獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200112-106

レス:レプトスピラ、LCM
投稿日 2001年12月18日(火)12時30分 プロキオン

LCMというのは、「リンパ球性脈絡髄膜炎」のことですね。大勢の方が見て
いますので、略語では分かりにくいかも知れませんので、まずこちらを解説。

この疾病は本来ハムスターの疾病ではありません。野外のネズミの間にあった
ウイルス性の感染症なのです。そして、モルモット、人間、サルにおける自然
感染があります。ハムスターの場合は人為的に感染させるのが容易であり、多
くの場合で不顕性感染となります。
元々は、人間かハムスターがどちらかが先かと言われれば、ハムスターよりも
人間の方に曰く因縁があってしかるべきところなのです。
ところが、70年代にアメリカで人間における流行があって、その感染源があ
る1軒のハムスターのブリーダーに由来するとされたところから、ハムスター
にとって都合の悪い風向きになってしまったわけです。これとてもハムスター
が悪いのではなく、管理していた人間の責任なのですが。
ハムスターの場合は、通常は不顕性感染で症状は見られないので、一見しての
感染の有無はわかりません。結膜炎や斜頚、痙攣、旋回の他、繁殖率の低下や
子宮蓄膿症の誘因となっていることがあります。
人間の方の症状は、風邪に似た症状から脳脊髄膜炎を呈して非常に危険な状態
までの様々な段階があると考えられます。

レプトスピラについては、こちらも野外のネズミが媒介しますが、動物病院で
はむしろ犬の疾病として取り扱われているのが普通です。
こちらの病気も人間や馬、ウサギをはじめさまざまな動物にあります。
病原体はウイルスでも細菌でもなく、もっと大きい原虫の部類に入ります。血
清型が非常に多岐に亘っており、それによって感染する宿主や症状に違いがあ
ります。共通する点は発熱、痛み、赤血球の破壊(黄疸にいたることもある)、
嘔吐、腎不全というところでしょうか?

どちらの疾病も、実験動物としてスタートしたハムスターにおいては本来持ち
えないはずの疾病であったのですが、人間の管理の不手際から感染させてしま
ったと考えるべきではないでしょうか?
ニュースで取り上げられた経緯はありますが、ハムスター=ネズミの図式で必
要以上に感染源としてあげつらわれている面があるように感じています。
どちらの疾病ももともと人間にある疾病なのですから、ことさらハムスターを
危険視しても意味がありませんし、他の動物からでも感染の危険はあります。

さて、両疾病の動物病院における検査ですが、これはできません。採血して外
部の人間用の検査機関に依頼するしかないと考えます。受け入れてくれるとこ
ろがあればになりますが。
おそらく、どちらも抗体検査になるはずと考えますが、検査に必要とされる血
清の量を確保するためには、そこそこの採血量が必要であり、この点に問題が
ありそうです。今、現在異常が認められていないハムスターに対しては、お勧
めできません。

レプトスピラについてであれば、感染しているハムスターは必ずやなんらかの
症状は出てくると思われ、ハムスター自身も予後不良となるように考えられま
す。飼育期間がすでに長いのであれば、まずは感染していないと考えておかれ
て良いのではないでしょうか?

ハムスターに咬まれて、腫れたり熱が出たりと言うのは、通常口腔内の細菌に
よるものです。キチンと消毒しておく事が大事です。また、傷口が深い場合は
抗生物質の服用が望ましいこともあります。
レプトスピラに大変有効な抗生物質があるのですが、こちらはハムスター自身
にも強すぎるので、予防的な投薬はできません。

LCMは感染ハムスターに接触してもそれとは気付かないと思われますので、
由来のハッキリとした個体を入手されるか、すでに飼育中の個体は変に擬人化
せずに、ハムスターはハムスターとしての一線を引いた飼育を心掛けてくださ
い。
流死産の生き残りのような弱い個体を飼育しているのでなければ、通常はウイ
ルスに感染しているハムスターに出会う機会はあまりないのではないでしよう
か。

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