獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200606-78

re兎 さん
投稿日 2006年6月5日(月)23時44分 投稿者 はたの

何も最初から決めてかからなきゃいけないということでもありませんし、決めた方針を堅持しなくちゃいけないというものでもありません。ふたつの方向性の間のどのへんでバランイスをとるか、妥協するか、適宜変えていっても良いのです。

 拙宅の例その一。大食いなネコがいました。他にもネコがいました。原則としてはドライの不断給餌なのですが、あまりにその一匹だけ太るので、個別給餌にする、そのネコだけ低カロリーのものにする、いろいろ試したあげく、ネコ全員に低カロリー、でも不断給餌、足りなくて痩せる個体がいないか監視、にしました。その後仔ネコを拾ったもので低カロリーとはいかず、成長期用や通常用に戻しました。
 個別給餌できっちりカロリー計算していた時はたしかに体重を抑制できましたが、あまりにイライラがひどく、短命でもいいから、に切り替えました。不断給餌ですと、餌のカロリーを変えても体重はほぼ動きませんでした。ネコとしては長くもなく、しかし特に短くもなく死にました。死ぬすこし前の血液その他の検査結果からして、太っていたことが寿命をいくらか縮めたのは確かと思われますが、最期は穏やかに過ごさせてやれましたし、悔いはありません。常に空腹なあまり満ち足りた気分で眠ることもできないような、何年か長い生活、よりはよほどマシだと思えますから。

例2。やはり大食いで、空腹になるとイライラして攻撃的になるイヌがいます。成長曲線もない雑種ゆえ、気づいた時には体重オーバー。低カロリーフード、寒天混ぜ、にして、イライラは、運動で解消を心がけつつ、けれど適正レベルだとどうしても攻撃的になるので少し太めで推移してきています。この数ヶ月急に老け込み、それに伴ってまた太ってきたので、微妙な調整中です。なるべく上でイラつかず心穏やかに過ごしてほしい、運動はだんだんつらくなる、重ければますますつらくなる、最期の日々のQOLには筋力がものをいう・・・

高野豆腐、寒天、3回食、いずれもけっこうではないですか。これはダメ、なんてことはありません。あれこれすりあわせしていけばいいんです。

肥満は最期の日々の難点にはなり得ます。私もそれはできれば避けたいわけです。しかし、途中太ってても老いれば痩せる個体もあります。痩せていても足腰立たなくなり、自力排泄困難になることだってあります。
 以前の一例のご経験から「絶対に肥満にはさせたくない」というのは、少し視野が狭くなっておられるように思います。その希望は兎さんの思いであって、ご愛犬のものではないのですから。
 同様に、
「寒天ゼリーや高野豆腐で空腹を補う行為は、短命のリスクを負う事になってしまうのでしょうか?
だとしたら、私にはどうしたら良いのか判りません。」
「嘔吐をしなくなってもこれでは駄目ですか?」というあたりからも、少しく、思いこみすぎておられるような感じを受けます。
 少なくとも、イヌは肥満をおそれません。自力排泄ができないと生活の質が下がるのも、「屈辱」からではないでしょう。おそらくはその獣医師は、思いやるつもりで言われたのでしょうが。単に、タイミングが合わないとか、くさい思いをするとか(これもイヌは屈辱には思いませんよ)、気持ちよく排泄できない、というだけのことです。

 いろいろなことをおそれているのは兎さんご本人ではありませんか?
 そうした不安をイヌに投影していませんか?

 意図的にゆっくり風呂にでもつかって、肩を回して深呼吸して、一歩ひいたところから、遠目に考えてごらんになるのもよいように思います。ご愛犬は独立した存在であって、兎さんの一部でないということや、ご愛犬も兎さんもいずれはし死ぬということや、諸々を。
 少しアキラメがにじむぐらいまの心持ちで、あんまりぎゅうぎゅうと絞らず、先のことを考えすぎず、ゆるゆるといきましょうよ。
 兎さんがカリカリしていることが、ご愛犬が吐く一因という可能性もまたあるのです。
 ケ・セラ・セラ、そのうちなんとかなるだろう、という無責任さもまた、少しはあったほうがいいんですよ。すべてを完璧にコントロールすことなんてできやしませんし、完璧にコントロールすることが生きる目的ではありませんし、完璧にコントロールしようとするあまり人のストレスをイヌに押しつけてもしかたありません。

 私だったら、折り合いがつくまではかなり多め、極端にいえば食べたいだけ与えて、そこかで改めて考えてみる、とするかもしれません。それからでも間に合いますよ。

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