意見交換掲示板過去発言No.0000-200202-4
豚の疾病 |
投稿日 2002年2月2日(土)13時18分 プロキオン
2月1日の りのさんへ メールアドレスから判断して、ミニブタの飼育についてパールちゃんとやりと りをされた方ですよね。 豚の疾病というのは、本当に際限なく存在します。大学で犬猫の疾病について 授業を受けた記憶がない獣医師はいても別に不思議でもなんでもありませんが、 牛や豚の疾病について講議を受講していない獣医師は存在しません。 それは、獣医学が家畜の損耗をいかに防ぐかという学問だからです。豚につい て言えば、1つの豚舎、1つの豚房から1年間に何キログラムの豚肉を出荷さ せるかが畜産なのです。(肉豚を出荷ではなく、豚肉を出荷です) 当然、餌も哺乳期から始まって肥育前期、中期、後期に至まで各種の配合があ り。またそれに使用できる添加物も種々存在します。各飼料メーカーも原価を 少しでも安く、そして肥育効率の良い餌ということで研究を継続している分け です。 獣医学というのも農学や畜産の一分野である以上は、豚の疾病による損耗防止 に目的があり、診断や予防にこそ主眼が置かれます。国や各県の試験研究機関 においても同様であり、行政機関における衛生指導も同じです。一言で言って しまえば、「豚は自衛防疫で守るもの」なのです。 私自身、豚の疾病については、ある本の執筆者の1人なのですが、私が担当し た疾病についてであれば、それはお答えしようがありますが、豚の疾病全般に ついてということであれば、それはあまりに膨大なお話なのです。餌について も各飼料メーカーが競って研究を続けている現況において、他人に語れる程の 知識は持ち合わせていないと言えます。 むろん、養豚の話をしているのではないとお考えになると思いますが、我々獣 医師から見れば、様々なワクチンや対象となる疾病に付いて何も知らない人が 相手であれば、これはあまりにとりかかりがなさすぎるのです。 餌や疾病の本についてであれば、農協で手に入るわけですし、飼育全般につい てあれば、農業改良普及所や畜産試験場の方が適当かもしれません。 そして、今回のお話ですが、豚の肺炎はウイルスも細菌もあります。また、必 ずしもひとつの病原体が原因とも言えません。 例えば、豚によく見られる「パスツレラ肺炎」では、その前駆に各種ウイルス やマイコプラズマが関わっていることがあり、同じ細菌でもヘモフィルス肺炎 が先行していてその後に継発していることが少なからずあります。 さらに、問題となることですが、豚は肺炎に強いというのが、私の感想なので す。多くの豚を病勢鑑定で解剖して来ましたが、肺の2/3がやられていても まだ生きているのです。これが牛になると1/3やられた時点で斃死してしま います。ここまで、病勢が進行しているのに何故生存しているのか? 何時か ら疾病に感染していたのか不思議に思う事が多かったです。 肺炎の本態は何であったのか、原因は、そしていつからということになると、 話は複雑になってきます。 むろん、各疾病の潜伏期も考慮すれば、販売先にいた時点で感染していたこと は充分に考えられますが、その個体を選んだのは誰か、また、押し付けられた としても最終的に了承したのは購入者であるという事があげられます。 犬猫においても、一旦販売してしまえば、後は購入者の責任というのはありま す。完全無欠100点満点という生体は存在しないからです。購入者が選んだ もしくは購入者が納得して買ったという時点で、責任の所在が移ってしまうと 考えられているのです。 犬や猫では、生体保証がついているショップであれば、違う個体が有償あるい は無償で提供されますが、今回のお話では、売った後はそちらの責任というこ とであれば、そのような保証制度は期待できないということのようですね。 生き物を飼育するというのは、その生涯について責任を負うということです。 自らが飼育した経験が無い動物であれば、事前の勉強は必要ですし、購入先や 導入先は充分に検討しなくてはなりません。 私の県では、自らミニブタをペットとして飼育している開業獣医師がおりまし た。「おりました」というのは、そのミニブタが今は死んでいないからです。 その先生はかなり可愛がっていたと聞いていましたし、その後かなり落ち込ん でいたという噂も耳にしています。 獣医師が傍らについていても、そういうことは起こり得ることなのです。 単に飼育するだけであれば、疾病やワクチンを知らなくても支障はありません。 餌だって、なんでもよく食べます。 飼育者がそのライフスタイルの中で動物をどのように位置付けているか、どの ように考えているかが大事なんだと思います。 個人的には、あまりなじみのない動物を販売する以上は、飼育全般や問題が発 生した際のサポート体制が販売先にあってしかるべきと考えます。 |
|
|
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」 ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴) サポーターや広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)、 多くの人々に支えられています。 獣医師広報板へのリンク・サポーター募集・ボランティアスタッフ募集・プライバシーポリシー 獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。 @mukumuku_vetsさんをフォロー
Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved |