獣医師広報板ニュース

災害と動物掲示板過去発言No.0700-201104-250

Re:4/27夕方日テレニュース。原発数キロ圏内の様子
投稿日 2011年4月28日(木)12時32分 投稿者 プロキオン

>たろさんへ

これは、私の言葉ではないのですが、「まず初めに飼い主さんの安全ありき!」です。社会においては、犬も猫も、家畜も飼い主さんがいてこその存在です。「野良という存在には社会は決して寛容ではありません。この点については、我が国よりもむしろ欧米の方がそのような認識が強いようです。
今回の震災では、とくに三陸地方においては、津波のために逃げる間もなかったという動物達が多かったようです。当然ながら、飼い主である人間の方にも甚大な被害が出ております。たろさんが気にされながら口にされている言葉の意味するところも、私なりに理解できるように思います。
津波から助かった犬や猫も、県の動物愛護センターや被災した動物病院に収容されたり、飼い主さんと共に避難所で暮らしていたりしています。これから復興に向けて、動物病院も入院ケージを空けたりしなくてはなりませんし、機器や器材も必要になってくると考えられます。我田引水のような事を言い出したのかと受け取られる方もいるかと思いますが、飼い主さんが安心して動物を飼育していく上では、やはり動物病院のインフラは欠かせないと私は思っています。
日本小動物獣医師会等でも、復興の支援に対して動物病院の復興という方向に移行しつつあります。この掲示板でも動物救援本部が何もしていないとかクレームを寄せている意見もありましたが、実際問題として何もしていないわけがありません。その人、その人の立ち位置から、見える事と見えない事があるというのにすぎません。

例えば、福島県の原子力発電所周辺の犬達は、個々の愛護団体が犬達を連れ出しています。放射能について多少なりとも考慮するのであれば、県外への連れ出しはNGです。少なくとも県内のどこかに収容して、一定の期間放射能管理をして健康を確認することが求められます。決して生きてさえいれば、それで良いということではありません。動物は必ず飼い主である人間と暮らさなくてはならないからです。
テレビ報道などを見ていると、地面から1mくらいの位置での放射線量と地表での放射線量とで、随分と数値にひらきがあります。これは、大気中を漂っている放射能(放射性物質)が今なお、止まっていない事を意味していますし、警戒区域だけでなくその周辺においても安全のためには、毎時の線量ではなく、1年間でどのくらいの集積線量になるかで考えないとならないことになります。政府の発表もキチンと情報を伝える事よりも、不安が広がらないように意図しているような点があって、本当の事が分からず、釈然としないところがあります。

犬でも猫でも、牛でも豚でも、本当に救おうとする考えがあるのであれば、福島県が先頭に立って指示を出していかないとならないと思っています。
放射能汚染という事を考慮すれば、これは「動物達をただ助けろ」だけでは済まない事とがあります。では、どうやってという事になると、さまざまな検討や交渉が必要になるとは思いますが、まったく方法がないということでもないはずです。
先に立ち位置によって、見える事と見えないことがあると申しましたが、これは私自身にも当てはまる事です。私には、見えないところで何か考えられているのかもしれません。

たろさんは、原発周辺の酪農家が乳汁を毎日搾っては捨てていることをご存知ですか? 新聞にも報道されていますから、その事自体はご存知かもしれませんね。
では、遠く離れた県においても、福島で廃棄されている乳汁を補填するために自分のところで搾乳した乳汁をまわしている大勢の酪農家がいることはご存知でしょうか?
乳業メーカーにしてみれば、原料が入ってこなければ、操業はストップしてしまい、会社そのものの経営にも響いてしまいます。乳業メーカーが倒産してしまえば、福島県の酪農家だけの問題では済みません。他県の酪農家も乳牛も負担を分かち合っているのです。
本来であれば、福島の酪農家のシェアを奪いとってしまおうというのが経済原則だと考えられますが、そういう経済的な争いを避けるべく連合会が調整しているのです。利益だけ考えて足の引っ張り合いをしているようでは、酪農全体が潰れかねないのです。
見えない事の中にも、とても大切なことは進んでいるものなのです。

どこかの愛護団体に寄付を考えておられるとのことですが、私は目先のことだけしか見ていない団体は避けて欲しいと考えます。
我が国では、「可哀想な犬達」をうりものにして寄付をつのる団体が、ずっと存在してきました。動物愛護の方でも、「愛護ビジネス」という言葉あるくらいです。「可哀想な犬達」と口にする反面、次々と生まれてくるではなくて、生産されてくる可哀想な犬達予備軍には目を瞑ったまま、愛護を訴える活動は今もあります。世間もマスコミが取り上げた犬に耳目が集中する傾向があります。
残念ながら、それぞれの命の重さには相違が存在しているのです。また、すべての命を救うこともできかねるのです。
だからこそ、善意の寄付をもっとも活かしてくれる相手を探さなくてはならないのです。耳当たりの良い宣伝文句ではなく、活動してきた実績をもとに検討しなくてはなりません。本当に動物達のために使ってくれるところでないとなりませんし、お互いに足の引っ張り合いをしているようなところでは困ります。
今回のレスキューは、本来的には飼い主さんの元へ動物を帰すためのレスキューのはずなのです。どうも、その意図から外れてしまっている団体もあるように見受けられます。
保護はしても飼い主さんの元へ帰す努力をしているのか、もっと広く先々を考えているかというような点を見てから寄付先を考えればよいのではないでしょうか?
扇情的な言葉で寄付をつのるところではなく、淡々と動物達のために確実に活動しているところが良いと思います。


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