獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200609-137

再度、ニャンさんへ
投稿日 2006年9月9日(土)10時43分 投稿者 プロキオン

>犬のパルボウイルス感染症をジステンバー、猫のパルボウイルス感染症を猫テンバーと いうのですね。

いえ、昨日も申しましたが、犬パルボウイルスは「パルボウイルス感染症」であって、「
ジステンパー」は、病原体(パラミクソウイルス)からして、まったく異なる病気です。
猫のパルボウイルス感染症を俗に「猫テンパー」と呼ぶことがあるので、混同されており
ませんか?という趣旨の発言でしたよ。

>猫のパルボウイルスはどのようにしたら殺せるのでしょうか?
 今まで頑張って癌と闘ってきたのに、猫テンバーで苦しむなんてことは避けたいので
 す。

殺せるかというだけであれば、消毒薬の中にきっちり浸漬しておけば、殺すことはでき
ますが、住居環境の中では、それも実施できかねるということで、頻繁に消毒するしか
ないですね。

>悪液質だと免疫が付きにくいのですね。。
 ワクチンを接種した場合、免疫がどれほど付いたかということはどのような検査で分か
 るのでしょうか?

免疫が付きにくいというよりも、ワクチンを接種してあって充分な免疫を保持していた
個体であっても、「悪疫質」に陥ったのであれば、免疫が有効に働いてくれないであろ
うということです。
簡単に言うと、免疫状態が云々できるほどの体力的に余裕のある状態ではないというこ
とになります。それが悪疫質です。
ですから、一般的には悪疫質ということであれば、ワクチンの効果は期待できないので
接種を勧める方も少ないということになります。
私が「駄目もとで」と述べたのは、ニャンさんの心情を慮ってのことです。ワクチンの
効果までは期待はできないです。
免疫がついたかどうかは、それぞれの疾病についての免疫抗体価を測定すれば、確認で
きますが、今の述べた理由で主治医の先生は気乗りされないかもしれませんね。

>ワクチン接種するとなれば、3種混合ワクチンですよね。うちの子のような状態で
 (癌、転移、悪液質、貧血、高齢)ワクチン接種をした場合(これほどのコンディショ
 ンでは接種することは少ないと思いますが)、命が危険となることは先生のご経験の中
 ではどの程度ありますでしょうか?

ここは、私が判断してはいけない部分ですね。主治医の先生の意見が優先です。一般的
には、接種しないという意見の方が多いと私ですら想像しますので。
ただし、接種したいという飼い主の希望であれば、私なら三種混合ワクチンとしてでは
なく、「汎白血球減少症」すなわち猫パルボのワクチンだけです。
昨日、申しましたように このワクチンは不活化ワクチンですので、病原体であるウイ
ルスは殺してありますから、これが原因で発病するということはありません。
しかし、免疫をつけるということは、体内に炎症を誘起させる必要があります。この免
疫をつけるための炎症が、患者である猫が悪疫質ということであれば、どの程度許容で
きるかといことが問題となるわけです。
したがいまして、ここでも主治医の意見が優先されなくてはならないのです。

私の経験の中からというお尋ねですが、私の患者の中で悪疫質という状態でワクチン接
種を希望された飼い主さんはおりません。


>また、ワクチンの副作用で、腫瘍ができることがあると聞いたのですが、これも怖いで
 す。癌の恐ろしさを知っているため、『腫瘍』という言葉に非常に恐怖心があるのす。
 先生はワクチン接種による腫瘍発生についてどう思われますでしょうか?

悪疫質という状態であれば、こちら心配をされてもしかたないことのように思います。

ワクチン誘発性の腫瘍というのは、それはもう20年も30年も前にアメリカやカナダ
で「白血病ワクチン」を接種すると白血病に罹患してしまうというのが、私の知る限り
では最初ですね。
これはワクチンの製造方法云々よりも、白血病のウイルスを保有している猫の検査がで
きなかったことも問題としてあったと思います。
現行の白血病のワクチンは、この頃のことを踏まえておりますので、メーカーの方でワ
クチンが原因であると言われないような種類のワクチンとなっています。
昨今、ワクチンの接種回数と関連してとりあげられる「線維肉腫」については、よく繰
り返し質問されるのですが、まず関係ないと考えております。
もともと、メーカー間の駆け引きで出てきた話ですし、当初は「線維肉芽腫」というこ
とであったはずです。曰く、「ワクチン中のアジュバンドである水酸化アルミニウムが
肉芽腫の細胞から検出された」と言う理由でした。ところが、この肉芽腫というのは、
ある別のサイト(動物衛生研究所の免疫病理学室長さんの開設されているサイト)では
この肉芽腫は免疫反応であって、病原体を長くその部位にとどめといて、有効な抗体価
をできる限り長く持続させるためのものという説明すらあります。
いつの間にか、「肉芽腫」が「肉腫」に置き換えられて、腫瘍が発生するとされてしま
いましたが、この腫瘍とて、今では相手がワクチンでなくてもビタミン剤でも抗生物質
でも起こりえること、すなわち、ワクチンよりも猫の体質に由来するという説も出てき
ています。
事の真相には、まだまだ時間がかかると考えられますが、私の病院や周辺の病院におい
てはそのような「ワクチン誘発性の腫瘍」には遭遇したことがありません。

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