平成20年1月13日(日) 午前10時から午後5時
会 場;東京大学 弥生講堂 一条ホール
参加者:302名(九州、四国、北海道など全国各地から)
教育関係者が161名(学生、教員、大学研究者など
この内文部科学省や教育委員会関係者14名)
獣医師関係者100名(役所と獣医師会組織、開業獣医師、獣医学部学生など)
国会議員と都・市議会議員10名、
マスコミ16名、一般15名
教育委員会は、東京都、岐阜県、京都市,さいたま市、横浜市,文京区、杉並区、品川区、町田市など
総合司会:小平市立小平第十五小学校校長 阪本伸一先生
座 長 :世田谷区立千歳台小学校校長 塚田俊雄先生
群馬県獣医師会学校動物愛護指導委員会委員長
*口頭発表8題
教育委員会の方は2題で、品川区教育委員会がこのほど品川区の獣医師会と協定を結んだ経緯と内容の報告、岐阜県美濃市教育委員会の小椋課長が、飼育活動についての小学生と教員にアンケート結果について報告した。小椋課長が、県内5000名近い子ども達が熱心に回答したこととその回答内容に感動したことと、「同一中学校で、飼育活動のない小学校とある小学校からの卒業生を比べると、明らかに両者の感性の発達が異なっている」と報告したのが、印象的であった。
ほかに豊島区立西巣鴨幼稚園と町田市立大戸小学校から「ふれあい」を主眼においた飼育活動にしたら、保護者も支援し子ども達に良い影響が出たことが報告された。特に大戸小学校は地域にふれあい推進協議会ができて、学校を活発に支えている様子に会衆の感動を誘った。「学校が飼育活動の意義を確認して推進すれば、保護者も支援する」ことが示された良い事例であった。学校ぐるみ・地域ぐるみの実践の好例をとして大戸小学校の実践を是非多くの方に知っていただきたい。大戸小学校
http://www.machida-tky.ed.jp/e-ohto/
また
、北海道大学の鈴木誠教授の「蛙学」という授業の受講者の1年生たちが、理科の観察飼育対象のトノサマカエルを、小学校6年生の子ども達にふれあわせるように指導したら、愛情が湧いてそのことで観察が細かくなったこと、生きエサをあつめるなどして熱心に継続飼育を行い、秋に自然に帰すなど良い効果が現れたとの報告があった。
セキセイインコを3年生全員で世話している厚木市立愛甲小学校の西教諭が、飼育のない小学校の児童と比較して、鳥類への関心、知識・理解に差がみられるので生物教育上は、実際の生きた動物(特に哺乳類や愛玩鳥)の飼育が好ましいことを報告した。また、飼育児童は飼育でつらかったことに「清掃ふれあい」をあげたが、良かったことも、「清掃ふれあい」が、他から抜きん出て多く、子どもは直接的な接触を喜んでいること,「死」についても、多くの子がつらいと表明し、生命尊重を教える機会と捉えることができることを報告した。また、飼育活動を教育課程と関連した科学として捉えるべきだと、提言した。
また中川事務局長が、獣医師会と連携して17年経過した西東京市で総合的な学習の時間に位置づけた飼育をしている小学校2校の3学期に子ども達が開催する引継ぎ集会で、それぞれが成果や課題を発表する様子を報告し、飼育活動でこのような良い成果をあげるためには、1学期の飼育導入授業と継続飼育が重要であると報告した。
最後に中野区立鷺宮小学校の吉本校長が、「いのちの教育を推進するための道徳教育の実践」というテーマで総合単元的な道徳教育の実践研究を行った成果を発表した。その中で2年生のハムスターの教室内飼育と4年生の総合に飼育舎の飼育活動を行っているという説明があった。
*パネル発表7題
明成幼稚園(濱野園長)、筑波大学附属小学校(鷲見先生)、台東区立富士小学校の先生がた,昭
和女子大学附属昭和小学校(草野先生)が飼育活動と児童のかかわりを報告され、 名古屋女子大学の先生方が、幼児期の昆虫飼育に対する指導者の意識調査結果を報告された。また、品川区の獣医師会が26年間つづけてきた動物に関する児童の作文コンクールの実績を、社)茨城県獣医師会が平成元年から学校を支援してきた経過を発表して、会衆と交流していた。
基調講演
「新しい教育課程と動物飼育,命の教育」文科省の永田繁雄教科調査官
子どもたちの学力や体力の現状,子どもたちの心の成長と生命尊重の心の希薄化の問題点,及び学校教育改革と生命尊重の教育の重視,特に動物飼育活動の一層の充実について具体的な例をあげながらわかりやすく説明された。「ゲームやヘッドホンなどを自己中心グッズと名付けているが、これが世にでてきてから20年経過したが、国際調査で、日本の子どもは世界一、体を使った遊びの時間が短く、ゲームの時間が長く、手伝いをしない、と明らかになっている。この体験のなさが、人との関わりの少なさを招き、人間としての資質に関し様々な課題を露呈させていると考えられる。子どもの教育には、時間と空間と仲間、そして手間が重要だが、教育施設での継続する動物飼育活動は解決への重要な鍵であり、新学習指導要領でもその方向になっている。また全国的に獣医師の支援が広がってきたのは喜ばしい。」等の内容が印象に残った。
*まとめ
本会顧問の白梅学園大学教授の無藤隆先生が、研究会が回を重ねたことで、成果とこれからの課題が明らかになってきたと話され、次のようにまとめられた。
この数年の成果と今後の課題を各々4点挙げる。
現在までの成果
1)教育委員会を中心として行政的支援の体制が整い始めた。
2)科学的な根拠に基づく飼育が獣医師の啓発努力の故に広がり始めた。
3)学年飼育を基本として、つまり動物に愛情を持つような方法で、日々皆で世話をすることの良さが実証され始めた。
4)保護者を巻き込み、説明を体験活動を含めて丁寧に行うようになってきた。
今後の数年の課題
1)動物の種類を増やし、その各々の特徴を整理し、また生態的多様性や食連鎖等の生態系の問題への気づきを進める。
2)学校ぐるみ・地域ぐるみの活動へと発展させる。
3)教師の研修を全国的に活発にする。
4)教育課程に位置づけ、幼児から高校生まで
飼育体験活動の機会を作っていく。
(以上)