意見交換掲示板過去発言No.0000-200408-57
野生動物の獣医師 |
投稿日 2004年8月4日(水)12時25分 投稿者 プロキオン
8月4日の 葉月さんへ 野生動物に関わる仕事をしたいが、獣医師になる必要があるのか、もし 必要性がないのであれば、どのような資格が必要なのかという質問です よね。 野生動物について診療行為(ほとんどが治療行為になると思われますが) を実施したいということであれば、やはり、獣医師資格は必要です。 そして、それを職業としたいのであれば、それを目的とした救護施設を 設置している行政機関の職員として採用される必要があります。つまり、 公務員資格も必要です。 野生動物は、国民共有の財産と考えられますが、彼等自身が直接診療代 金を支払ってくれるわけではないので、職業としての野生動物獣医師を 志すのであれば、そのような形態がないと成立しないでしょう。 さて、獣医師資格の必要云々ですが、飼い主がいないのだから、診療代 金を払ってくれないのだから、獣医師資格は必要ないと考える向きもあ りますが、金銭の授受の如何にかかわらず、反復継続される以上は、こ れは完全に獣医師法に規定される「獣医療行為」であり、かつ「獣医業」 に該当します。 また、いかに理屈を述べて獣医療行為でないとしても、獣医師でなけれ ば、診療や治療に必要な薬剤や器材が入手できません。こちらは、薬事 法が関係してきますが、法律もまた単独で機能しているわけではないと いうことなのです。 診療行為が葉月さんの目的であれば、獣医師資格は必要と言えます。 診療行為以外が目的であれば、獣医師資格は必要とされません。むしろ、 大学の獣医学科における講議内容は、家畜や畜産についての勉強ですの で、そのまま野生動物に応用できるわけではありません。農学部の中の 1つの学科であることを忘れるわけにはいかないでしょう。 したがって、野生動物の何について、自らのテーマとするかによっては、 その分野の大学に進まれる方が良いわけです。 例えば、コウモリやイルカのエコロケーションがテーマであれば、彼等 の発生する超音波を測定する機械についての知識があった方がよいこと になりますし、母子の間にあるボーカルコミュニケーションがテーマで あれば、音響関係の知識が役に立つかもしれません。 資格というのは、何かをするために許可がいるのであれば、そのための 資格は必要かもしれませんが、根本的には「野生動物が好きだ」という のがその道に進むための根源的な資格と言えるのではないでしょうか? 大学も、また本来は、講議内容を与えて貰うための場所でもありません。 何を学びたいかで自ら選択して志すべきところです。 自分が何をやりたいかで、進学すべき大学を選ばなくてはなりません。 自動的に何らかの事柄を教えてくれて、何らかの資格が貰えてではあり ません。とくに野生動物のように、収入に結びつきにくい相手であれば、 獣医師に関わらず、職業として成立させるのは、かなり厳しい道と言え ます。 私の知人のさらに関係者ということになるある日本猿の研究者の場合は、 大学から支給される研究費年間3万円が彼の収入の全てだそうです。実 際には奥様のパート収入が生活を支えているわけです。 まあ、そうはいうものの、高校生がそこまで明確に将来像を描いている であろうということは、私にも考えられますせん。 友人の1人は、自分のやりたいことが見つからず、大学に入学しては退 学の繰り返しで、やっと4つ目の大学で獣医師になりました。今では、 循環器の方をテーマとしているようです。 結局、葉月さんが野生動物の何について興味をもたれているのかが分か らない以上は第三者としては、適格なアドバイスはできないでしょう。 自らが道を拓く気概をもってください。 |
|
|
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」 ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴) サポーターや広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)、 多くの人々に支えられています。 獣医師広報板へのリンク・サポーター募集・ボランティアスタッフ募集・プライバシーポリシー 獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。 @mukumuku_vetsさんをフォロー
Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved |