意見交換掲示板過去発言No.0000-200508-42
パスツレラ菌、補足 |
投稿日 2005年8月3日(水)16時03分 投稿者 プロキオン
夏休みで子供にコンピューターをとられていて、アクセスが遅くなりま した。 stemaru先生のお話で完璧です。私のでる幕はないようです。 したがって、ちょっと異なる方面から。 補足するなら、哺乳動物だけでなく、鳥類からも随分と分離されること があります。 それも極めて重要な疾病としてです。「家禽コレラ」というのは、鶏に おける「パスツレラ・マルトシダ感染症」のことです。 私は、キジでもウズラでも遭遇したことがあります。 7月30日付けの私のレスでは次ぎのように書いてあったはずです。 >人間にも当然常在しています。気道や呼吸器の粘膜に健康な動物でも 、人間でも分離しようと思えば、分離できるのです。 豚において、ヘモフィルス肺炎を起こしている豚から、ヘモフィルス 菌を分離しようとするとよくパスツレラ菌が培地の上で遊走してしま って、本来の原因菌の分離をじゃましてくれたりします。発育もこち らの方が、特殊な栄養を要求しないので、ブワーっと発育してくれま す。 多少なりとも細菌とつきあいがある者であれば、珍しい細菌とも思い ませんし、動物から感染するのを問題視するのよりは、人間から人間 への感染の方が起こりやすいです。(細菌が人間の細胞に馴染んでい ますから) そして、他人から移されるのよりも、自分自身が体調を 崩してしまって、今いるパスツレラの増殖を許してしまうことの方が なお可能性としてはありえることでしょう。 健康な人間からも、パスツレラ菌が分離されることについて述べている わけですし、その発症についても言葉こそ用いておりませんがsute maru先生の説明にある「日和見感染症」であることにはついては言 及しております。 これは、大抵のサイトにある説明と同じはずですし、多くの場合の発病 メカニズムの説明になっているはずです。 人間同士の感染の例については、8月1日の説明のとおりですし、動物 からの感染は、その多くの場合が、咬傷由来ではないでしょうか。 ただ、そこに動物がいるからパスツレラに感染してしまうというのでは ないはずです。 また、ecoさんが、多くのサイトの説明で「パスツレラ菌に運動性が ない」という点を敢てあげておられましたが、こちらも「パスツレラ菌 が培地の上で遊走してしまって」という表現になっているはずです。 細菌の「運動性」は本来であれば、「懸滴標本」というもので運動性が あるかを確認しますが、一般的には「半流動高層寒天培地」を用いられ ることも多いです。 この培地においても、パスツレラ菌であれば、見かけ上の運動性陽性は 出現します。この場合も培地の鮮度と菌接種上のテクニックによって生 じます。 もとの文章を読んでいただけると分かりますが、検体から分離する際に 炎症病巣由来であって、水分や滲出液を多く含んだ材料であれば、分離 用の平板培地の上で細菌のコロニーが流れてしまって、きれいな単一の コロニーを形成してくれません。この状態のことを「培地の上で遊走し てしまって」と表現しています。 いくらでも生えて来てしまうことの例えとして用いており、個々の細菌 の性状検査における「運動性」とは異なる土俵での話しなのです。 また、このことを承知していないと、きれいな単一のコロニーを得るこ とはできませんので、あらかじめ分離用の平板培地の方を少し乾燥ぎみ にしておいて使用するということも必要となったりします。 上であげました家禽のパスツレラ感染症においては、敗血症以外にも消 化器からもかなりの頻度で分離されます。 消化器からも分離されると聞かされても、俄には信じかねるかもしれま せんが、この疾病においては比較的知られた事実です。 豚丹毒菌が海に生息するイルカから分離されたという話も聞かされてい ますし、私自身も、両生類や魚類で知られているエロモナス菌を体温の 高い鳥類(コブハクチョウ)や牛から分離した経験もあります。 細菌が相手であれば、固有の宿主とか、特定の臓器にしかいないという ことはないように思います。 感染するかしないかは、免疫力を含めた体力と暴露される細菌の量との 問題だと考えます。 ただ、やはり、それでも、もっとも媒介しやすいのは、同種の動物間に おいてなのです。理由は先日のレスに書いたとおりです。 動物と人間が共に暮らすと言う事に関しては、中川美穂子先生の「学校 飼育動物」のホームページの掲示板を一読されると、動物からの感染を 心配して質問を寄せて来られる方々に対して、逐一、回答を書かれてい ます。 そこには、「動物を危険視しないで」の視点があります。 この獣医師広報板の「どうぶつよくある相談」にも「人由来感染症」の 項目があります。動物が感染源というのではなく、人間が動物に感染さ せてしまっているケースも少なからずあるのです。 人間には自分自身を守るだけでなく、飼育している動物を守るという視 点も必要であると思うのです。 動物と暮らすということは、そういうことだと私は思うのです。 |
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