意見交換掲示板過去発言No.0000-200701-192
Re:Re:Re:猫のしこりと診断法 |
投稿日 2007年1月28日(日)11時38分 投稿者 プロキオン
最初の投稿に脂肪細胞腫とありましたが、どうも妙だなという感じがしていました。やはり、「肥満細胞腫」との勘違いでしたか。英語での表記であれば、まったく異なりますが、日本語では肥満と脂肪太りとがほぼ同一に見られていますから、耳から知った言葉ですと、誤解しやすいかもしれませんね。 肥満細胞自体は、これも脂肪細胞と同じく非上皮性の細胞なのですが、もともとが免疫反応に関わる細胞であるために体の各組織へと遊走します。白血球と同じく血液を介して内臓組織であっても、皮膚組織であっても、そこに必要があれば遊走して集まってきます。 この作用そのものは、正常な作用と言えます。 そして、この肥満細胞に異常が生じて、コントロールできない増殖を始めたものが、「肥満細胞腫」です。遺伝子に異常があるために細胞を検査してみると、その構造に正常な肥満細胞と違う所見を見ることが出来ます。細胞診は、そのための検査です。つまり、細胞診を実施していないと正常な肥満細胞なのか、それとも腫瘍化した異常な肥満細胞であるのかを鑑別することができないということになります。 また、この肥満細胞腫は、猫においては、皮膚・脾臓・肝臓・腹腔内リンパ節等に発生しやすく、ある程度年齢を重ねた猫に発生しやすいようです。 皮膚に発生したものは、円形もしくは卵円形を呈し、その表面は固いか、やや浮腫をともなって少しだけ柔らかいという感じです。少し進行すると紅斑や脱毛、あるいは潰瘍がみられるようになります。(最初の投稿にあった記述と同じような感じになります) この腫瘍は分類でいけば、非上皮性腫瘍であるため「肉腫」ということになりますが、腫瘍の分化の程度によって、良性〜悪性にまで分かれますので、肥満細胞肉腫という呼称は あまり使用されずに、そのまま「肥満細胞腫」として呼ばれ、その中で良性・悪性という判断をしています。名称そのもので悪性度にかかわる表現はしていません。 猫の皮膚に発生した肥満細胞腫は、比較的良性であることが多く、腫瘍の周囲に充分なマージンをとって切除することで、予後が期待できるようですし、切除後に副腎皮質ホルモン剤を服用して再発防止に努めるケースも多いです。 したがって、腫瘍細胞を残さずに綺麗に切除できるということは、猫にとってはきわめて重要なこととなります。 >では、触診は診断法としてどのようなものと考えたらよいのでしょうか。教えていただきたいと思います。 腫瘍そのものの診断としては、さして意味はありません。 結合組織に被包されているか、細胞の充実度(固い柔らかいで判断)とか、腫瘍の限界・境界等を把握するということになります。つまり、腫瘍を切除できそうか否かの検討材料と言ったところでしょうか。 >ニキビは炎症性のもので腫瘍ではない、とありますが、腫瘍という場合は癌も入るのでしょうか。 これは、ニキビと診断されているものが腫瘍であったとしたらという意味なのでしょうか? そのような質問でしたら、診断していないものが判断することはできません。 ただの分類的な質問であれば、腫瘍の中には「癌腫」も「肉腫」もありますし、当然、ただ○○腫と呼ばれる良性の腫瘍もあります。
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