意見交換掲示板過去発言No.0000-200507-49
個別事例と一般論 |
投稿日 2005年7月6日(水)00時26分 投稿者 はたの
は分けて考える必要があるでしょう。 >ししまるさん このネタでやたらとレスがつくのは獣医師諸氏の日頃の鬱屈ゆえという面が大きく、ししまるさんの事例自体が問題視されているとは限りませんから、あまりビビらずに、追加の疑問おありでしたらどうぞお気を楽に。 集合注射での事故ならば、獣医師と畜主の話し合い以前に、誰がどういう権限と責任を負っていたのか、を問題にすべきとなります。役所、獣医師会、個々の獣医師、畜主の関係を見直す必要があるでしょう。 行政の行う無料の法律相談もありますし、弁護士会経由で相談しても、最初の30分ないし1時間はだいたい1万円程度以下ですみます。問題の構造や利害関係者の把握のために一度は弁護士に相談されることをお勧めします。 その上で、それが合致するのであれば、家裁の調停が有力な選択肢になるでしょう。 >all 一般論としての責任論であれば、権限と呼応して考えるべきでしょう。 その時のイヌの管理責任者が獣医師なのか畜主なのか、というのが本質的な問題だろうと思います。(細かい過失相殺はおいておくとして)畜主の管理下にあって獣医師を噛めば、原則として畜主の責任があり、獣医師の管理下にあって獣医師を噛めば、畜主には責任はないでしょう。 どういう処置をどういう方向からどの部位に行うのか、どういう痛みが予想されるのか、判断が可能でかつ期待されるのは獣医師であり畜主ではありません。不動化のためにどういう選択肢があり得るかを知りうるのも獣医師であり畜主ではありません。このあたりを獣医師がしっかり検討し、インフォームドコンセントがなされたか、が大きな要素であろうかと思います。 やりたい処置ごとに、また動物の反応ごとに場合わけ段階わけして、どこまでを畜主に任せるか含めて不動化の手順をしっかり検討する、ということを獣医師がサボった時(「指導位は」で放り出した時。さらにいえば、お客様に対して「指導」などという上から下へモノを言う心持ちの時)に事故が起こりやすいのではありませんか? イヌは猛獣ではないから、と安易にやった時に事故は起きるのではありませんか? ひとつ典型を言うならば、バイアルから吸った針を替えてから打つ、というのを必ず行う獣医師、というのはいかほどの割合でしょうか? これを省く人と後から文句を言う人との相関はありませんかねえ・・・? 「イヌの目の前で注射器をかまえ」・・・過失がありませんか? その時は大丈夫といって2週間後に・・・過失がありませんか? 注射で痛い思いをした可能性がある動物であれば、動物から見えないような(かつ動物は観察できるような)姿勢を取るのは、獣医師に求められるミニマムな注意義務でしょう。 一度大丈夫と口の端にのぼらせたからには、その後、怪我がひどいことが判明しようとも何も請求しないのは人として当然でしょう。 また、現実問題として、どこまでのコントロールを畜主に求めるのでしょうか? 畜主がアテにできない入院時はどうするのでしょうか? 少しでも荒い動物はみんな殺処分を提案します? そもそも躾の問題ですか? どんなによくトレーニングされていても、大怪我すりゃパニックになるのは当然ですし、多数のイヌが集まる集団注射で興奮するのも当たり前ではないですか? そういう時でさえうまく扱えるかが臨床開業獣医師には問われているんではありませんね? 不動化の技術は、そういう時に必要なんではないですか? 1畜主として、個人的には、私は(よく知っている相手は別ですが)獣医師の保定技術に期待しません。うまい人もいますが、よくもこれで看板掲げているなというような下手クソもいますから。獣医師の指示によって引き離される(これ自体好みませんが)までは自己責任と思っています。だからこそ、畜主仲間には、平均的な獣医師以上の保定術を身につけようよ、と言いたいと思います。獣医師のためというよりも自己防衛のために。下手クソさ加減を棚上げにして飼い主のせいにする不心得者があり得るからには、患畜がどういう状態になっても(つまり意識が飛んで指示が通らなくなっても物理的に)自分で押さえきることができるほうが安全だからです。 他方、バイアルから吸った針のまんまで打とうとしたら苦情を言いますね。キットの場合など、針の番手も疑問に思ったら聞きます。「もう1サイズ落とすのは問題があるのですか?」と。刺入抵抗の大小は保定している側にとつては大きな問題ですから。 しかし、畜主全員に期待すべき水準とは思いません。かたや、おアシを払って専門的な知識と技術を買っているのですし、こなた、それを売っているんです。獣医師になる教育課程で必須でない/なかった、つまり「習ってない」かもしれませんが、それはお客にとっちゃ無関係です。開業獣医師が売っているのは獣医学的な専門知識だけではありません。それを実装し得る周辺技術もコミコミです。 獣医師は、診察を断ることだって可能です。手に負えない症例を専門病院に紹介するように、このイヌとこの畜主の組み合わせでは、自分の保定技術では扱い切れないと判断すれば、行動療法「をも」得意としている病院に紹介すればよいわけです。恥ずべきハナシですが、引き受けておいて後からぶーたれるよりはマシです。 集合注射にしても、義理はあるのでしょうが、法律上断れないわけではないのではありませんか? 自らの判断で扱うか否かを決めることができるわけですから、思っていたよりも気が荒かった、思っていたより畜主のコントロールが下手だったからといって畜主を責めるのではなく、自らの判断の甘さを責めるべきでしょう。 >ぼやいている獣医師諸賢に言いたいのですが、金と敬意と両方を同時に得られる職種というのはそうはありません。獣医師はサービス業であり、同時に、「先生」と呼ばれます。細かな責任論を獣医師が云々すること自体が獣医師に対する尊敬を減じているのです。 獣医師だって噛まれれば痛い、噛まれたくない、わかります。待合室で聞こえる範囲であっても、コントロールできない飼い主に悩んでおられることもわかります。手伝いたくなることしばしばです。 しかしそういったグチは、獣医師のみの場で吐かれるがよろしい。おアシと敬意とを同時に得るためには、ぜひともやせ我慢をすべきです。畜主の責任を云々する前に、獣医師の責任を最後まで追究すべきです。 消防士だって火は怖い。警察官だって犯罪者は怖い。けれど、だからといって、そういった人々が、それを公言したらどう思いますか? 「それを言っちゃあオシマイよ」ということもあるわけです。それを言わないからこそおアシを取りつつ、なお敬意を得られるのですよ。 火事である。中に人がいる。突入すべきか悩ましい。 消防士の判断で突入した。中の人を助けたが判断があまく消防士もやけどした。失火原因を作った人の責任をやけどした消防士が(当局が、はまた別です)問うべきですかね? 誰もアナタに小動物臨床開業医であることを強制はしていません。リスクが怖いなら転職されればいいのです。その飼い主がイザという時に首輪から手を離しそうか読めず、かつ、それを読めなかった自分でなく手を離した飼い主を責めたい気持ちになる獣医師には、その知識や技術の高低を問わず、臨床現場から退場いただくほうがよろしいでしょう。病理なりの生きた動物とは接する必要のない場面で活躍してくださればいいのですから。 スクイーズする(スクイーズペンがないならその代用品を工夫する)、ケージに入れてケージごとガス麻酔する、リードを2本つける、リードを鉄パイプに通す、処置するところと離れた場所で口輪する、吹き矢で麻酔する・・・さまざまな選択肢があり、当然、それぞれに呼応するリスクがあります。全体を見渡せることを畜主に期待しますか? 無理ですね。であれば、獣医師がプランニングする他ありません。 間違ったプライドを持たれませんよう。ぜひとも、金をとりつつ尊敬され続けるに値するプライドを持たれますよう。 |
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