獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200402-207

>ちゃいさんへ
投稿日 2004年2月23日(月)17時52分 プロキオン

セキセイインコの脚の麻痺ですが、腹部の卵の破片のようなものというのは、
レントゲンで2方向(正面と90度違いの側面から)から撮影しての確認でし
ょうか?
卵に由来するものであれば、いささか経過が長過ぎるように感じます。腹膜炎
の併発もなかったのでしょうか?
卵の破片というのが比喩であって、別の腫瘍であった場合、レントゲンに2方
向からの撮影が、卵であるか否か、そして腫瘍ならその位置を確認してくれま
す。
ついでに鳥には、子宮はありません。体外に卵を産んでしまうのですから、胎
児を育てるための「子宮」は必要ありません。輸卵管の膨大部をそのように呼
びならしているということなのでしょう。

さて、セキセイの脚の麻痺については、多くの症例が腎臓の腫大に由来してい
ることが多いのですが、診察された先生はそちらへの言及はありませんでした
か?
鳥類の場合、腰部の神経叢が腎臓の中を通るかのように椎骨から出ており、腎
臓が腫れると、神経が圧迫されて麻痺を来します。
腎臓が腫大する原因にはウイルスによる炎症もありますし、食事性も、腎炎も
ありますし、腫瘍もあります。
どのような原因であっても、腎臓は背中側の一番奥に存在し、骨盤の中に埋め
込まれたかのように位置しておりますので、外科的な処置はとられないのが普
通と言えます。
内科的な治療が選択されるのが一般的であると御理解下さい。

しかし、今回の症例がお書き込みにあるとうり、輸卵管内にある卵であれば、
これは摘出は可能です。
また、輸卵管の外側にある腫瘍であっても癒着がなければ、輸卵管の切除と同
様であって、鳥の専門を称する先生あれば、可能のように考えます。

小鳥の腹腔外科というのは、気嚢の存在があって、こちらに細心の注意を払わ
なくてはならず敬遠される先生が多いのですが、輸卵管はかなり長く、フック
で体の外まで引き出せるはずですし、卵巣まで摘出せずに部分切除でも、目的
を果すことは可能なように考えます。

私としては、腎臓由来なのか、輸卵管由来なのか、ぜひ確認してみて欲しいと
考えています。


トリインフルエンザにつきましては、仰せのとうりです。小鳥屋さんに引きと
ってくれだの、捨てたり、処分したり、自分のところに鳥がいなければそれで
よいという行為が増えている事は大変になげかわしいことです。
今、発生地で実施されている処置は国内の鶏に感染を広げないための処置であ
って、家畜保健衛生所の所管です。人間の保健所が対応しているわけではあり
ません。
ものの順序も道理も、飼育している鳥達を処分することには繋がっていません。
マスコミの映像が不安を煽っているだけのことなのです。
その反面、発生地の映像を欲しがって、制止しようとしている家保職員の目を
盗んで少しでも鶏舎に近いところで撮影しているようなのですが、その行為が
ウイルスを衣服や靴に付着させて、移動禁止地域の外まで、広げる事になりか
ねない点に気が付いておりません。
エイズもエボラ出血熱も、マールブルグもおよそエマージングウイルスは、特
定の地域に限定されていた病原体をジャングルに分け入って行った人間が遠隔
地にまで広げてしまったものです。
疾病におびえて、感染していない鳥達を捨てる行為も、ウイルスの拡散に手を
貸す行為もどちらもひとしく愚かと言わねばなりません。

トリインフルエンザは、今急に出現した病気ではありません、過去から存在し
ていた病気なのです。
鶏のように何万羽という単位で飼育されているからこそ、30万とか40万羽
という数の斃死が出るのです。自然界でくらしている鳥達でこの病気のために
絶滅した種類の鳥というのは無いのです。
まして、哺乳類での大量死というのは例がありません。防遏こそできていませ
んが、人類はトリインフルエンザという病気とは戦ってきた歴史をもっている
のです。獣医師のもっている教科書には記載済みの病気なのです。正体不明の
魔物を相手にしているわけではないのです。

鳥達も玩具ではないのですから、パニックから正気に戻った後、恥ずかしくな
るように行為は厳に慎んで貰いたいものです。

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