獣医師広報板ニュース

動物の愛護掲示板過去発言No.6000-202111-268

Re:獣医師として
投稿日 2015年8月7日(金)11時51分 投稿者 プロキオン

狂犬病となると、当時は新聞記事でも日常的にとりあげられていたようです。
「神保町に狂犬」「狂犬 日に7頭 爆発的流行 野犬にご注う意」「狂犬病で幼児死亡」「狂犬18名を咬む 葛飾」「狂犬1名を咬む 杉並区堀の内」「狂犬29名を咬む 町田・相模原で」
町田・相模原の記事では、地域の消防団員200名、警察官100名、役場吏員数名、その他応援1000名が出動したとあります。

「咬まれる人は、犬といっしょに生活しているような身近な人が多いことになり、飼い主でも、平生慣れている人たちに、又犬好きな人達に多いようです」と記述されていました。
ですが、実際には押しなべて子供が咬傷の被害にあうことが多く、手足だけでなく、顔、頭なども多く咬まれていたそうです。

町田・相模原の事例でも1頭の犬を捕獲するために、これだけ多くの人が出動したわけであって、それこそ獣医師だけの問題では済まず、地域ぐるみでのこととなってしまいます。
昭和60年に都立病院でAさんという方が都職員の定年を迎えたことが読売新聞の記事になっています。
このAさんは、都職員であって、狂犬病予防員として業務に従事していたところ昭和27年に罹患犬に咬まれ暴露後接種を受けていましたが、その2年後に後遺症が発症し、公務災害の認定をうけ、昭和30年2月以降休職扱いとなって、入院しており、病院で定年を迎えたという記事です。
我が国が短期間で狂犬病を防圧できた背景にはAさんのような犠牲者がいたことを忘れて欲しくないとは、都の動物管理事務所所長さんの言葉です。
獣医師でも、すでに鬼籍に入られてしまっていますが、小鳥の病院院長として知られている高橋達志郎先生も 狂犬病の犬の検査時にメスで手を傷つけてしまい、暴露後接種後に下半身麻痺となられてしまっています。昭和22年6月の事でした。
狂犬病の診断には脳組織内からネグリー小体というものを確認することが確定診断とされていましたが、死体の検案となるためにこの検出が困難となってしまっている事例が多く、診断に苦慮する事例も多々あったそうです。
このために補体結合反応を併用して迅速な診断を進めるという検査に携わる人達の努力があったそうです。
一旦、非常事態となれば、現場だけでなく、それを支える後方もまた非常事態となります。後方もまた現場なりというところでしょうか。

獣医師志望の中学生や小学生に話しをする際に 命を助けるのよりも、手にかけることの方が多いのが獣医師の仕事だよということを話します。
他の先生方は、小学生にはまだ早いということで苦笑されますが、せっかくたどり着いた現場で夢とのギャップの大きさに落胆されるよりは、現実とキチンと向き合うことが出来る者に目指して欲しい職業だと思っています。
少なくとも、自分が獣医師になるためには大学受験で必ず1人は弾きだされてしまっている人間がいるわけですから、そこに至ってから辞めるはないだろうと思うのですよ。


# 補体結合反応にも 他の動物の協力が必要です。迅速な診断には犬と人間だけでというわけにもいかないのです。
補体結合反応も現在となっては今日的な検査方法とも言えなくなってしまいましたが。

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