意見交換掲示板過去発言No.0000-200311-124
>リホさんへ |
投稿日 2003年11月12日(水)17時49分 プロキオン
>私の言うリスクとは、もちろんアナフィラキシーの 問題も含まれてはいますが、(中略) このような強いアレルギー反応だけではなく 2〜3日の振るえ、元気がなくなる等のよくある副作用についても 小動物(ウチの場合は猫ですが)体に負担がかかっている ものと思っております。そういった子のリスクです。 このような点に付いてであれば、私はリスクとは考えておりません。これらは 体内にウイルスが侵入したために体の免疫機構が、サイトカインや白血球を介 してウイルスを駆逐するために働いている証拠であって、「リスク」や「副反 応」と表現するべきものではありません。 むしろ、免疫機構が正常に働いている「善感反応」と受け取るべきだと考えま す。豚の丹毒のワクチンなんかでも善感反応でジンマシンが出たりして驚かさ れたりしますが、普通の個体よりも むしろ高い抗体価が獲得できるというこ とで説明されていますよ。 もし、子犬子猫の時だけでなく、大人になっても毎回発熱して震えるようであ れば、これはすなわちアレルギーの1症状であって、ワクチン接種の対象から 外す必要があります。 発病してしまうとすれば危険であって論外ですが、一過性の軽度の発熱であれ ば、これはワクチン接種後の指導事項として、メーカーからも専用の注意書き も発行されています。安静にしておいてあげればよいでしょう。 >獣医師に相談しても「食欲があれば大丈夫」 「少し様子を見てください」等の回答で(間違ってはいませんが) 次からのワクチンについての選択肢は教えてくれませんでした。 主治医の先生のおっしゃられているとおりです。次回の接種については、発熱 するか否か、接種してみないと判断できることではありません。 普通の子であれば、問題はないはずです。 もし、病院や他人が嫌いで何かをされたということに対して、そのような反応 を呈しているのであれば、これは精神的な問題であって、ワクチンとは別の問 題です。切り離して考える必要があります。 >もし、抗体値による判断が出来き、この先○年は ワクチンは打たなくて大丈夫でしょう、という回答が出来れば 私は是非その選択をしていたと思います。 私はその方が動物にとって有益に思えるのはおかしでしょうか? おかしいというのではなく、その判断がおそらく不可能だろうということにな ります。 この点が実験室と野外臨床の相違となります。 というのは、抗体価というのは、直線的に低下していくものではなく、指数関 数的につまり「半減期」を有した減少のしかたをします。 そして、野外における病原体の接触の都度、この価は再上昇をくり返すわけで あって、接触したウイルスの量と期間とも関連して、正確な増減を予測するこ とは極めて困難と言えます。 それなら、増えるばかりかというと、個体の老化や代謝病あるいは、環境要因 によってマイナスの要因もあるわけです。 そして、出会うウイルスもベロタイプからメソジャエニックまで(ウイルスの 毒力の強さ)ありますので、流行のどのステージで、どのタイプのウイルスと 接触するかによって、同じ抗体価であっても感染発病の結果に相違が生じるの です。 したがって、ワクチンの接種回数を減らしたいのであれば、できる限り短い間 隔で抗体価のモニタリングをくり返して実施する必要があります。 この事実は、別に今初めて出てきた事ではなく、犬や猫にワクチンを接種する ように提唱されてきた当初から知られている事実です。 子犬や子猫の頃、ワクチンを複数回接種する理由として、抗体価を測定するよ りも複数回接種した方が早いという説明をお聞きしていると思います。 今では、検査料金も少しは安価になってきているようですが、各種疾病毎に測 るというのも、やはり大変なことですし、獣医師の手間暇も採血して血清分離 して温度管理の下に輸送するという点だけでも、単に接種するよりも大変であ ることは御理解いただけると思います。 この作業と検査機関に支払う代金を考慮すれば、ワクチン接種するよりも 安 価にすることはむずかしいことです。 >現在病院で勧めていない理由としては 「抗体値検査の費用が高い」 「抗体の数値だけでは抗体の持続年月を判断できない」 ということでよろしいんでしょうか? 検査機関への支払い代金は、安くはありませんが、こちらは飼い主さんが負担 して下さるわけですから、獣医師にとっては差程の問題ではありません。飼い 主さんの御考え次第と言えます。 繰り返しになりますが、抗体の持続期間は、1回の検査では分かりませんので 、定期的に検査していただく必要があります。 どちらの理由も飼い主さんが、そう望むのであれば、動物病院としてはかえっ て収入増となりますので、反対する理由にはなりません。 獣医師が反対するとすれば、各地域におけるワクチン接種率が減少することの 方です。 接種率が減少すれば、これは必然的に感染性疾病の流行に繋がります。1頭が そこそこの抗体価をもっていれば良いというわけにはいかないのです。昨日は 感染症が流行した方が病院は儲かると発言しましたが、こと疾病に関わる職種 としては、ただ儲かれば良いというのでもありません。 自分が今までやってきたことを疾病の流行ということで、否定されるわけです から、看過できないことなのです。 適度に疾病が流行してくれないと病院が儲からないと考えている獣医師は、こ ちらにはいないはずです。 第一の理由が感染症の防遏であって、二番目が患者さんと飼い主さんへの負担 の軽減です。 どちら良いですかと尋ねられれば、私とすれば「毎年接種」の方が動物にも飼 い主さんにも負担が少ないですよと返答します。 |
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