獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200605-195

ORCAさんへ
投稿日 2006年5月17日(水)21時26分 投稿者 はたの

獣医師でもプロパー専門家でもありませんがご参考まで。

 まず、なにをしていいか、いけないかは、条文から一意的に決まるものではない、という基本を誌っておかれるべきでしょう。
 解釈にしたって、担当官庁の見解、法律学者の見解はしばしば異なります。個別の事例であれば裁判所の判断が得られますが、一般論としてどうか、には通常、はっきりした答えは存在しません。
 判決にしたって、日本の裁判は原則として判例主義ですが、同時に自由心証主義でもあるので、ブレや移り変わりもあります。複数の判例を時系列順に並べてやっと傾向がわかるぐらいであり、やはり、決定的な答えは出ません。
 もっと現実的には、公判維持できそうかどうか、という検察の判断も挟まります。

 とはいうものの、条文からも、ある程度の限定はできます。法第17条の要点は、
・対象は政令で定める動物に限ること(とはいっても、政令は普通、『誰のどの定義による分類基準に沿ったか明確にした学名』までは言及しないので、あいまいさは残りますが)。
 つまり、たとえば、タマミジンコの診療を業務とすることは、同条ははなから相手にしません。

・対象とする行為は「診療を業務とすること」
 「診療」とは何か、「業務」とは何か、という定義によってここは大いに変わります。
 アドバイスの一部はそもそも不能犯として(というのも変な表現ですが)退けられそうですし、診療に当たらないとされる部分も多いでしょう。つまり、無免許の偽獣医師が、通常獣医師が行うようなことをしていた・・・のなら割はわかりやすいのですが、そうでない場合には簡単ではありません。人に置き換えてみても、体調が悪いという知人にドクダミや紅茶キノコを贈る、肩を揉んであげるといった行為が罪に問われるとは考えにくいですし・・・どこで線引きするかというのは微妙です。ましてアドバイスだけであれば、さて・・・
 また、除細動器に関連して役所の見解(善意の市民が行った場合、結果や経緯にかかわらず原則無過失。ニュース等でご存じのはず)もあります。これを獣医療にも延長できるか、ネット越しのやりとりにも延長できるかは議論の余地がありますが、実際問題としては、たとえ法理論上問題ありというのが大勢でも、まあ公判維持はできないでしょうね。たとえば、こちでも最近悲しい事例がありましたが、「胃捻転が疑われる書き込み」に対して「獣医師でない者が」『それは胃捻転であろう。緊急の受診が必要だが、どうしても受診できない場合、飼い主が開腹すべきだ』と書いたとして、法17条でいう「診療」として公判維持するのは大変そうです。
 最後は「業務として」という点です。業務、ないし業、の法律上の解釈は個々の法律でまちまちであり、法務省・総務省に確認した限りでは、異なる法を所管する各省庁間での定義のすり合わせは行われておりません。対価を得ることに主眼を置く場合もあれば、継続性反復性に着目する場合もあり、自動車の運転のように、それらと無関係な場合もあります。
 では獣医師法でどうか、といえば、先日プロキオンさんが書いておられたように、さまざまな歴史的経緯があって単純には割り切れませんから、おそらく、所轄官庁は明確な基準を示すことはないでしょう。「ケースごとに、社会通念に照らして判断する」といった、ずるい答えしか返ってこないと推察されます。Aさんの社会通念とBさんの社会通念が異なるからこそ法を引っ張り出す必要が生じるわけですが、そこでまた社会通念にぶつかるという循環的な構造をしているんです、日本の法制度というのは。そして、裁判官個人の社会通念がモノをいうわけですね。だからこそ、大物裁判官に関しては国民が馘にできることになっている・・・

 というようなハナシだろうと思います。
 ごく個人的な見解としては、獣医師を僭称しないかぎり、ネット上の相談が法17条に反するとは思いませんし、ましてや現実的に訴追されたり、敗訴して処罰されたりすることはないと思っています。診断っぽいこと、診療ってぽいことを避けるのは、法ではなく、マナーとかモラルの問題だろうと。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。