獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200401-283

レス 2題
投稿日 2004年1月31日(土)12時29分 プロキオン

1月30日の Peace−lightsさんへ

>レスについての質問なのですが、即断できないというのは珍しい症状、また
 は症状が多すぎる

ということではなく、単にその個体が有する癖のようなものなのか、病的なも
のなのかが分からないからです。
いつ、どういう時に、どのように起きるのか、どの程度のものなのかを実際に
確認しないうちに獣医師が意見を述べるべきではない事柄と考えたからです。

例えば、「スコティッシュホールドの血が入っていますか?」と私が尋ねれば
、猫に詳しい方であれば、「ああ、軟骨を疑っているんだな」と受け取るでし
ょうし、「ペーパーボーン」という言葉を口に乗せれば、「かなり、酷いのか
な」と思いを巡らせるかもしれません。
また、中には、「いやいや、自己免疫疾患によって関節が攻撃を受けているか
もしれないじゃないか」と深刻に考える方もいるかもしれません、「なに、単
純に赤ちゃん猫の頃の栄養が片寄っていただけのこと、そのうち直るさ」と考
える人もいるかもしれません。

猫における1つの動作や仕種でも、言葉からイメージするものにそれだけ差が
存在します。私が軽く受け止めて、安易な気安めを言って病的な状態が見のが
されても困りますし、逆に深刻すぎる心配をして飼い主さんを打ちのめしても
いけないのです。
Peace−lightさんがお書きになられている内容は、そのくらいに幅
ある中でのことのように思います。「百聞は一見にしかず」の諺もあります。
どのように説明に言葉をつくされても、やはりこの目で見てみないうちは、軽
々に発言してよろしいものではないと思います。

ただ、獣医師としてではなく、どこの誰だか分からないハンドルネームを使用
して発言するのであれば、「シラス干しばかりで育てられた子猫において、そ
ういう状態を見た事があります」と言う事ができます。
私は、これは非常に無責任な発言だと自分でも思いますし、飼い主に予断を与
え、もしも病的なものであれば、治療のさまたげにもなりかねないと考えてい
ます。私があげた例においても原因は1つではありません。
今、目に見えているものが全てとは限りませんので、「なんだか良く分からな
いけど…」というもの程、一つ一つの事象を積み上げて検討していく必要性を
感じています。


1月30日の まるさんへ
私が研修生の頃、会陰尿道漏の手術時に院長先生が私に言いました。「この手
術をしたからと言って、治るわけではないよ。手術後に飼い主から治っていな
いとクレームがくることはあるよ。何故だと思う?」と。

理由として、膀胱内の結石が全て取りきれるわけでは無い。尿道経由で逆流さ
せて洗浄しても細かい結晶は残りますし、また、結晶の形成される原因がある
かぎり、結晶は後からあとから形成されてくるからです。
物理的に結石を除去しても、結晶が排泄されるように尿道漏を形成しても、根
本の膀胱炎の治癒がなければ、すべて対症療法にすぎないのです。院長先生の
話は原因療法の重要性を説いた話なのです。地味であろうが、時間がかかろう
が、病気の本態を考慮しての治療が必要なことを教えてくれたわけなのです。

それなら、どうしたら良いのかという話になるのですが、答えは膀胱炎の治療
ということになります。
そんなことすでに充分やっていると言われそうですね、主治医の先生からもモ
ルモットゆえに成果があがらないと言われるかもしれません。
ただ、私もウサギで治癒困難ということで他の先生からまわってきた尿石症で
ある先生から教えていただいた方法で治療を実施したところ、非常に効果が見
られたことがあるんです。
最初にそのウサギを診療されていた先生も日本で最初にフェレットのフィラリ
ア症を報告された先生なので、いいかげんな治療をしていたというのでもない
でしょう。飼い主さんが、もう切るしかない(手術しかない)と言われて、考
えてしまって、他所の病院の門を叩いたということなのです。
私も、たまたま教わったばかりの方法(薬剤)があったので、実験になっちゃ
いますが試してみますかで、実施したということです。
その薬剤の名称をあげられれば、良いのでしょうが、教えてくれた先生が症例
を増やして発表するつもりと話されていましたので、それまでは、控えさせて
いただく必要があります。
ただ、特別な薬でもなく、すでに治療に応用されている先生方も少なからずい
るのではないかと思います。転院を勧めていると受け取られると困るので言葉
代えて言うと、
膀胱炎についても1つのアプローチだけではないということなのです。




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