がはるかに適していると私は考えます。何よりも元に戻すことができない傷をつけるというのは、牛や豚のような肉畜での管理において実施されることであって、伴侶動物に対して相応しい行為ではありません。他に方法があるのですから、そちらから考えられてしかるべきことかと思います。 ましてや、自分がつけた元にもどんせない傷が原因でその猫が不幸な目に会うなんて、獣医師としては考えたくも無いことですね。
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