獣医師広報板ニュース

ペットロス(メモリアル ルーム)掲示板過去発言No.0100-201012-27

こんなにも哀しいなんて思わなかった…
投稿日 2010年11月3日(水)22時20分 投稿者 きのこ

我が家の一粒種「アッシュ」が、去る10月19日21時15分に逝きました。推定11歳6ヶ月の、早すぎるお別れでした…

 今年の夏、クーラーが壊れてしまい、もともと夏に弱いアッシュ(長毛種)を友達の家に預けたのが始まり。
 その人の家の猫たちは、みんな外出自由だったので、いつもノミがついてまして。友達は「アッシュ君に滞在してもらうお部屋は、よく掃除してあるし、うちの猫たちは立ち入り禁止だから」と言ってたのですが…クーラーが直り、アッシュを引き取ってきた夜、彼の尻尾にはいくつもかさぶたがありました。
 その直後に、病院で外耳炎を診てもらった後、私は家内に電話したのです。
 「アッシュ、ダイエットに成功してたよ? 6.8キロが5.3キロになってたよ♪」と。その時に気づかなかった私って…

 仕事が忙しくてゆっくり撫でてやる時間もなく。ある晩、例によって日付が変わった頃に帰宅すると、アッシュの様子が変でした。いつもなら、寝ていた台の上からトンっと飛び降り「お帰り」と寄ってきてくれるのに、うずくまったまま。餌皿にもいっぱい餌が残っていて。
 翌日、慌ててかかりつけの獣医さんのもとへと駆けつけると「このコは重度の貧血だよ!こんなにひどいのに、気づかなかったの!?」と怒られました。でも…4日前に、先生に診てもらったときにはそんなこと言われなかったじゃない、と、私は少し不満に思いました。

 「血沈値が正常の半分しかありません。ノミ、ですね。ここまで状態が悪いとノミ駆除剤も使えませんから、毛を刈ってテープでノミをとれるだけ除去しますが」という看護士さんの説明。
 「輸血する必要がありますが、当院には、ドナーのネコちゃんはいません。お知り合いの方で、健康で体重5kg以上で、老齢でないネコちゃんを飼ってる方がいたら声をかけておいてください」ということでしたが、私には心当たりもなく。
 結局、弱々しい声を挙げながら、アッシュは頭と足先と尻尾の先とを残して、毛を全部刈られて粘着テープでぺたぺたとノミを除去されて帰宅しました。
 「いまの日本で、こんなにノミがたかってるネコなんて見たことがない!」という院長の声が、私の心に深く突き刺さりました…

 インターネットで「24時間診療・輸血や手術も即応」という病院を見つけ、普段は分かれて暮らしている妻と合流し、いっしょにタクシーでアッシュを運びました。
 獣医さんは「あれ? この体温計って壊れてるの?」と、新しい体温計でアッシュの体温を測り…「た、体温計で測れない! すぐ入院です! 輸血ドナーの猫もいますので、アッシュ君の血液型を確認したらすぐに輸血します!」と、究明処置に掛かって下さいました。
 「治療費がどれだけかかるか判りませんが、それでも治療をしますか?」と確認され、私も家内も即答で「もちろんです! 100万円かかってもお支払いしますから」とお返事して。
 「あとは先生におまかせするしかない・・」と慰めあいながら帰途につき、自宅に一番近い駅に電車が滑り込んだところで電話が鳴って。

 「今…輸血を始めたところで亡くなられました」と。

 家内と二人、ホームで抱き合って号泣しました。動揺しすぎてまっすぐに歩けない家内を、タクシーで自宅に帰し、私は病院へととんぼ帰りしてアッシュを引き取りました。
 少しでもぬくもりがあるうちに、家に戻してあげたかったから。自慢の「黒・白のタキシード」を無理やりに脱がされたアッシュの身体が、哀しいほど小さく見えて。帰りのタクシーの中でも涙が止まらなくて。

 寿命ならば仕方ない、と私も家内も覚悟はしていました。でも、ちっぽけなノミに殺されてしまうなんて、あまりにもこっけいで哀しすぎる死ではないでしょうか? ましてそれを見逃し、「経済的に苦しいから」といってなかなか病院にも連れていかずに放置していた結果だなんて…
 私は飼い主失格ですね…アッシュの代わりに、私が死ぬべきだった…と、思います…






















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