高病原性鳥インフルエンザとは
現在,「高病原性鳥インフルエンザ」と呼ばれている病気はインフルエンザウイルスH5N1型が感染することによって起こる鶏の病気です。
(→ウイルスってなに?H5N2型って?)
これまでの高病原性鳥インフルエンザは元気が無くなるといった症状を示すことが多かったのですが,2004年に発生した鳥インフルエンザは非常に病原性が強く,そのような症状を示す前に神経にダメージを受けて死亡する例が多いようです。
人間には感染する?
基本的に鶏のインフルエンザウイルスは人間には感染しにくいウイルスです。
世界的には香港,ベトナムなどで鶏から人への感染が報告されましたが,感染した人は感染した鶏を処分するなど,感染鶏の排泄物や内臓に触って感染したと考えられています。
またアジアでは鶏を生きたまま売ることが多く,生きた鶏を並べて売る市場が人間への感染に関係していると考える研究者もいます。
日本でも生きた鶏や内臓,排泄物を扱う人はゴーグル・眼鏡・マスクなどで大量のウイルスに触れないようにすることが必要ですが,通常の生活を送る場合にはほとんど心配はありません。
ただし道ばたで死んだ鳥は鳥インフルエンザで死亡した可能性もありますので,鳥の死体を見つけた場合はむやみに触らないようにしましょう。
鶏に感染するインフルエンザウイルスと人間に感染するインフルエンザウイルスが混ざってしまうことで新しいウイルスが産まれ(→ウイルスがまざるってどういうこと?),人間でインフルエンザの大流行が起きる危険性があるので,現場で鶏インフルエンザの対策にあたる人たちはインフルエンザの薬を飲み,鶏インフルエンザウイルスと人間のインフルエンザウイルスに同時に感染することがないようにしています。
鶏肉や卵は大丈夫?
スーパーなどで売られている鶏肉は全て食鳥検査という検査をうけています。
健康な鶏だけを肉にするための検査ですので,事前に鶏インフルエンザであることが判明した鶏は食用の肉とはなりません。
検査に合格した鶏はお湯で羽をぬらした後,羽を抜いて肉に加工されますので,万が一羽毛にウイルスがついていたとしても洗い流されます。
また,インフルエンザウイルスは熱に弱いため肉にウイルスが残っていた場合でも,加熱調理によって安全に食べることができます。
売っている卵は消毒薬を含む液体で表面を洗ってありますので,卵の表面にウイルスが付いていることはありません。
また,鶏インフルエンザに感染した鶏は元気がなくなるために卵を産まなくなりますが,感染した鶏が卵を産んだとしても,卵の中にウイルスが侵入することはありません。
どうしても心配な場合,卵も肉と同様加熱して食べれば安全です。
飼っているペットの鳥は大丈夫?
現在飼育している鳥については感染させないことが第一です。
感染を防ぐためには,飼っている人間が野鳥と接触しない,万が一接触したらそのままの衣服や手で飼っている鳥に触れない。
野鳥が飼育小屋や鳥かごに入ってくるのを防ぐため,防護ネットを張る,野鳥が寄ってこないよう餌の管理をきちんとする,野鳥の糞便で汚染された水を使わない,などが重要です。
カラスから感染する?
自然界では水鳥(アヒルやカモなど)が健康なままウイルスを持ち続けることがしられています。
このようにウイルスに感染しているにもかかわらず症状を示さない個体を「キャリア」と呼びますが,一般的には発症していない個体から排出されるウイルス量は少ないため,元々ウイルスがかかりにくい人間への感染源となる可能性はほとんどありません。
最近,発生地付近で死亡していたカラスが鳥インフルエンザウイルスに感染していたことがわかりましたが,これは発生地の鶏から感染した可能性が高いと考えられています。
カラスと鳥インフルエンザウイルスの関係についてはこれまで調べられたことがないため確実なことはいえませんが,カラスが鳥インフルエンザに弱い場合,感染してもすぐに死ぬためウイルスが大きく広がる可能性は低いと考えられます。
逆に,カラスが鳥インフルエンザに強い場合,カラスが「キャリア」となってウイルスをばらまく可能性がありますが,カラスの行動半径は半径10km程度と比較的せまいため,この場合もウイルスが大きく広がる可能性は低いでしょう。
ただし,道ばたで死んだカラス等は鳥インフルエンザウイルス感染のために死んだ可能性もあるため,むやみに触らないようにしましょう。
犬や猫も感染する?
タイでは猫やトラが鳥インフルエンザに感染していることが確認されたとの報道がありましたが,それを発表した大学の研究者は詳細について明らかにしていません。
これまでにも実験的に鳥インフルエンザウイルスを猫に感染させた報告はありますが,実際の生活では犬や猫に感染させるほど大量のウイルスをもった野鳥を捕まえることはごく稀だと思いますので,安心して良いでしょう。
(水鳥は鳥インフルエンザを持っていることが多いですが,水鳥をくわえる機会の多い猟犬でも鳥インフルエンザの感染は聞いたことがありません。)
ただし野鳥の死体には大量のウイルスが含まれている可能性がありますので,犬猫が食べないように注意しましょう。
対策はどうなっているの?
高病原性鳥インフルエンザは養鶏業に与える影響が大きいため,鳥インフルエンザ感染が判明したら診察した獣医師か所有者が管轄の県知事に届け出ることが法律(家畜伝染病予防法)で定められています。
鳥インフルエンザはこれまで日本国内では発生が少なかったので,予防的なワクチン投与は行わず,感染が見つかった鳥と同居の鳥を処分する「摘発淘汰」という体制がとられています。
これは感染した鳥の発見を容易にし,インフルエンザウイルスの蔓延を防ぐためです。
鶏にワクチンを接種するとウイルスに対する抵抗性がつきますが,鳥の体内でウイルス感染と同じ状態を作り出すことになるので,ワクチンを接種した鶏なのかウイルスに感染した鶏なのか区別がつかなくなり,国全体としてウイルスがどの程度蔓延しているのかが分かりにくくなってしまうのです。
現在,鳥インフルエンザに効果のあるワクチンは国内では生産されていません。
海外から輸入されたワクチンが用意されていますが,これはウイルス感染が急速に広がった緊急事態に際して感染地域を取り囲むように接種し,それ以上の感染拡大を防ぐためのものです。
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