獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201601-47

Re:潰傷の治療。
投稿日 2016年3月20日(日)13時05分 投稿者 プロキオン

一般診療施設における眼科受診というのは、どのくらいの比率であるかというと、およそ5〜6%くらい(多い順からいくと5番目の順位です)であって、その中の49%くらいが角膜疾患であるという統計があります。つまり、角膜疾患にきちんと対応できれば特別な専門性を求められる事はなく、一般医の守備範囲でOKということになります。
とくに、その90%以上が点眼薬によって治癒すべきものであり、手術が必要なものは多くないのです。
必要な点は、
1)角膜という組織を知る
2)潰瘍の状態を正しく把握する(5つのグレードに分類されています)
3)潰瘍に感染している細菌とそれに摘要される点眼薬の選択

獣医師に求められるのは、この辺りまでであって、それ以降は飼い主さんがいかに獣医師の指示どおりに点眼してくれるかに関わっています。
そして、実際問題として治らないということになると、キチンと点眼されているのか、その回数と点眼の状態を確認されなくてはなりません。ここが飼い主さんには申し上げにくい点になりますが、多くの症例で入院させて病院で点眼すれば治っていきます。
正直な飼い主さんですと、仕事があるのでそんなに点眼できませんとか、犬が点眼させてくれませんとか、仰られますので、朝病院へ連れて来て、夕方迎えに来てもらうという形で日中は動物病院で点眼するということができます。
ここを、そんなできもしない指示を出されても困るから、病院には黙っていようとそのまま放置されてしまいますと、潰瘍が融解性となったり、さらに深部にまで進行したりしてしまいかねません。
私は個人的に、眼科診療においては、求められる専門性の高さよりも、このような初歩的なやりとりが飼い主さんとの間で行われる事こそが大切ではないかと考えています。

私が学んだ研修先の病院では、眼科の日があって、院長先生につく補助の獣医師も特定の者が決まっていました。誰でもが院長先生の眼科診療の助手につくことができるというわけではありません。志と適性があって、ある程度の技能があってという事になります。
けれども、院長先生ご自身の考えというのは、まず、一般診療医こそが眼科を診るべきであるという点にあります。
それが、最初の方で書きました眼科の特徴だからです。特殊な専門性などなくても治療できる症例がほとんどだからです。眼科だからと言って県外の有名病院に送っていたら、そちらの病院でも本当に必要な患者のための時間がとれなくなってしまいますし、患者の病状を進行させてしまうからです。
一般診療医の手に負えない重度の症例に対応してこその二次診療機関であり、最前線にいる一般診療医を支えることで眼科診療を広めたいということですね。

まあ、このような院長先生の教えを受けておりますので、お話にあったように近隣の他の先生方がおの先生がそういうのならとそうするしかないと遠慮されてしまうような現象というのがちょっと理解できかねます。
普通に考えれば、指示が出ている内容に他者が口を挟むことそのものが「主治権の侵害」にあたりますから、主治権を尊重してということではないのでしょうか?「1時間ごとに点眼してください」が24時間継続しての意味であれば、これは眼科専門医でなければできない高度の判断ということではないと思います。
そこまでの頻回の点眼というのであれば、私は疑問を感じます。そこで、私がそれは変だおかしいと言ってしまえば、私の行為こそが主治権の侵害であって、逆に私が非難されなければならない立場となります。
診断や治療について、第三者に意見を求めるというのは、相手が素人であれば取るに足りない意見として問題となりませんが、同じ獣医師同士の立場であれば、口にしてはいけないことの方が多いものです。
むしろ、何らの考慮もなしに口にしてしまう先生の方にこそ問題があると考えられたほうが良いのかもしれません。

結論的には、前回述べましたように「気持ちの問題」ではないかと私は考えます。飼い主さんにキチンと点眼して下さいねを少しばかり大げさに伝えたのではないかと思います。
本当に1時間ごとの点眼が24時間必要なのかを最初の時点にもどって、主治医の先生に確認されることをお勧めします。
仮に24時間必要ですということであって、それに疑問を感じるのであれば、例え県外であろうと眼科診療で信頼されている病院を受診しなくてはなりません。誌上診断とかネットでの相談で正しい回答が返ってくるという保証はありませんし、話が混乱するだけかもしれません。
私が主治医の先生の立場に立てば、ネットああいわれたこういわれたと飼い主さんから伝えられれば、それは甚だしく不快にしか感じません。
まずは、原点である「1時間ごと」が24時間を意味しているのか否かを確認することでしょうね。本当に必要であれば、飼い主では24時間対応ができないので、通院預かりでとか、入院対応で点眼するのかという先へ進めた話し合いが必要です。
少なくとも専門医を標榜しているのであれば、そのあたりへの対応はあってしかるべきかと。

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