獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200605-294

ぽこさんへ〜いろいろ長文〜
投稿日 2006年5月27日(土)01時02分 投稿者 山下 貴史

ぽこさん、まずは26日10時の時点でぽこさんが抱いていた質問に答えたいと思います。私、獣医師をしております、山下と申します。

Q.フィラリア症以外の可能性はあるのか?
A.ありえると思います。ただし、急性フィラリア症(いわゆるベナケバ、VCS)に近い状況である可能性もあります。もちろん他の病気単独の可能性や、他の病気+持病のフィラリア症もありえるでしょう。

Q.フィラリア症の治療法は?
A.フィラリア症には現在、いくつかの選択ができるくらいの治療法があります。まずは、ワンちゃんの「今回の」原因を探りましょう。
 ちなみに、フィラリア症の治療を選択する際には、ミクロフィラリア(赤ちゃんフィラリア)の数や、心臓への成虫の寄生数(血液検査では分かりません、必ずエコーで確認します)、肺の状態(必ずレントゲンで確認します)、心臓の状況(エコーや心電図、血圧測定などで判断します)、全身の状況(血液検査やエコーなどで確認します)、ワンちゃんの状態・症状…等を必要か否か、などによって選択してまずはそのワンちゃんの状況を見極めた後にどこまで選べるか?が決まります。

Q.フィラリア症の外科療法は?
A.通常のフィラリア症では、オススメできるものではありません。通常は上にも書きました急性フィラリア症などの際に行なうものだと思います。しかし、過去にほとんど症状がなくて、食欲不振でおしっこの色が濃い(血色素尿ですが、いわゆるワイン色ではありませんでした)という子を抗原検査とエコーで診断をつけた後に外科処置を行なったことがあります。

Q.この子が飲めるフィラリア症予防薬はあるのか?
A.上記にも書きましたが、まずはその子の状態を把握することです。
ちなみに「一般的」には簡単にさわりだけ書くと・・・
フィラリア症の治療のひとつとして、イベルメクチン(カルドメック(チュアブルも)など)やセラメクチン(レボリューション〜国内は猫用がメイン〜)の31ヶ月以上継続して飲むことで、成虫駆除やミクロフィラリア駆除効果を期待できます。ミルベマイシンや注射のモキシデクチンはこの時急速にミクロフィラリアを殺す可能性があるので勧められません。
また、状況や体重・性格によってはメラルソミンという成虫駆除剤が有効な場合もあります。上記の薬に比べると早期に成虫を駆除するというメリットもありますが、裏を返せばイッキに成虫を駆除する分、処置前の状態や安静がどこまでできるかがポイントになり、場合によっては処置後お亡くなりになる可能性もあります。

いずれにせよ、フィラリア症の完全な治療法はなくて、フィラリアが心臓に寄生した時点で様々な心臓への影響が出ますから、心疾患の治療を始める場合もあります。ちなみにどの治療法を行なっても「急性フィラリア症」になってしまう可能性も秘めていますし、いつ発症するかは分からないと思います。急性〜になれば外科適応です。

ちなみに余計なことをひとつ…この場合に限らず、1番目にかかった医者よりも、2番目にかかった医者が「名医」になってしまうことが多く見受けられます。
今回の場合…例えばですが、「最初の獣医師をフォロー」すれば「抗原検査で『強陽性』が出ても、それはイコール『フィラリアの寄生数が多い』では『ありません!!』」し、8年間フィラリア症の患者さんをうまくコントロールできたこともよかったですよね。
「早く病院を変えていれば違う未来があったか?」というと微妙だと思います。

「この子のこと」というよりは、一般でのフィラリア症について書かせていただきました。もし、他のコメントが必要でしたらおっしゃってください。

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