５月５日の　たかぴさんへ

野良猫ということですが、餌をやっていれば、その方が飼い主さんです。
家の中にいる、外にいるは、第三者には関係ありません。
避妊去勢手術まで実施されているのですから、その点は御立派と言えま
す。
動物病院には、野良猫であるから治療代は払えないという方が、それは
それは多くお出でになられます。玄関先に黙っておいていってしまう例
も多いですから、まず誰が責任を負っているのかの確認が必要です。
「野良猫だから、治療費いりません」では、動物病院は早晩潰れてしま
います。
逆に、自分の飼い猫であるからと治療費をキチンと支払って下さってい
る飼い主さんが、その言葉を耳すれば、裏切られたとは感じないでしょ
うか？　この猫も野良猫であると申告すれば、お金はかからないという
ことになってしまわないでしょうか？

動物を守ると言う行為は、飼い主さんが主人公です。そこには、あなた
にとって、その動物がどのような意味を持っていますかという問いかけ
があるのです。
動物が、そこに暮らしていることを気にかけない方であれば、それはそ
の方の考えです。どうにかしたいと思った時点で、思われた方が主人公
なのです。
動物病院は、代価を得て、そのお手伝いをしているのに過ぎません。

待ち合い室に、他の飼い主さんが居れば、「野良猫値段」は私は絶対に
口にしません。
また、野良猫値段を他所で喋ってしまいそうな方であれば、野良猫値段
も摘要しません。
この点については、今回、とってつけたように言及しているわけではな
く、過去にも述べております。（過去ログを検索していただけると分か
るはずです）

少し前に「獣医はビジネスか？」という投稿がありましたが、つい最近
になって、コミック誌にそのようなテーマの連載漫画があるのを知りま
した。
獣医はビジネスと称して、飼い主さんを打ちのめしておきながら、奇跡
を起こして行く獣医師が主人公です。手塚治虫の「ブラックジャック」
もお金に汚いと言われながら、奇跡のメスを振るっていました。

自分をキチンと仕事をしたのであれば、当然報酬を得る権利はあるはず
です。仕事をしているのにもかかわらず、報酬を請求すると嫌な顔をさ
れる職業というのも珍しいと思います。

野良猫でも、捨て犬でも、これらにどのように関わるのかは、ひとりひ
とりの気持ちのありようなのです。
相手が獣医師であるからと言って、実験動物への感謝の気持ちを現せと
感謝の強要をされるのは、好ましくありません。第三者から言われるま
でもないことですし、また特定の者に返すべき感謝でもありません。

医療には、お金がかかります。残念ながらと言えば、残念ながら。当然
といえば、当然ながら。
この点を忘れられては困ります。とくに動物病院は個人商店であって、
診療科目も多岐にわたり、器財や医薬品は、人間の病院よりも効率が悪
くなっています。１人の患者さんんために取りよせた薬が貰った代価よ
りも高価についてしまったということも、しばしばあります。
動物病院は、ある特定の患者さんのためにあるのではなく、その地域に
暮らしている動物達が対象となります。第一義的には、まず自分の病院
が存続し続けることが、より多くの動物の健康を担っていくことだと考
えています。

漫画の中の言葉ですが、「獣医師は魔法を使えない。でも、飼い主は魔
法使いだと思っている」とあります。登場する悩める獣医師の言葉です。