獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-199905-137

マルチレスの補足と追加
投稿日 1999年5月13日(木)12時52分 プロキオン

5月12日のtakeさんへ
フィラリアのワクチンが何故できないかという質問ですが、研究開発者で
ないと正確には答えられないのですが。
生物の体を構成しているのは蛋白質ですが、構造が複雑な生物程いろいろ
な蛋白の構成になっています。現在のワクチンは過敏反応によるショック
を防いだり、先祖帰りによる強毒化(バックミューテーション)を防ぐよ
うに注意されています。病原体の蛋白構造が複雑であればあるほど、余計
な生体反応が惹起され問題も多くなり、ワクチンそのものの製造過程に手
間がかかり、なおかつ精製度・効果が落ちるのです。
病原体のどの部分を用いれば、安全で効果の高いワクチンが製造できるの
かという問題になってくると、病原体としてのフィラリアは高等生物過ぎ
るのです。
感染している犬に予防薬を飲ませると何故いけないかというと、薬によっ
て死滅したミクロフィラリアが末梢の血管を閉塞させて循環不全から肝不
全や腎不全等を引き起こすからです。この症状の強さは寄生しているフィ
ラリアの数に依存すると思われます。少数寄生の場合は軽症ですみますが、
心臓内虫体の数は外からはわかりませんし、生命にもかかわることなので
慎重な対応が望まれます。

5月12日の陽子さんへ
陽子さんが書き込まれた内容は、裁判になった事例と同じ薬です。ついで
に言及するなら、昨年週間ポストでかなりしつこく取り上げられた内容と
同じです。この薬は成分的には同じものなのですが、注射薬であり、石油
系製剤になっています。濃度がひじょうに濃いので犬には希釈しないと使
えません。この時に水で希釈すると沈殿物を生じ、成分が不安定になりま
す。希釈後直ちに注射したなら、さほど問題にはなりませんが、時間をお
いて経口投与した場合は有効成分が失活していることがあります。裁判に
なった事例は、このような理由で感染防止することができなかったために
フィラリアに感染してしまい、獣医師が訴えられたものです。
私としては、例え同じ成分であっても適用認可のおりていない薬よりも、
認可された薬を使用して頂きたいと考えています。

5月13日のnakajさんへ
ジャンハムのペアとのことですが、これは飼育書に同居可能とあっても
別飼いをお勧めします。ケンカによる事故はある日突然起きますので、
何かあってからでは遅いのです。ハムスターは野生下では孤独な生活を
送っているのが普通なのです。寂しいという気持ちはないと思いますよ。
そして、2ケ月なら充分妊娠可能ですよ。

5月13日のmomoさんへ
ウサギの痛みについてもう少し補足しますと、ちょっとした痛みで食物の
停滞を起こしてしまう反面、外科的な痛みには信じられないくらい鈍感な
こともあります。
裂けた皮膚を10cm以上も喰い契ったり、骨の飛び出している足で走っ
たり、化膿した乳腺腫を喰いきったり等です。この3例は全て私の病院で
の症例です。全然平気でしたよ。罠にかかったウサギは自分で足を喰い契
って逃げると聞いていましたが、今ではこの話も納得しています。

痛みに敏感であることと生命に関わる事態において痛みを超越してしまう
こととには、矛盾はありません。これはウサギだけのことではありません。
安静にしておくために必要な痛みと動かなければ死んでしまうという場面
で痛みを感じないというシステムはどちらも必要なことなのです。

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