獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200604-180

マイボーム腺腫のやりとりについて、
投稿日 2006年4月21日(金)11時50分 投稿者 プロキオン

ともさん宛てのレスを書きましたので、整理しておきます。
興味のない方というか、普通の方は、そのまま読み飛ばしてください。私なりの弁明の
ようなものですので。


ともさんからの「マイボーム腺腫」の質問について、私はそれは「炎症であるから」と
いう趣旨のレスを書いておりますが、それは、私が俗称「マイボーム腺腫」は、「慢性
化した炎症」と日ごろから考えていたからです。

CAP という獣医学雑誌の2005年12月号に川島裕明先生訳、印牧信行先生監修で、
「眼瞼腫瘤の切除法と突出した第三瞼腺の整復法」というタイトルの記事が掲載さてい
ます。
この中で、眼瞼の腫瘤をマイボーム腺腫とは一律に扱っておらず、いろんなものを含め
て「眼瞼の腫瘤」として、v字切開やH 字切開の手法を紹介していました。
# この記事の中にも眼瞼結膜面に生じたマイボーム腺腫は写真で紹介されていました
  が、私が日ごろ遭遇する腫瘤とは、異なる形態でした。

また、昨年末のセミナーでのレジメでは、マイボーム腺腫という字句を用いられておら
ず、「霰粒腫の治療」の項目で、これがマイボーム腺腫のほとんどいう説明で、キュレ
ットによってちぎりとる、V 切開、H 字切開によって瞼の皮膚弁を形成して修復すると
いう手法が紹介されていました。(図版入りです)

これらのことがありましたので、自然発生的には腫瘍よりも炎症の方が多いはずですし
、臨床家の呼称している「マイボーム腺腫」は、まずもって「炎症」であろうという考
えで、ともさん宛てにレスしました。
つまり、臨床家が遭遇する眼瞼の腫瘤に対して、「マイボーム腺腫」と一律に呼んでし
まうことが、ようやく改められるようになってきたかという我が意を得たりの感があっ
たのです。

ですから、田口先生の最初の投稿を読んでも、田口先生は、字句のとおりに「マイボー
ム腺腫」と受け取ったんだとしか思いませんでした。
2度目の投稿で、病理にまわしていると聞かされて、ちょっと驚きました。本来の「マ
イボーム腺腫」にそんなにも遭遇しているのかと俄かには信じられませんでした。
しかし、田口先生は、信用の置ける先生ですから、その言は無視できません。

印牧先生達が、「眼瞼の腫瘤」という表現を採用したのは、原点の著者がそのように記
していたのか、監修の方でそうしたのか…。
マイボーム腺腫でないものが、それなりにあるからこそ、表現をそのようにしたと考え
ていましたが、田口先生が遭遇している数もそれなりの数になっています。
「ちょっと分からなくなった」とは、そういうことです。

私は今もって、マイボーム腺腫がないとは言いませんが、炎症の方が多かろうと考えて
います。
しかし、病理検査にまわしていなかったので、根拠を示すことができません。
田口先生と同じ症例を診ていれば、その症例については、結論を得ることもできますが
実際のところは、同じ腫瘤について論じているという保証もありません。

いずれにしても、事の帰趨は、動物の眼科医さん達の今後の仕事の成果を待たなくては
ならないようです。
したがって、まだ当分は「所謂マイボーム腺腫」という言葉とは付き合わなくてはなら
ないようです。


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