意見交換掲示板過去発言No.0000-200508-26
RE:誤診に対する対処方法はありませんか? |
投稿日 2005年8月2日(火)18時51分 投稿者 山下 貴史
osakaさん、こんにちは。獣医師の山下と申します。 その診療現場にいなかった僕にはなんとも言えない部分はありますので、それぞれの先生に関して僕が感じたこととosakaさんがどのように考えていくことが今後そのダックスさんのためになるのかな?(ダックスさんですし、これからいくらでも病気になりますからね)・・・と考えてみました。ですから、参考程度でお願いいたします。なぜなら、僕の考えも偏っていると思うからです。(うちの患者さんに共通してお話しするのは「獣医師なんかを信じるものではないよ。獣医師の頭の中にだって限界があって、それを騙すつもり無く話してしまうことがあるから。あれ?と思えばそれを獣医師に質問すれば、それについてほとんどの獣医師はきちんと調べてウソをつこうとはしないはずだから、話し合っていこう!。」なんてことなのです。) <A動物病院> 3歳から発症した皮膚病に対して、最初からアレルギーのせいにしないことはむしろ素晴らしいと思いました。また、分からないことを「分からない」とおっしゃったことも素晴らしいですよね。中には分かったフリをしてしまう獣医師もおりますし、なんでもアレルギーやストレスのせいにしていまう獣医師もおりますので。実はここを受診している時にosakaさんが、「分からないって言われたから転院」というカタチではなくて、「分からなくても・・・でもこの原因をできるだけ探りたい!」と一言A先生に言って欲しかったです。もしかしたらA先生はかかりつけの先生として、いきなり「詳しい検査をしましょう!」とは言いづらかったのかもしれません。本気でやると10万円(院内可能な血液検査・院外への注文血液検査(ホルモン・IgE)・レントゲン・エコー・皮膚の病理検査・もし不妊化していなければ試験的に不妊化することも・可能ならば皮膚のパッチテスト・これらに治療など)は越えますから・・・。気心が知れているかかりつけだけに、勝手にご家族の心の中を読んでしまうことってあると思います。ですから希望を告げて、そこから皮膚の専門病院に紹介してもらえば一番早く結果が出たのかもしれません。もちろん皮膚の専門病院が常に正解!とも限らないかもしれませんが・・・でも信じれると思います。 <B動物病院> A病院での膿皮症の治療に改善が無ければ「ダニ」か「カビ」かも・・・と思ってしまうかもしれません。もちろん培養検査の結果なのかもしれません。しかし実は培養検査も症状と一致はしません…。カビにも糸状菌症のような治りやすいものもあれば、マラセチアのようにもともと持っていて慢性疾患に伴って出やすいものもあります。B病院に関しては情報が少ないのでなんとも分かりませんが、今回書いている内容はけっして間違ってはいません。もしかしたら顕微鏡検査で発見していたのかもしれません。 ちなみにA病院もB病院も弁護するつもりは毛頭ございません。が別におかしくない。 C動物病院:もしこの病院を受診される時に過去の病歴で膿皮症と真菌症の治療をしたとなれば、残るはアレルギーや免疫疾患・ホルモン疾患といった「基礎疾患」を持っていることを考えます。C先生はそういった判断も取り入れられたのかもしれません。おそらく、血液検査をしたときに院内での一般血球検査や生化学検査もなさっていると思いますので、ホルモンのカラミをなんとなく打ち消して…ということかもしれません。 ただ、ここで「???」と考えてしまうのは、血液から得られた(と思われる)アレルギー検査の結果の捉え方です。おそらく今現在の獣医学において血液検査(IgE)だけからアレルギーを診断することはできません。(正常でも反応はします。ですから96種類とか36種類とか関係ないんです。アピールと思っても良いくらいです。)あくまでも「可能性」の範囲にとどめておきます。僕はIgE検査は基本的にハウスダストの診断補助にしかしません。「食べ物のアレルゲン」の決定はやはり除去食試験です。先の田口正行先生の書かれていたようなアレルゲン除去食を何種類か少なくとも8週間は試して皮膚症状が消えればそこに疑われるアレルゲン(例えば牛肉だけ)とかを1種類ずつ試していく・・・症状が出ればアウトですね。しかしこれをきちんとできるご家族の人はなかなかいらっしゃいません。「花粉」に関しては季節性や特に痒い環境は・・・などで見ていくと思います。「ノミダニ」は駆除剤をつけますが、完全にシャットアウトは事実上不可能です。「ハウスダスト」はなくせないので除外は現実的ではないかもしれません。前後しましたが最初にアレルギーを疑うのはその皮膚の湿疹の分布状態などからで、アトピーに関しては大定義と小定義を参考にして考えていきます。 なので、血液検査だけでアレルギーの診断(あるなしも)はできないんですね。これは人でも同じことです。 また、診療は・・・実は後から診る獣医師のほうがかなり有利です。しかもインターネットなどでも評判を元にいらっしゃる場合、逆にまだ何もしていないのに信頼されすぎていて怖いことがあります。ただでさえ、多くのご家族は後から聴いた話を信じてしまいます。ですから、僕が後から診る獣医師になる時は最初に書いたように「僕だけを信じないでね。頑張るけど」というのです。自信が無いわけではないですし、むしろそのくらいの気持ちで数々の質問や説明を伺いたいのです。 ・・・とダラダラ書きましたが、ABC全ての動物病院はそれぞれ「誤診」に関してはないように思います。また、現時点でosakaさん的にはC動物病院さんへの信頼感が高いようにお見えうけしますので、信頼あるC動物病院で話し合いをしていかれるのも良いと思います。 もしアレルギーを疑った場合・・・僕(当院)に関して言えば、最初からステロイドを使用することはあまりありません。使用することでアレルギーでも免疫関連の皮膚病でもなんでもかんでも抑えてしまったりします。(中には「痒そうでどうしようもないから使ってくれ」と頼まれれば…それでも使わない理由を話してなるべく使いませんが…使うこともあるかもしれません)多くの場合は、一切の治療(内服・シャンプー・外用全て)を中止して、どれくらいひどくなるのかを観察していくことのほうが多いです。以前ですが、他院からの転院の患者さんでシャンプー毎日、内服も使って、慢性に治らなくて、一ヶ月いっさいのケア治療を中止して、皮膚系のビタミン剤だけでほぼ良化して、その後のちょっとした治療だけで数年の皮膚病が治った子もいます。この子の場合は、アレルギーという診断を前の病院で得ていましたが、完全にケアの過剰による皮膚バリアの損傷ですよね。 それと・・・おそらく現在アトピーを中心にアレルギー疾患の管理は「皮膚バリアの確立」と「アレルギー物質の除去」になります。あくまでも大切なのは「皮膚バリアの確立」ですから、皮膚の状態改善を伴わない・・・しかし効果があるように見える治療は、もしかすると抑えているだけに過ぎないこともあります。難治性のアレルギーの場合はどうしようもなくて症状を抑えることだけが治療のゴールになることもあります。そのあたりはやっぱり話し合いになると思います。 最後に・・・悲しいことにどんなに丁寧に育ててもosakaさんのダックスさんもこれから先多くの病気にかかってしまう可能性があります。まずは、気軽になんでも話せる・・・そんなかかりつけの先生を見つけてください。そして、常に「自分の子」として、獣医師に節度ある範囲での注文を付けてあげてください。一番のかかりつけはosakaさんなのですから (*^ ^*)♪ お世話係の先生・・・長文失礼いたしました。 |
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