獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200105-154

haruさんへ
投稿日 2001年5月14日(月)01時01分 月代(つきしろ)

「犬の代表的な先天性(=遺伝性)の心臓病と、発生しやすいと言われている犬種」

心臓は、全身から運ばれてきた汚れた血液を肺へ送り、肺できれいになった血液をもう一度受け止めて、
再び全身へ送り出すという作業を毎日休まずにしています。
血液の流れる順を追って心臓とその主要な血管の名前を挙げると、大静脈―右心房―三尖弁―右心室
―肺動脈弁―肺動脈―肺―肺静脈―左心房―僧帽弁―左心室―大動脈弁―大動脈 というように、
血流は絶えずこの流れに沿って運ばれていきます。
従って、少なくともここにあげた血管や、心臓の壁(心筋)や膜(心膜)、弁などの各部位に何らかの
問題が生じると、自然な血流が妨げられ、心臓病となります。
心臓の病気には先天性と後天性があります。先天性の心臓病は大変多くの種類があり、とりわけ
純血種では雑種よりも発生率の高い事がわかっています。もちろん全体の病気の発生に比べれば、
そんなに多い病気ではありませんが、ある研究では、0.67−0.85%の発生率と言う報告もあります。

動脈管開存症(PDA)
胎児期に、肺静脈と大動脈を繋いでいた血管は、生後2−3日の間に閉じますが、これが閉じないために、
大動脈からの血液が逆流します。
プードル、ポメラニアン、コリー、シェットランドシープドッグ、マルチーズ、イングリッシュ
スプリンガースパニエル、Gシェパード、キースホンド、ビションフリーゼ、チワワ、ラブラドルレトリーバー、
ヨークシャーテリア

大動脈狭窄症 (AS)
生まれつき、大動脈の一部が繊維軟骨組織によって狭いため、大動脈からの血流が妨げられます。
ニューファンドランド、ゴールデンレトリーバー、ボクサー、ロットワイラーGシェパード、ジャーマン
ショートヘアーポインター

肺動脈狭窄症 (PS)
肺動脈が狭窄する場合よりも、肺動脈弁の形成不全などから、狭窄をおこすことが犬では多いようです。
肺動脈は右の心臓からでているので、ここに狭窄が起こると、右心に大きな負担がかかります。
ビーグル、チワワ、イングリッシュブルドッグ、フォックステリア、サモエド、ミニチュアシュナウザー、
バセットハウンド、マスチフ、ウェストハイランドホワイトテリア、コッカースパニエル、チャウチャウ

血管輪奇形 (VRAs)
胎生期の大動脈弓などの血管の発達異常によるもので、同時に周囲にある食道や気管の狭窄の
原因となります。
Gシェパード、グレートデン、アイリッシュセッター

心室中隔欠損(VSD)
右心室と左心室を分けている中隔の一部に欠損が生じるため、この欠損部から左右の血液が移動
してしまいます。
イングリッシュブルドッグ、ウェストハイランドホワイトテリア

ファロー四徴(TF)
心室中隔欠損・右心室肥大・大動脈変位・右室血流障害の四つが一度に存在する心臓の奇形です。
十分に酸素を取り入れていない汚れたままの血液が大動脈に混ざってしまうため、チアノーゼの症状が
特徴的です。
キースハウンド、イングリッシュブルドッグ

僧帽弁・三尖弁の形成不全(TD・MVM)
それぞれの弁が、正常に形成されないため、左右心不全が生じます。
ラブラドルレトリーバー、グレートデン、ワイマラナー、イングリッシュブルドッグ、チワワ、ブルテリア、
Gシェパード、ゴールデンレトリーバー

以上、私が文献・情報媒体から調べた先天性の心疾患です。
これらを聴診器ひとつで聴き分けるのは、おそらく非常に困難でしょう。
ですので、もしもharuさんが本当に心奇形かどうかをつきとめたいと切望されるのでしたら、
この他の検査を行った結果を合わせた上で診断をされる病院へ行くのが良いと思います。
ただし検査のぶん、高い費用がかかりますし、また検査結果次第では心奇形と言い切れないかもしれません。

そのワンちゃんに関して、ペットショップ側と相談されるのも一つのテだと思います。
私個人の我が侭な意見ですが、もしもそのワンちゃんを哀れと思うのであれば、
haruさんご自身でワンちゃんを救ってあげてください。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~tukky/

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