獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201601-45

Re2:オフロキサシン点眼の用量は?
投稿日 2016年3月18日(金)11時03分 投稿者 プロキオン

実際に患者を新札していない者が治療についてあれこれ口を挟むのは、慎まなければならないことなのですが、ちょっと気になったことがありましたので。

>飼い犬が上部1/4ほど角膜がえぐれてしまうほどの傷を

この上部1/4という表現は、角膜の厚みに対しての1/4なのか、それとも角膜の位置としての情報/4ということなのでしょうか?
角膜はもともとドーム状の形態をしているので、角膜中央部において最も突出していることと、これを覆っている涙の量が少ないため、角膜潰瘍は中央部に起き易いということがあります。
それ故に、通常の潰瘍であれば、涙液量の少ない中央部にまで涙や点眼液がいきわたって乾燥させないということが必要となります。
ただ、角膜表面が保持していることができる液体の量というのは、およそ30μlくらいであり、点眼液の1滴が50μlくらいです。つまり、点眼量とすれば1滴でもよいことになります。
それでも、実際には、瞼の裏の結膜と角膜への移行部の結膜が形成する結膜嚢の中に細菌が存在しますので、この部位を清浄化するために2滴とか3滴とか、1滴以上の点眼が指示されることとなります。
タイトルにある点眼の用量というのは、この点眼量ではなく、点眼回数のことのようですが、角膜表面に点眼薬が保持されている時間を勘案してのこととなります。
痛みが強くて流涙量が多いようであったり、熱を持っていて乾燥しがちであるとかであれば、これは基本となる点眼回数よりも増やしていかなければなりません。この点が実際に患者を目にしていないと判断ができませんので、なんとも言えないこととなります。

もっとも一読して、1時間ごとに点眼とありますので、これは別の意味で容易ではないことですね。
犬も飼い主も休む事ができませんし、頻回すぎる点眼となると周囲の角膜から分泌される潰瘍の修復物質が潰瘍を充填してくれるという現象に影響を与えかねません。
潰瘍が深かったり、大きすぎたりする症例では、点眼薬以外の処置も必要になります。例えば、犬用のコンタクトレンズであり、瞬膜皮弁であったり、角膜の放射状切開であったりです。

また、ニューキノロン系の抗生物質においては、この物質を安定な基材とするために酸性もしくはアルカリ性に傾けた塩基の形で製造されています。このことは、これらの抗生物質が刺激性を有していることを意味します。
簡単に言えば、潰瘍の傷が深いようであれば、点眼の都度患者である犬は不快感を感じていることとなり、点眼を嫌がるようになったり、眼を擦ったりするようになるかもしれません。点眼の後に眼を擦られちゃうと、ちょっと不都合ですね。このようなケースですとコンタクトレンズとかエリザベスカラーが必要となります。

そして、1/4というのが、位置としての1/4というか角膜辺縁に生じた潰瘍の場合ですと、睫毛や異物寄生虫等々の別の要因が関わっていることが多いですので、この原因をあきらかにしておかないと治癒がすすまないことがあります。

通常、角膜潰瘍の治療にあたっては、「高齢犬や猫の潰瘍は治りにくい、治らない事もある」という認識が求められます。
10歳以上であれば5〜6歳の子の倍以上の時間はかかると考えておかなくてはなりませんし、15歳以上であれば、治らない場合もありえます。これらは、角膜表面のケラトサイトの活性が年齢に応じて低下してくることに起因していますので、いたしかたのない面があります。
それ故、角膜潰瘍のグレードを判定して、手術が必要な症例はその時期を逸してはならないと思います。もっとも、9割の症例は点眼薬で治療が可能だそうです
また、それ故に潰瘍や結膜嚢に存在している治癒の妨げとなる細菌のコントロールが必要であって、感染している細菌の種類とそれに応じた点眼薬の選択が求められます。

おそらく、潰瘍の傷が深いので「1時間ごとに点眼するくらいの気持ちで」という意味なのではないかと想像していますが、本当に1日に24時間点眼するとなると、これはむしろ支障が出てしまうように思います。
犬のと潰瘍の状態を勘案して点眼するというのが、基本だと考えます。


以上、私が書いたことは、眼科に強い師匠の受け売りであって、私はただの街医者であって眼科に強いわけではありません。眼科に必要な器材も用意してあるわけではありません。
これを言っておかないと、私には手を出しかねる眼科の患者さんを紹介してくる先生もいますもので。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。