獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200502-22

ねこママさんへ〜口内炎を中心に
投稿日 2005年2月4日(金)16時45分 投稿者 山下 貴史

ねこママさん・・・書くべきか迷いましたが、このままでは・・・と思いついつい余計なことをしています。こんな考えもあるということで、話半分でも構いませんので、お気を悪くなさらずに読んでください。長遅れました、獣医師をしております山下と申します。

猫さんの口内炎・・・その病態はかなり複雑です。原因も、乳歯遺残などの解剖学的要因、尿毒症や糖尿病などの代謝・内分泌疾患の延長、栄養バランスの欠如、腫瘍、免疫疾患、歯周病関連細菌や真菌の関与、ウイルス(カリシ、ヘルペス、白血病、エイズ・・・)、外傷、毒性物質、特発性(原因不明)・・・などです。

なので、通常当院初診時では病歴(問診)の聴取と身体検査を詳しく取ります。許されれば最低限の検査の中に、一般血液検査(特にタンパクと白血球)、血液生化学検査(特に腎・肝・血糖)、ウイルス検査(エイズ・白血病など)をやらせていただきたいむねを話します。糞便検査でジアルジアという原虫が出ることもありますし、腎疾患(尿毒症)は進まないと血液検査では分かりづらいので尿検査をすることもあります。(問診や検診で方向性を決めます)

下に書く治療により60%は完全に寛解するというデータもあります。残りうちの半分(つまり全体の20%)は治療がいらない程度に落ち着きます。(つまり80%は何とかなります)が、13%は通して何らかの処置を必要としますし、残りの7%は治療に無反応とされています。

現在、言われている治療法を列記します。
麻酔下での歯石や歯垢の除去・抗生物質による口内炎症状の安定・ステロイド剤や免疫抑制剤による消炎や過剰反応の抑制・免疫調整物質での免疫調整・インターフェロンによる調整・ラクトフェリンによる免疫調節と抗菌作用・低アレルギー食による炎症管理・炭酸ガスレーザーなどのレーザーによる緩和・コンドロイチン硫酸などによる細胞骨格等の修繕と免疫調整・凍結外科・放射線・口腔内の消毒・サリドマイド療法・抜歯(臼歯・全部の歯)などです・・・。

どれができるとか、どれを信じているかは獣医師によってまちまちですし、上記の中にも怪しいものもあります。全部の歯を抜くというのはご家族さんに「えっ!?」と思わせてしまいますが、猫さんは全ての歯が抜けたとしてもカリカリフード(ドライ)もぱくぱく食べれますし、かえって悪さをしている歯があるほうがツライことも多いです。なので、まずは歯石取り(もうされていると思いますが)を行い、口腔内の毎日のケアから入ります。抗生物質を使うこともします。そして、それらによっても症状の改善が無い場合はまずは炎症部位の抜歯(多くは全臼歯)を行ないます。

最終的には全部の歯を抜くこともあります。でも、ほとんどの患者さんはそれによって食事を始めてくださいますので、よかったよかったとなります。

中には検査などをしたくなかったり、いっぺんに多くの金額をかけることができなかったり、エイズの子などで全部の歯を抜いても症状がよくならない子もいます。そんなときには、副作用を承知でステロイド剤(可能ならば内服・無理ならば長期作用型の注射)を使用することもあります。

また、口内炎は猫さんにとってはかなりのストレスとなります。猫さんはストレスにより高血糖状態になりますから、口内炎自体が糖尿病の原因のひとつになりえます。先輩の獣医師のところではコントロール困難な糖尿病の患者さん(猫さん)に全部の歯を抜く処置をしたところ、糖尿病状態に改善が見られたということもありました。

幸い猫さんは人の持続型インスリン「ランタス」1日2回の投与でコントロールできる印象がありますから、口腔内の管理とともに血糖の管理も可能だと思います。(難しい場合もありますが・・・)

また、ドライを口内炎の患者さんに無理やり与えるというのはやはりストレス下に置くことになりますから・・・そうなのでしょうか・・・。積極的にやるのであればPEG(胃チューブ)などを設置(鎮静下ですが5分かかりません)したり、経鼻カテーテル(これもさほど嫌がりませんので)して、痛い思いをさせずに栄養状態を改善したいものです。
(本文書く欄が狭くて全文を読み返すのに一苦労で、文脈がばらばらかもしれません・・・読みづらかったらごめんなさい。)

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