研修医の時代にありましたよ。
もっとも、研修先の病院でというよりも、同じ区内の低料金を売り物にしている病院で
実施された手術でした。その病院では、卵巣のみの摘出の方が患者の負担が少なく日帰
りできるという触れ込みでした。

患者が様子がおかしくなって、私の研修先の病院を受診されたのですが、臨床症状から
子宮蓄膿症が疑われ、血液検査とレントゲン像もそれを示唆する結果でした。
しかし、飼い主さんが手術済みであるから、そんなはずはないと試験開腹を拒みました。
レントゲンで膿が溜まって腫れた子宮が写っていたのですが、納得していただけません
でした。
担当された先輩獣医師が、うちの診断はこうです。納得していただけないのであれば、
避妊手術をされた病院にご相談下さいと申し渡す結果となりました。

確かに理屈からいけば、卵巣が綺麗にそして確実に切除されていれば、起こりえないこ
となのですが、実際に問題としては、起こりえることであって、それゆえ、子宮と卵巣
の両方の摘出がスタンダードとして実施されてきている経緯があります。
獣医師としても、起こりえることであれば、自分の実施した手術ではあって欲しくない
とは考えますから、事後にトラブルの種を残すような手技はとりたくないということに
なります。
また、実際起きたのであれば、患者自身も災難と言えるのではないでしょう。