獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200003-317

インフォームドコンセントに潜む危険
投稿日 2000年3月29日(水)15時45分 Suzuka

まずは、お世話係に就任されたばかりのチーちゃんのママ樣、御挨拶が遅れましたが、今後
ともよろしくお願い申し上げます。

panchi樣からの質問(沢山ありすぎて読むのが大変でした・・・笑。 個人メールもいただ
いたようですが、添付書類は重すぎてサーバーにバウンスされてしまいました)に対する直
接の答えにはなっていないかもしれませんが、私が患者さんに説明させていただくときに常
に気にかかっている点についてお話しさせて下さい。

インフォームドコンセントというのは、まだまだ日本の医療の中で定着しきれていない所が
あります。 その原因の一つとして、本当に全ての点で患者さんに選択させることがベスト
の方法なのか・・・ということを医者の方が配慮していないという面があると思います。
当たり前のことですが、選択した者には、その選択をしたことに対して責任が生じます。
医師サイドからいえば、つつみかくさずなにもかも説明して、患者さんに選んでもらうのは
実は非常に楽なことなのです。 
診断として考えられるのは何々と何々と何々・・・治療はこれこれこれがあります・・・
手術すれば治癒率何%、手術の成功率は何%、麻酔の事故の確率は何%・・・ただただ羅列して『さあ、どうします?』と教科書の棒読みで済んでしまいます。
結果が悪かったときにも、『だからちゃんと説明したでしょう、そういうこともあるって』ですんでしまいますから・・・

今、アメリカの医療現場はこうなりつつあります。
医療訴訟をおそれるあまりに、細かい細かいことまで説明し、全て患者さんに選ばせて責任
を逃れるためです。

こうなってはお終い・・・という気がしませんか?
医師としても、最悪の場合、御家族を亡くされた方に、その選択をしたという自責の念まで
押しつけてしまうのはしのびないです。
それぞれの患者さんにはそれぞれのバックグラウンドがあり、ある患者さんにとっては良い
方法が、同じ病気の他の患者さんにあてはまるわけではないのです。
そういうことまで考えてくれる獣医さんは、あえて(あくまでも怠慢ではなく)無用な心配
をさせるような稀な副作用については説明しないでしょうし、わざと全ての治療法を提示し
ないこともあるでしょう。

杓子定規に、なんでも説明してくれることが良心的だというのもなんだなぁ・・・と思いま
すよ。 そして、それが怠慢か配慮なのかを見分けるのには、やはり飼い主さん側の『知ろ
うとする姿勢』『医療サイドと一緒に診断・治療に加わるのだ』という姿勢が不可欠だと思
うのです。
具体的に『ん?と疑問に思うこと』とはどういうことか?と聞かれていましたが、それを説
明するのが無理だということはおわかりいただけますよね?
個人個人によってそれは千差万別なのですから・・・

もちろん、panchi樣がそういうことを指しておっしゃっているのではないということは
重々くみ取っております。
でも、大勢の方が御覧になる文字でのやりとりですから、あえて書かせていただきました。

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