意見交換掲示板過去発言No.0000-200207-97
レス2題、鳥 |
投稿日 2002年7月12日(金)12時19分 プロキオン
7月11日の ももさんへ 鶏が元気が無く、鶏冠が白いとのことですが、「ロイコチトゾーン病」であれ ば、貧血だけでなく、皮下や各体組織において出血も起きているものと思われ ます。 鶏冠が白くなると現象で、貧血を心配されているのだと推測しますが、凡そ貧 血は様々な疾病につきものの非特異的症状でなのです。 ロイコチトゾ−ン以外にも鶏マラリアのような疾病もありますし、急性コクシ ジウムによる出血性の貧血もあるでしょうし、悪性貧血因子とかもあります。 逆に骨髄の造血作用を阻害するウイルスも少なからず存在しますので、貧血ひ とつとっても、その発生機序ごとに病原体も疾病も異なるわけです。 さらに、その上に貧血と直接結びつかない疾病においても、体調不良の一症状 として鶏冠の白化という現象は起こりうるわけです。 あまり話を広げてしまっても先へ進めませんので、このくらいにしておきますが。 この先へということこそが問題なのですよね。 街で開業している小動物の診療獣医師というのは、たしかに鶏の疾病について は大学で教わっていますし、ロイコチトゾーン病であれば、ピリメタミンとか サルファ剤とかの単語も頭に浮かぶかもしれません。 しかし、それだけで治療に臨んで良いかと言えば別問題ですし、家禽の診断に ついては家畜保健衛生所の所管と考えるのが普通だと思います。 そして、家禽疾病の原則は摘発と淘汰なのです。治療を施しても手元に利潤が 残るという場合にのみ投薬が実施されます。薬剤自体もとんでもない大量の包 装単位であり、それもまた足枷となります。 したがって、家禽疾病においては個々の個体治療という概念は最初からなく、 それらの点が診療獣医師が二の足を踏む原因となるのです。 そもそも、家畜保健衛生所の検査や診断というのも、患畜の剖検から始まりま す。産業動物あるいは経済動物と呼ばれる動物の中で豚や鶏をペットとされる 方は診療を引き受けてくれる獣医師が、そうそういないということを事前に承 知しておかなくてはなりません。 7月10日の みはるさんへ メガバクテリアというのは、ひじょうに大形のグラム陽性桿菌であり、上部消 化管の常在細菌叢の1つです。 日和見感染症の1つと考えられており、吐き戻し、体重減少、下痢等がその主 な臨床症状といえます。この細菌は、前胃および後異に障害を与え、拡張や粘 液分泌の増加、胃内の酸度低下、扁平上皮の軟化等を引き起こすとされている ため、解剖してこれらを確認するのが、もっとも信頼できる診断であるとされ ています。 つまり、臨床症状では他の疾病との区別にならず、この菌自体が常在菌である ため、「そ嚢」に菌が見られたというのは診断根拠にならないからです。 しかし、臨床医としては、大量の菌が確認できたのであれば、診断的に治療を せざるを得ないのも事実です。 有効とされる抗生物質については、インビトロにおいては研究によって個々に 異なるとのことであり、治療の成功例はあまりないそうです。 その一方で抗真菌剤との併用が良いとも言われているそうなのですが、みはる さんのセキセイは、生後5ヶ月の時点にカビの治療を受けているとのことであ り、抗真菌剤の併用もすでに意味がないかもしれません。 医学細菌の検査に携わる人間には、教科書となる本が何冊かあるのですが、こ のメガバクテリアという菌は、元々そのような教科書から外れているところが あります。名称からして、あとからとってつけたような名称であり、どのよう に取り扱うかについての議論もあってよいように考えます。 つまり、常在菌を0にするということは、とても大変なことであり、かつ不自 然なことなのです。0にするためにどのような薬剤をどのくらい投与しなくて はいけないのかを考えると、特に小鳥のような動物が対象であれば、その弊害 にも配慮があってしかるべきではないかと考えます。 なぜ、この細菌が増殖したのかを考えることも重要な事だと思うのです。 |
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