意見交換掲示板過去発言No.0000-200305-74
レス:伝染性腹膜炎 |
投稿日 2003年5月12日(月)12時24分 プロキオン
5月11日の アニーの保護者さんへ 抗体価は100倍であるがすでに発症している症例ということのようですね。 残念ながら、お書きになっている治療薬というのは存在していないのではない でしょうか? 「欧米」と書かれていますが、北米大陸を中心として流布しているネット情報 というか、噂のようなものと思われます。 その正体は多分、主治医の先生が話されているFIPワクチンのことだと推測 します。確かにこのワクチンの開発の経過はありますが、お書きになっている ように有効性という点でまだ疑問があります。 というのも、FIPの本態というのは、ウイルスというよりも免疫反応である からです。 通常はウイルスに対して免疫反応として、抗体が産生されて疾病は治っていく わけなのですが、FIPに関してはウイルスと抗体との複合産物に対しても抗 体が攻撃的に働き続けます。このためにウェット型であれば、腹水の貯留とい うことになり、ドライ型であれば胸腔内の肉芽腫(肉芽組織は創傷の治癒過程 であるが、肉芽腫は免疫反応です)の形成ということになります。 猫の体内においては「播種性血管内凝固症候群」という状態が見られ、一方で 血栓が形成されて血流の阻害が発生していながら、また他方ではその血栓を融 解しようとする現象も見られます。出血と凝固が同時に体内で起きており、全 身性に拡散しているのです。 つまり、コントロールできない免疫反応がこの疾病の本態であり、ワクチンに よってあらかじめ免疫抗体を作っておくということが、猫にとって有利に働く という保証がありません。逆に高い抗体価が有害となる場面もありえますし、 また、病原体がコロナウイルスですから、かなり多くの猫が子猫の頃にすでに このウイルスに接触して抗体を保有している可能性が存在します。 このような点がワクチン化が困難な理由となります。したがって、ワクチンが 製造されているようだという情報が流れても、それがネットでは朗報として、 治療方法ができたとなることもありますし、治療薬そのものと誤解される場面 は想像できます。 いざ、そのお薬は何ですかと尋ねた場合にあいまいなことになるのは、考えら れるパターンではないかと想像されます。ネットに流れているのは確証もない 裏づけもとられていない情報もすべていっしょにながれているからです。 では、実際に有効な薬剤があった仮定するなら、私は個人的には免疫抑制剤の ようなものではないかと推測します。 先程述べましたように 免疫反応によって発生する症状なのですから、ウイル スの増殖を無視すれば、免疫抑制剤によって症状の進行を遅らせることは可能 ではないかと考えるのです。 我が国においてては、インターフェロンとある種類のステロイド剤を併用する ことによって、症状の進行を遅らせることができたという報告があるようです。 まあ、その報告そのものを読んでいないので、軽々しく述べるのもいかがとは 思いますが。 ステロイドは免疫抑制と症状の緩和に目的があると思います。 インターフェロンは、IgG分画以外の免疫として抗ウイルス的に作用したか もしくは、大量に用いて負のフィードバック作用として免疫抑制に働いたかと 推測します。 お書きになられている「治療薬」が免疫抑制剤と仮定しても 新薬が開発され たということではないでしょう。既存のものの適応ということになると考えま す。 そして、アメリカでは、猫用インターフェロンは認可されていないはずです。 これは我が国で開発製造されたものですし、海外ではフランスとしか販売契約 が結ばれていないはずです(私の記憶では)。 つまり、何が言いたいかというと、FIPに関しては我が国の方が治療の選択 肢が広いのではないかということです。 猫の白血病のワクチンについても これを接種すると白血病に罹ってしまうと いう記述のサイトもあり、ワクチンの1滴を大量の水に薄めて飲用させればそ れで病気にならないというサイトもあるそうです。 どこかのサイトで見た治療薬というものが、あいまいな回答しか返ってこない のであれば、それはそこまでのお話であって、根拠のないお話だっと受け取ら れた方がよいでしょう。 そちらサイト開設者が嘘を言ったというのではなく、どこかのまた聞きであっ て確認せずに記載してしまっているのでないでしょうか。 個人的な推測としては、ワクチンのことが伝聞されているうちに誤解を生じた と考えるのが、最もありそうな話と思います。 |
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