獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-199904-86

Re:RE、脂肪腫と脂肪腺に薬物が貯留するタイプのノミ駆除薬
投稿日 1999年4月10日(土)03時03分 マンタ

太郎サンこんばんは。フィプロニルに大分神経質になっているようですね。
まず、フィプロニルの概要は田口先生がおっしゃたとおりですが、少し
補足しますね。

ご存知だとは思いますが、フィプロニルは生体内に入ると神経細胞の
ガンマアミノ酪酸(GABA)受容体に作用し塩素イオンチャネルを阻害します。
塩素イオンチャネルが阻害されると、塩素イオンが神経細胞内に流入しなくなり
神経細胞は異常な興奮状態となります。
この作用は、脊椎動物の体内ではほとんどおこりません。従ってフィプロニル
自体が哺乳類に神経症状を起こすことはないということです。
また、いくつかの副作用が報告されていますよね。
大きくわけて犬の副作用は皮膚にでてます。猫の副作用は流涎と脱毛です。
これは、すべてフィプロニルの基剤に使われているイソプロピルアルコールが
起こしているものだと考えています。
理由としては
1.犬の全身性に出る皮膚の発赤・痒みは、スプレータイプで認められ、スポット
タイプでは滴下した局所のみに現れている。
2.猫の流涎はスプレータイプを使用した場合に多く、スポットタイプでは
滴下部位が間違えて舐めることのできる場所の場合である。
3.猫の脱毛はスプレータイプで認めたことはなく、スポットタイプが滴下され
た場所に起こり、その場所は舐めることのできる場所である。
スプレータイプとスポットタイプの違いはフィプロニルの濃度の差だけであり、
また、濃度差に関係無く使用方法で発生したり(犬・猫の流涎)、滴下場所に
が不適切な場合に起こったり(猫の脱毛)していることからもわかると思います。
フロントラインに関する掲示板にも獣医師がかいてありましたよねぇ。
デマや逸話に惑わされないようにと。
あまり、神経質にならないほうがよいかとおもいますよ。

また、脂肪腫についてですが・・・。
まず、腫瘍(悪性腫瘍、良性腫瘍限らずすべての腫瘍)が発生した場合、ほとんどの
飼い主は獣医師に「なんで腫瘍ができたのか」聞いてきます。太郎さんも例外では
ありませんね。ところが、腫瘍の原因というものがはっきりしているものはほとんど
ありません。大規模な疫学調査がおこなわれ、傾向がはっきりしている場合は、
腫瘍の原因と考えられますが、ほとんどの腫瘍において大規模な疫学調査はなされて
いません。脂肪腫についても同様で、原因は不明です。
ただ、脂肪腫でわかっていることは、比較的発生が多い腫瘍であることと
雌の発生率のほうが雄の発生率の2倍程度あるということです。
雌雄の発生率に差があると、ホルモンの関連があるかとおもわれるでしょうが、
現在のところ、不妊手術の有無、不妊手術時期など分類をした状態での統計の報告
を見たことも聞いたこともありません。

こんなんで、お答えになっているでしょうか?


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