獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200511-18

緑内障〜アメコカさんへ〜
投稿日 2005年11月1日(火)22時13分 投稿者 山下 貴史

もう発言するまい…と考えていましたが、ちょっとほっとけなかったので…失礼いたします。獣医師の山下です。

緑内障の場合、最近ではうちではまず眼球摘出はしません。また、点眼での維持は高価なばかりであまり効果が無く単にお金の消費と思われる場合も少なくありませんのでほとんどで点眼もしません。

最近は内科からトライして、視力の回復が期待できるならば外科(緑内障の圧力を逃す手術)をしたいと思うのですが、緑内障発症から時間が経ちすぎていて視力はもうない(もしくは期待できない)ため緑内障自体への外科手術を行うことは僕はまだ経験していません。

となると、こう考えます。

1)視力の回復を期待できないが、点眼(内服も?)でどこまでごまかせるか?
2)視力の回復が期待できずに放置すれば痛みを感じる可能性が高いならばどうするか?
 その1:眼球摘出
 その2:眼内義眼(後述)
3)ゲンタマイシンなどを注入して目を破綻させて眼球癆を起こさせる
4)そのほか(レーザーとか)

でしょうか…。おそらく内科でコントロールというのは難しいと思います。しかも点眼液は高価でそれを複数使用することになると思います。ちなみにヒトは通常眼圧が少し上がるだけで肩こりや倦怠感などを起こしますが、犬ではそれを僕らは分かってあげられないだけかもしれません。それは、眼内義眼などの処置をすることで元気がアップするわんちゃんが多いことからも想像できます。

そこで、最近は眼内義眼を使うことが多いです。よほど手遅れで角膜炎や眼内炎がひどい場合は難しい場合もありますが、それでも最初は点眼などで維持しつつ状況を持ち上げて行うこともあります。その眼内義眼ですが目の表面は残します。その上で目のふちを少し切って目の中にシリコンのボールを入れるという感じです。手術時間は眼球摘出よりもかなり短くて、10分程度で終わることもあります。術後、完全にきれいな目というわけではない(後述)ですが、目玉も動きますし、まばたきもできま完全にきれいではないというのは、少し角膜が(目の透明な部分)白っぽくなること。けれど、緑内障のときのような結膜の赤さや角膜の充血はボクは起こさないと思います。それと一度大きくなった結膜は縮まないので角膜の大きさが正常より少し小さくなることが多いことです。目自体の大きさは正常の目を基準にシリコンの大きさを考えますので変わらないです。

ちなみに眼球癆はまぶたが内側へ反転してくることが多いので、将来的に涙を多くしてしまうことがありケアが大変のように思います。

最近は各地方にも眼科に強い獣医師がふえています。近隣の眼科に強い先生を探してみるのもひとつの手かと思いますし、一生点眼することを考えれば仮に地方でも全国を探して(旅行がてら〜不謹慎?〜)みるのも大して費用としては変わらないと思います。

ひとつの選択肢として考慮ください。

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