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「博士の愛した数式」    
小川洋子  


世界は驚きと歓びに満ちていると、
博士はたった一つの数式で示したーー
記憶力を失った天才数学者、と私、
阪神タイガースファンの10才の息子。
せつなくて、知的な至高のラブ・ストーリー
著者最高傑作。 (帯より)

* * *

すばらしいです。素敵です。
交通事故によって80分しか記憶が保てない天才数学博士。
彼の運命は、最初から、決まっていたような気がします。
限りなく大きな損失を生んだ事故ではありますが、それと同時に、すばらしい人と人との出会い、結びつきを生み出した事故でもあると思います。
おそらく、この事故の裏には、色々な事情があって、その事への想像も膨らむのですが、作者はその事にははっきりとは触れずに、「想像する」という、読む者へのプレゼントとして残してくれたようです。

優しさにあふれたこの小説を読んでいると、切なさと甘さとユーモラスを感じて、胸がキュンとなってしまいました。
途中からは、切ない結末を少しづつ感じさせて、まるで読者に心の準備を促しているようです。こういう本を読むと、私も人に優しくしたい、そして、そう出来るような気になります。

また、このストーリーの大きな鍵となる数々の数字の魔術。
博士も、「私」も、ルートも、心からそれらの数字を慈しんでいるのが分かって、ほのぼのします。数学嫌いの人でも、この本を読めば、きっと、数字に興味を持てることでしょう。ちなみに、私も素数には想い出があり、本を読みながら、それらのことを思い出しておりました。

この数字と記憶と優しさのアイディアを、作者はどこで見つけたのでしょうか。本当にすばらしい、大好きな作品です。私の今年のベストワンです(^^)。 (2004.06.01)


○映画も見ました○
「博士の愛した数式」(2005年)