意見交換掲示板過去発言No.0000-200302-203
タダは無理! |
投稿日 2003年2月19日(水)22時17分 わたらい先生
野生鳥獣の場合、各都道府県から助成金が出ている場合があります。 つまり、税金が使われているのです。 獣医師会に所属している病院でなければもらえないとか、上限が決まっていて、黒字どころか持ち出しにならないで済んだ事は皆無とか、問題はあります。 あまりにも少額なので辞退している先生もおられます。 しかし! 僕の病院でも野生鳥獣を連れてきた方からお金を戴くことはしていませんが、基本的に「(どこでも)タダでやっている」という事ではないのです。 こういった助成の対象からは、イヌ・ネコ、他にアライグマなどのいわゆる「帰化動物」、元来その土地の野生生物ではなく、人間が持ち込むことによって存在することになったと考えられる生き物は外されます。 こういった生き物も「はねたヒト」か「連れてきた人」から依頼があれば「治療」はします(殆どのケースで安楽死は論外)、もちろん報酬あっての依頼です。 相手がキチンと責任をとれる方であれば、金額について考慮はすると思います。 ただし、並大抵のことではありません。 (そもそも交通事故は高いときは本当に高い) 僕の住んでいる辺りだと、コレくらいの事をやって、自分でお金を払って、飼い主を探す所までやってくださっているようです。 治療費 ? 新聞社(命中率の高い、大勢が見てくれる迷子欄への掲載だと4.5万円、無料で開放している新聞社もある) 同じく新聞社、飼い主が見つからなかったときの里親募集に同額程度使うことがある。 警察、保健所、各動物病院への問い合わせやビラ配り 実費 地域のネット掲示板等への書き込み 実費 ペットの葬儀屋(死亡した時ネコだと1.5万円くらい。清掃事業所などに「ゴミ」として頼むとタダ!雪が降るので冬季なら地面に埋めるのは無理) 場合によっては終生飼育。 ・・・これだけのことをキチンとやってくれる方達だから「考慮」するのです。 さすがに頭が下がります。 この間に獣医師は「治療」に専念します。 病院は死体置き場でも、収容所でもありません。 イベント(=治療)が終われば、(どういう結果であれ)患者さんは出ていきます。 こういった治療、飼い主探し、里親探し、飼育、遺体の処分、全部病院へ押しつけていこうという不埒な方にお会いすることもありますが、門前払いします。 こういう事が年に何回かあって、1年に1頭程度居候化した動物を増やしていっただけで、10年後にはまず10頭(以上)の居候を養うことになります。 経験的に言って居候は増えることはあっても、なかなか減ることはありません。 どこをどう放浪していたかワカラナイような連中でも、意外と長生きします。 僕が以前に勤務していた病院では、入院している患者さん達とは別にそういった動物達を1〜2人で(多いとのべで25〜30頭くらい?)管理していました。この時のスタッフは熟練した古参の方達でしたから、何とかコレで受け付け、外来、手術、消耗物品の注文管理、機械のメンテナンスなど日常業務を回すことが出来ました。 もちろん、新人のスタッフでは手に負えませんし、ベテランの方達で30歳以上になるまで病院に勤めてくれる方達は少なくなります。何年かすると自然とパワーダウンが始まります(純粋に、数を「こなせる」のは経験です。古くからいるスタッフが大勢いないとダメなのです)。 続けていけば、間違いなく病院の機能がストップし、経営が傾きます。 冗談でなく「沈没」する事もあるかもしれません。 だから「無理」を言う方は門前払いするように、なりました。 それでも、ときどき「無料」でやってしまうことがあるかもしれません。 でも、そういう時、大抵の獣医師は(病院関係者も!)怒っているか泣いている気がします。 さもなければ、たまたま(モノスゴク)運良く「新しい子」を探していたのでしょう。 ようするに「やる」と「やらない」。真ん中は無し。 それがハッキリしないと周囲も困ります。 飼い主さん(あるいは責任者)が悩んでいる間は、指一本動かすわけにいかないことがあるのです。 タダ、あるいはそれに近い状態でやるのは(ふつう)無理です。 確かに、かなりしっかりした方でないと、難しいのでしょうね。 それが出来る人達が少ないのも判ります。 安楽死という作業は、ふつう大勢の獣医師がしません。 もう少し詳しく言えば、「治療の余地が残っていて、ぜんぜん元気になれる可能性のある生き物」である限りしません。お金のことは(とりあえず)除外。 いかにも、もうダメなら話が違います。 基本的に、どんな風に言い方を変えても、やってる行為は「殺し」です。 暖かいモノが冷たくなっていく感触を直に味わうんです。 元来、生き物を治すことを目的にしている人間達が、その逆の行為をやることがあるとしたら、その適応は非常に狭くなると思います(「通常」の状態ではあり得ない)。 僕の病院で料金表に載せている安楽死料は100万円です。 絶対に、ココまでして依頼してくる人間はいないだろうというブラックジョークです。 さすがにコレだけ積まれたら良心がぐらつくかも?と思ったので、そう設定してみました。 (少なくとも一部の獣医師にとって)それくらいやることが少ない仕事だと思ってください。 もちろん、この一連の書き込みに出ているネコさんを治療している獣医師が(安楽死にせよ治療費を割り引いたり、分割にするなり)同意するのであれば、それを止めるつもりはありません。 最後は担当した先生方の胸先三寸です。 |
|
|
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」 ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴) サポーターや広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)、 多くの人々に支えられています。 獣医師広報板へのリンク・サポーター募集・ボランティアスタッフ募集・プライバシーポリシー 獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。 @mukumuku_vetsさんをフォロー
Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved |