獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200207-146

爪の抜去手術
投稿日 2002年7月17日(水)18時40分 プロキオン

この手術は、正確にいうと骨の切除をする手術になります。

人間も動物も、指を構成する骨は「基節骨」「中節骨」「末節骨」の3本の骨
からなっています。爪はこのうちの最も外側の骨である「末節骨」にしっかり
とついています。
猫などの爪の抜去には、この末節骨の切除が必要です。解剖学的に組織の一部
が爪の中にまで侵入しているのと、爪を作る「基底胚細胞」が完全に切除しき
れていないと、また歪んだ形の爪が再生されてくるからです。
外科の教科書には、「中節骨遠位軟骨表面が末節骨切除による切開創口部に見
えるように切除する事がポイントである」と記載されています。

この手術の本態は、爪の切除ではなく、指の骨の切除なのです。
また、爪の基部の挫滅や肉球を痛めると、その疼痛から回復には長期間を必要
とするので注意しなくてはなりません。

根本的には、猫が大事か家具が大事かという論争になってしまいますので、家
具が大事ということであれば、猫の飼育は見合わせた方が賢明といえます。
爪研ぎ以外にも、生き物にはさまざまなトラブルが付き物です。今後、さまざ
まなトラブルが発生した際に 常に猫に我慢を強いることにつながるのであれ
ば、今の時点で飼育しない方が両者のためと考えるからです。

しかしながら、猫が飼育希望者が何方も現れず、処分される運命にあるのであ
れば、爪であれ、指の骨であれ、何程のことがありましょう。
飼育希望者の絶対に譲る事のできない条件であれば、これは容認せざるをえな
いというのもまた現実です。
簡単に爪さえ無ければと考えているのか、絶対に譲歩できないまでの条件と考
えているかということになると思います。

私の見聞きしている範囲では、海外でもこの手術は忌避される傾向になってい
るように思います。
爪も前足のみの適応で目的は充分果たせるはずです。逆立ちしてまで後ろ足の
爪を研ぐ猫はいません。それが猫の爪研ぎなのです。

椅子やテーブルは買い替えることが可能ですし、壁紙もまたしかりです。
しかし、一度切除してしまった骨は、二度と元にはもどせませので、飼育車の
ライフスタイルの中で猫がどのような位置付けにあるのかを良く考えてみる必
要があると思います。

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