獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-199905-162

マルチレス・・フィラリア・金魚・前立腺
投稿日 1999年5月15日(土)14時00分 プロキオン

5月14日の陽子さんへ
外犬の主治医の先生が水薬の危険性を知っていたか否かについては
分かりません。両方の可能性があります。
では何故使用しているのかという話になるとひじょうに回答しにく
い範疇の話になります。それなりの言い分があるので日本獣医師会
の中でも、もめています。ただ、個人的には投薬の前に血液検査を
実施して、認可のおりている薬を使用するべきだと考えています。

私の近所のある病院でも 血液検査をしたら陽性という結果が出た
のに規定の薬用量をそのまま投薬されて元気のなくなってしまった
犬がいます。陽性犬に投与するのならそれなりの配慮は必要です。
なんのために検査したのか理解できません。 そういう獣医師も中
にはいるのです。今回の事例は獣医師側の問題ではありますが、飼
い主さんも勉強を重ねて、おかしな話には注意された方が良いよう
に思います。

レスしにくい内容だったのですが、錠剤にたいする疑念については
お答えしておくべきでした。へいはちさんにお手数をかけてしまい
ました。どうも ご苦労様でした。>へいはちさん


5月14日のあんこさんへ
とどろきさんからレスがついていますが、私からも。

転覆病であるか否かはさておき。鱗が開いているというのは「立鱗
病(松かさ病)」の疑いはないでしょうか?
この病気は鱗の下にリンパ液が貯留して鱗が開いてしまうものです。
原因も本や研究者によっていろいろです。これは魚の疾病の7〜8
割が水に起因しており、その水の中に様々な病原体がいるためです。
そんな病原体の細菌の中の1つにエロモナス菌がいます。この細菌
は、その他にも「ひょう炎」魚編に票と書きます。浮き袋のことで
す。この浮き袋の炎症をエロモナス菌や緑膿菌が起こすことがあり
ます(ウイルス説もありますが)。魚は前室と後室の2つの浮き袋
を使ってバランスを調節していますが、この調節ができなくなって
転覆してしまうようになります。2つの疾病が同時に起きているの
なら、この辺りから疑ってみてはどうでしょうか?

治療法は隔離による薬浴と水槽の水の清浄化になります。薬浴に使
用する薬剤は抗生物質にしても消毒薬にしても、水槽の浄化バクテ
リアを殺してしまうので、必ず別容器にして下さい。水温と酸素濃
度に注意しないとなりません。使用する薬剤によって低濃度薬浴と
高濃度薬浴がありますが、どちらにしてもエアレーションを誤ると
酸欠で死なすか、エアーが強すぎて泳げなくて溺れ死ぬかになりま
す。水槽の水は1度に全て換えるのは無謀ですので、まずは3分の
1を交換して、浄化槽(浄化装置)の数を増やしてしのいで下さい。

そして、転覆については そのままではいずれダメになりますので
体を起こすようにします。これには水を入れたビニール袋で両方の
体側から支えるようにしてあげます。スポンジで支えると勧める方
もおりますが、魚は体表面のヌルヌルが皮膚の一部のようなもので
すので、これを傷つけるのは好ましくありません。氷嚢のようなも
のが望ましいと思いますが、ビニール袋でも代用可能です。

魚が腹を上にして泳げなくなるのには、実にいろいろな原因があり
ます。水中のガス濃度から始まって、ウイルス・細菌・原虫・寄生
虫・卵巣腫瘍(俗に言う腸満)等、数え切れません。
したがって、私の想像もまったくの的外れの可能性もあります。お
近くで相談できる人を捜すのが、最良の方法ですね。魚の世界は非
常にマニアの世界であり、小学生でも師匠と呼びたくなる人もいま
す。(実話です。新宿伊勢丹の熱帯魚売場には店員さんよりも確か
な小学生が出没していた。)
薬浴の薬の種類と濃度は飼育書に出ているので、入手可能なものを
使用すると良いでしょう。通常の細菌は、水温を上げると発育が抑
制されるのですが、これは「とどろきさん」意見とことなりますが、
私は様子を見て欲しいと思います。
というのは、エロモナス菌は低温発育菌に分類されていますが、高
温ではもっと発育する例を3例程経験しているからです。低温でも
発育可能な細菌と理解しておいた方が良さそうです。
「立鱗病」も「魚票炎」も長期的には予後不良な疾病ですが、珍し
い病気ではありませんので、今後のために治療法を学ぶつもりでチ
ャレンジしてみて下さい。


5月15日のゆうさんへ
前立腺の異常ですが、腫瘍の確認はできていますでしょうか?
前立腺には炎症から膿瘍ができることがしばしばあり、レントゲン
では両者の鑑別が困難です。腫瘍にしても膿瘍にしても、前立腺へ
のアプローチには骨盤を形成する骨が邪魔になり、手を出しにくい
ものです。
ただ、膿瘍でしたら必ずしも切除しなくても、切開排膿で逃げる方
法もないではないように思います。歯切れが悪いようですが、私は
この経験がないものですので・・・。
いずれにしても、確定診断が待たれます。

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