獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200602-156

ゆずさんへ
投稿日 2006年2月13日(月)03時24分 投稿者 sutemaru

某書籍がどのような種類のものであるのかわかりませんが、人間の赤ちゃんの育児書にもピンからキリまであるように全てその通りとは全く言えませんね。あくまでも参考にするものだと思います。何故なら生き物は全て同じではないですからね。
例えばカラーをして、薬を出してそれが要注意の病院といわれたら殆どの病院がそうでは無いでしょうか。
長年色々な飼い主さんと接しているとですね同じ言葉を言っても、全くご自分流に解釈され、あとで痛い目を見る事が度々起きてきます。こちらも馬鹿ではありませんから、深いお付き合いでしたら此処まで言えばこうしてくれるだろうと分かってきますから用心する気持ちは減るものですが、それでも後一言足しておけば良かったと思う事だってあります。そうなると必然的により注意深くなってきてしまいます。一例として、手術終わって、家で見るということで一応思いつく全ての注意をして、おかしいときはすぐ連絡をと言って返して、猫にはカラーは必要ないと言う事で腹帯をつけて返した後、猫が腹帯の隙間からお腹を気にして舐めて糸を抜いてしまい腸が出てしまった事がありました。すぐ再入院、抜糸するまで返さなかったですね。動物って予想もしない事をする子もいるのです。どんなに気を付けてと言ってもそういうことはありますからそうなるとそのための注意ですね。又糸によって気にしないなんていうことは個々の動物の性格にもよります。飼い主さんの性格にもよります。目の手術で絶対エリザベスカラーを取らないようにといっても、猫が気にして可哀想といって取ってしまい失明させた方もおります。「こんなものを付ける事はプライドが許さないんです、うちの子は」と言われる方に何人かお会いしました。二度痛い思いをする事や失明する事、どっちが可哀想かと思ってしまいますが、その飼い主さんの性格を見抜けなかった事を後悔しても追いつきません。そのような事から、用心深くなれば避妊でも一週間抜糸するまで置いておいて安心してから返す方法を取ります。金銭的にぼろうと思ってするわけではありません。動物の方の安全を優先してそうする事が多いです。野良ちゃんの場合、絶対術後食事も摂らなければ、排泄も我慢してしまう子もいます。そういう場合は連れて来た方の状態の把握具合で、後をちゃんと看てくださるかどうかで早めに返す事も多々あります。そのような場合、猫は例えば解ける糸を使っても、その前に大体自分で抜いてしまう子がいますので、腹帯をつけたままだったり、ケージを貸して安全に最後まで終われるような工夫はします。他の病院で野良だからすぐ返して良いと帰され、自分で早く糸を抜いてしまって腸が出た子を連れてこられた事もあります。野良だからとか飼い猫だからでその後の扱いを考えると、術後の対応はこれも一言では決められませんね。当然抗生物質はその子の為に出すと思います。
全て連れてきた方と、動物の性格と、こちらとの信頼関係で決めていく事で、糸がどうのカラーがどうの薬がどうのと言う表面の事だけで判断するのではなく、その動物の安全を一番に考えて行う事だと思いますよ。
何でもお金だとか、どういう医師が要注意かと思って考えないで、まずは動物の安全をどう考えているかという獣医さんとのかかわりを大事にされた方が、良いと思いますよ。
獣医師も一人の人間です。性格も難しい人が多いでしょうが(自戒)相性が合うかどうか手術する前に健康診断兼ねて色々探され、本当に大丈夫と思ったところで手術される事が良いように思います。避妊以外これから一生その子の健康を見ていかなければならないのですから、病気だってするでしょう、その時に焦らないで安心できる病院を探してあげて下さい。
カラーを付けるとか付けないとか、抗生物質を出すとか出さないとかは、その動物の環境で獣医師と連れてきた飼い主さんが判断する事で、一般的に書かれてそれを鵜呑みにすると、もし感染が病院を出てから起きたら、もしその子の体質で糸が身体に合わなかったら、もしその子の体質で傷の直りが遅かったら、等等書き込んでいたら限が無いほど予想しない出来事は幾らでも起きるものなのですからね。

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