獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200107-77

レス:乳癌のはずが
投稿日 2001年7月9日(月)12時24分 プロキオン

7月6日の みかんさんへ
結論から言えば、そちらの動物病院へ今後とも通う必要はないでしょう。みか
んさんにとっても 動物病院にとってもその方が良いでしょう。

猫の乳腺腫は比較的遭遇することが多い腫瘍であり、主治医の先生が言われた
ように多くが悪性腫瘍であり、その比率も90%を越えると言われています。
転位も血行性リンパ道性に転位しやすく、発見次第迅速な摘出切除が原則と考
えられています。
また、転位の有無は血液検査では分かりません。手術を実施するにあたって、
他に異常がないか検査したということではないでしょうか?

良性悪性の判定となる組織検査についてですが、この検査は普通の動物病院で
は実施できません。外部の検査機関に依頼することになります。検査代金が1
万円くらいかかるというのも、決して足下をみている値段ではありません。我
々が検査機関に支払う検査代金がほぼそれに近い料金なのです。採取した組織
サンプルを固定して送付する手間暇や輸送料を考慮に入れると、まず問題のな
い金額であると思われます。

主治医の先生が送付したサンプルに「病変部が入っていなかったかも」と言わ
れた点は気にかかります。
主治医の見解と検査機関からの回答との間にしばしば相違が生じることがあり
ます。この原因はサンプルの採取部位が不適切であったり、固定が不十分であ
ったりすることに多くの原因があります。
検査機関からの回答が「乳腺の異形成」とあるのは、私には理解できません。
「過形成」とか「異所形成」という言葉はあると思うのですが、話の流れから
胃所形成ということはないはずですよね。「過形成」というのは、正常な組織
構造で過剰な増殖をしている場合で、「過誤腫」とも言われますが、これは腫
瘍ではありません。乳腺に問題がなかったという主旨の話であれば、こちらの
ことではないでしょうか?

組織の増殖に異常が見られ、細胞や核に「異形性」が認められるのであれば、
これはすなわち「腫瘍」のように考えることができてしまいます。検査機関と
獣医師、獣医師とみかんさんとの間を経てきているうちに 言葉が変わってき
ている可能性はありませんか?

もし、検査機関からの回答が「異形性の認められる乳腺組織」という意味であ
れば、患者本人の年令や健康状態を考慮すると、今の時点で、できる限りの切
除を済ませておくというのは、賢明な処置であり卓見とも言えます。
主治医が「病変部が入っていなかったかも」という発言されている上で、この
ような意味の回答であれば、むしろ手術しておいて良かったというのが私の受
けた印象です。

部分切除で組織診断をしてからという選択枝も考えられないではありませんが
猫における乳腺腫瘍の悪性頻度を考えると、麻酔も手術侵襲も少ない方が良い
わけで、手術で切除してから組織診断へ回すということは臨床医の行為として
は自然な行為であり、恐らく私もそうしたと思います。
インターフェロンによる治療は、私ならお勧めしなかったと思います。むしろ
この治療に期待される方がつらいものがあります。乳腺腫が手術の適応でなか
った場合に考慮することになると私は考えています。

こうやって考えてきますと、みかんさんの書き込みの中で考慮しなくてはなら
ないのは、主治医の「口のききかた・応対」に端を発しているあるように思い
ます。みかんさん御自身も最初の方で「私のすんでいるところでは評判がよい
」といっておられたにもかかわらず、感情的に納得できない結果になってしま
ったということなのでしょう。
そういうことであれば、これはもう無理をしないことです。不信をもったまま
通院を重ねることは、みかんさんにも主治医の先生にも良いことはないと思い
ます。その思いは主治医にも伝わってしまいますし、両方が不快な思いをする
ことはないと考えます。
診療方針については、書き込まれた内容からは私は問題とするような獣医師と
は受け取れませんでしたが、人間関係でつき合いたくないというのであれば、
これはもう無理をする必要はありません。多少遠くなっても他の病院へ行かれ
た方が良いでしょう。それがお互いのためです。


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