ＱＱＱさんへ。
去勢手術をするのはかわいそうという気持ちがあるのは当然のことですよね。
自然のままにしておいてあげたい、健康体に無理に手術のメスを入れたくない、
麻酔のリスクはどうなのだろうか、、、いろいろ考えてしまうと思います。
でも、去勢手術をしないほうがかわいそうという側面もあるのです。

オス犬は自分からは発情しません。
発情中のメス犬が出す匂いを感知して初めてその気になるのです。
子孫を残そうとする本能はものすごいものです。
なにがなんでもメス犬に近づこうとします。
その望みが叶わないことは犬にとって強いストレスになります。
室内で飼っていても、外に散歩に行けば発情中のメス犬の残した匂いに出会います。
また、発情したメス犬の出すフェロモンは風に乗って2キロ四方に届くといわれています。
ストレスからオス犬は逃げることはできません。
また、去勢をせずに精巣を残したままだとそれが腫瘍化する率が高まります。
精巣腫瘍はたいていは歳を取ってから発見されるので、
腫瘍摘出手術をしたくても高齢のため手を出せないという場合が多いのです。
つまり、単に子どもを作らないというだけでなく、
ふだんのストレス軽減と将来なってしまうかもしれない病気の予防のためにも、
繁殖を考えていないのなら去勢手術はしたほうがいい、私はそう思います。

トイレ以外の場所に排泄をしたり、人の手足にしがみついて腰振りをしたりするのは、
発情メス犬の匂いを感知した性衝動がきっかけのこともありますが、
必ずしもそれだけが原因ではありません。
してはいけないことをしたり、人がいやがることをすると飼い主がおおげさに反応してくれる、
それがうれしくてついついそういうことをするようになってしまうことがあります。
性衝動だけが理由でない以上、去勢手術をしてそれをしなくなるかどうかは未知数です。
また、去勢手術をしても完全にメス犬への関心をなくすわけではありません。
場合によっては、機会があれば去勢手術後もメス犬と交尾をします。

去勢すると体重が増すというのはホルモンの関係でたしかにその兆候はあります。
が、それよりも、去勢しちゃってごめんねと思う飼い主が、
おやつなどをたくさんあげて罪ほろぼしをする習慣を作ることが多いため、
それが原因で太らせてしまうことが多いのです。
性格がおとなしくなってしまうわけではありません。
発情メス犬によるストレスが減るぶん、のんびりおだやかに暮らせるようになるだけです。
元気で活発でお茶目な性格は消えるわけではありません。
体重増加も性格変化も、飼い主とのコミュニケーション次第です。

日本の獣医さんの多くは、繁殖に使わないなら去勢をしたほうがいいという意見をもっています。
シンガポールの獣医さんはどうなのでしょうか。
かかりつけの獣医さんによく相談してみてくださいね。