獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200502-53

無症状の心不全
投稿日 2005年2月6日(日)12時50分 投稿者 Big 1

僧帽弁閉鎖不全症などの治療にとってACEIの果たす役割はとても重要で、その投与に
よって得られる恩恵は大きいものです。ですから、ほとんど現れることのない副作用だけ
が一人歩きしてしまい、投与されるべき患畜への投与が躊躇われることがあってはならないと言う観点から、私はコメントをしております。個々の患犬については実際に診察しておりませんので、現状で投与が必要であるか否かを論じるのは控えさせてもらっています。

NYHA1あるいはISACHC1に分類されるような初期心不全への薬物投与の是非については、すでに山下先生が書かれていることで十分だと思います。ですから、蛇足にな
るかもしれませんが、ちょっとだけ。

今流行りのEBMという観点から言えば、無症状期の僧帽弁閉鎖不全症にACEIを投与
することにより悪化を延長するという証拠は無く、投与することを勧めるだけの根拠はな
い。。。ということになります。

このことは循環器学会などでも良く話題に上ることですが、多くの獣医師が、早期に投薬
を始めた患犬のほうが長期間にわたりいい状態を保てているという心証を持っています。しかし、早期から投薬を始め、それをきちんと続けられる人は、他の面(食事管理や環境管理など)でもきちんとされておられる場合が多いため、一概に薬の効果であると断定できないという事情があり、まだデータを示して説明できるという段階にいたっていないのですね。

またデータ取りの元となる、ISACHCもNYHAどちらの分類でも低症度の基準の中に「無症状」というパラメーターが関与してきますが、症状はあくまでも他者からみたものであるため、ここにも判断の難しさがあるわけです。

診察結果からは、何らかの症状はあるんじゃないだろうかと思われる症例でも、飼い主さんは「これといって症状はでていない」とおっしゃることが多々あります。これは飼い主さんが嘘を言っているのではなく、ほんとうにそれらしき症状に思い至らないことがほとんどのようです。
しかし、飼い主さんを説得してそういった患犬に投薬してもらうと「なんだか動きがはつ
らつとしてきた」「なんだか元気が良くなった気がする」となり、そして「症状は無いと思ってたけど、ほんとうはあったんですね」という結果になることがあります。おそらく
患犬自体は、なんらかの症状を感じていただろうと思います。言葉が話せれば「さいきん運動すると息切れが早くて」とか「なんとなく動悸がするんだけど」と言ってくれるかも
しれません。

飼い主さんは、自分の愛犬が若い頃どうだったか、、、よく考えて、もう一度様子を観な
おしてみてください。日頃の様子を観られるのは飼い主さんだけなのです。獣医師は平常時の患犬を診ることはほとんどないのです。診察台に乗った段階で、それ以前に来院した時点で、すでに普段とは違うのですからね。

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