獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200402-116

混合ワクチンの追加接種
投稿日 2004年2月15日(日)13時45分 プロキオン

>はじめまして、こちらの掲示板でも話題になっておりました
 混合ワクチンの接種期間につて教えていただきたくメール致しました。

ということであれば、意見の相違点というのは御理解頂いていると思います。

>確かに追加接種に関しては、個人の自由ではありますが
 複数の犬の出入りがある場合(ドックランやペットホテルなど)
 個人の犬の安全はもとより、他の犬への配慮も考えると
 何が一番安全なのか、とても悩んでおります。

結局、任意の接種である以上は、強制することは無理でしょう。

しかし、ワクチンが何の目的で接種されるかということなんですよ。飼い主個
人にとってみれば、犬が病気に感染しなければよいのであって、周囲の犬が全
てワクチネーション済みであれば、接種する必要はありません。
獣医師やトリマーからしてみれば、1頭の犬が感染してしまうか否かだけの考
えでは困ります。病気を感染させない(他の犬へうつさない)、もう一歩進ん
で地域内における防遏まで考慮されなくてはなりません。
自分が扱った犬への感染を未然に防ぐという観点からであれば、施設内へ立ち
入る犬に対してワクチンの接種を求めるというのは当然のことと言えます。
これは法律云々の話ではなく、動物に接する事を職業とする者の立場としては
むしろ、そうあらねばならないことといえますし、「あそこペットサロンで病
気をうつされた」というような噂にでもなったら、営業上の死活問題です。
ワクチン接種を求める権利はあると思いますし、ワクチン接種に伴う費用がト
リマーさんの収入になるわけでもないので、金銭目当てで要求していると受け
取られることにも繋がらないでしょう。

>AAHAのガイドラインとは、
 日本の風土・ワクチンを対象に行われたものなのでしょうか?

先のやりとりでもあったように日本の国内事情は考慮されておりません。

>また、3年毎にワクチンを接種される犬の場合の証明書は
 最終接種証明書と抗体検査等の証明書になるのでようか?
 その場合検査は間隔で行われるのが適切なのでしょうか?

1年毎が根拠が無いというのであれば、3年という数字にも根拠がないことは
前回お話しましたが、これは「お店の方針」と言うしか無いのではないでしょ
うか。
1年毎の接種であろうが、3年であろうが確認しなくてはいけないのは、「最
新の接種証明書」です。この日付けが何時までを認めるかというお店の方針次
第と言えます。
「抗体価の検査証明書」は、それを提示したAという犬のデーターであって、
別のBという犬には適応できません。Bへの感染防止という観点からは、Bに
も抗体価がどのくらいあるかを提示してもらう必要があります。
抗体検査の間隔も個々の犬の栄養や健康状態、飼育されている環境条件が異な
りますので、ひとくくりにはなりません。

元々のワクチンの接種間隔そのものが、そのような個体条件による相違を勘案
して、条件の悪い犬でも1年毎に追加していけば、感染を防ぐことができるの
ではないかという意図に基づく設定なのです。
したがって、実験施設内で好条件の下で飼育されていれば、1年以上有効とい
うデーターが出る事は不思議でもなんでもありません。むしろ、当然なことと
言えます。
ただ、野外においては、予想されていたのよりも悪い条件があるらしく、ワク
チンブレイクも起きてしまうようです。個体の問題とか特定の飼育者の問題と
言ってしまえばそれまでなのですが、1年間もワクチンがもたない個体が出て
しまうのもまた事実なのです。

>犬を取り扱う側としては、何を基準にしたらよいでのしょうか?
 ご存知の方がいらっしゃいましたら教えていただきたく
 お願い致します。

結局、飼い主として自分の犬の感染が防ぐ事ができればよいという考えと、職
業として犬を扱う者として、自分の所での犬同士の感染を防ぎたいという考え
との視点の相違だと思うのです。
法律に根拠を求めることができない以上は、基準は自分自身しかないのです。

AAHAのガイドラインとて、どなたかの発言にありましたように、ある特定
の団体においても、まとまらないからこそガイドラインなのです。あまり踏み
込んで発言してしまうのもなんですが、私も的を射た意見だと感じました。

多くの動物病院でも、待ち合い室に「ワクチン接種をされていない犬猫の入院
はお断りする場合があります」という注意書きがあると思います。病気で弱っ
て入院している患者のところへ感染症の病原体をもっている可能性のある犬や
猫を同室させるわけにはいきません。
また、国内で流通しているワクチンの有効期間はすべて1年と記載されていま
す。この期間を超過した個体を受け入れることによって生じたことは、獣医師
の責となり、ワクチンメーカーに補償を求める事はできません。

ワクチンの接種間隔というのは、責任を負う者が決めるしかないように思いま
す。飼い主さんが自分の犬に対して3年間隔でもかまわないというのであれば
、それは飼い主さんの責任です。何かあっても第三者に恨み言を言わなければ
それはそれでかまわないことなのです。その考えを尊重してあげましょう。
と同時に、犬を扱う者が職業意識から1年毎の接種を求めるのであれば、これ
もまた尊重されなくてはなりません。

自分のの犬だけは3年間隔を認めろと主張される方がいるのであれば、説明を
してもなお理解していただけないのであれば、無理してまでおつき合いをされ
る必要はないように考えます。その方がお互いに良いように思います。

なお、馬には「伝染性貧血」という疾病がありまして、この疾病の検査が1年
に1回義務付けられています。
が、都内のある競技施設では、競技に参加する馬に対しては「半年以内の陰性
証明」を求めています。法律が検査の有効期間を1年としているのにもかかわ
らず、さらなる検査を求めていることになります。
こちらの場合など、競技者が提訴すれば、法律によって勝訴が望めるように考
えられます。勝てるかもしれないのに、多少の不満は飲み込んでも検査すると
いうことのようです。
疾病の重要性を理解していただいているのか、スポーツマンシップなのか、力
関係なのか、それは分かりません。ただ、そのような例もあるということです。






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