意見交換掲示板過去発言No.0000-200401-39
レス2題 |
投稿日 2004年1月7日(水)11時23分 プロキオン
1月6日の みほさんへ 脱肛の場合、原因もさることながら、発症後に経過時間が問題となります。こ れは脱肛した肛門粘膜がうっ血を呈して、そのままでは環納できなくなってい ることがあるからです。そのような場合であれば、温水洗浄や高濃度の浸透液 等の処置が必要にもなります。 軽度のものであれば、環納して肛門を1〜2糸縫合しておくという処置が選択 されると思います。特段難しい処置ではありませんので、場所にこだわること はないのですが、できれば安静につとめて経過を観察できる所の方が良いと考 えます。 巾着縫合をしてしまうと、排便に支障をきたしますので、その場合には縫合を 解除できる者が傍にいる必要があるでしょう。術者が抜糸をどのくらいの時間 の経過後と考えているのかを確認しておくと良いと思います。 重症の例では、開腹して腸管をつりあげたり、壊死した部分の切除が必要だっ たりしますので、このような例では手術室以外の場所では実施すべきではない でしょう。 もっとも、普通はここまで来る前に飼い主さんの方が気が付いているはずです ので、こちらの心配はいらないでしょう。 大切なのは、下痢の対策です。こちらが、改善されていないと出口を塞がれて の下痢状態ですので、患者が苦しむことになってしまいます。 1月6日の タラ子さんへ ヒゼンダニというのは、所謂「カイセン」のことですね。犬から人間への感染 を心配されておられますが、実は人間にも「カイセン」がおります。 犬には犬の、人間には人間のカイセンが存在しているのです。それぞれの動物 に対して、各々固有のカイセンが寄生中として存在しているのです。 人間の場合は、第二次大戦後の栄養不良児とか、現在であれば養護老人施設と か、栄養状態や免疫の衰えた場合に感染が広がります。 カイセンは、皮膚組織にトンネルを穿って、そこで生活しますので、宿主の免 疫(体細胞性免疫)の攻撃を受けることになります。このため、感染すること はできても、相手が健康体であれば、爆発的な増殖ということは望めないので す。そこで、カイセン症という形で発症する場合には、宿主側に免疫の低下と いう前提条件が存在することになるのです。 それゆえ、カイセンが流行するのであれば、それなりの理由も必要とされるわ けです。カイセン自体はどこにでもいますので、感染源を特定する必要はあり ません。発症してしまった個体の問題ですので、患者である犬をキチンと治療 してあげれば、問題は大きくはならないでしょう。 症状の特徴は、掻痒です。先程、述べたように皮膚をトンネルを穿つので、こ のために痒みが顕著です。この痒みのために犬は自分で皮膚を掻いたり舐めた りして、自損性の外傷を伴います。これに皮膚常在菌が好期到来とばかり続い て二次感染を起こして炎症をひどくします。 したがって、治療はカイセンだけでなく、二次感染している細菌に対しても必 要となります。「カイセン症」の掻痒の原因は、カイセンと細菌ということに なります。これは、疾病概念と治療の上では大切なポイントと言えます。 |
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