意見交換掲示板過去発言No.0000-200703-167
Re:僧帽弁閉鎖不全症の強心剤・利尿剤の開始時期について |
投稿日 2007年3月23日(金)15時45分 投稿者 プロキオン
書き込み内容からだと、相当に進行してしまっているように感じました。 慢性心不全に対しては、日獣大の動物医療センターのT先生は、基本的戦略として次の3点をあげておられます。 1、心臓の心拍数を抑える。 交感神経の抑制:運動制限、βー遮断薬、ジギタリス 2、血液の処理量を抑える。 静脈内血液プールの増大:静脈拡張薬、動静脈拡張薬 血液量の低下:利尿剤、食餌療法(Na制限) 3、拍出時の負担を抑える。 動脈拡張(降圧):交感神経の抑制(安静)、動脈拡張薬、動静脈拡張薬、食餌療法(Na制限) # 重複している感じられるかもしれませんが、T先生のスライドのまま記載しておりますので。 そして、心不全に用いられる治療薬として以下の種類をあげておられます。 1、血管拡張薬 ACEI、ARB、硝酸イソソルビド、塩酸ヒドララジン、ニトログリセリン、DB−cAMP、 2、利尿剤 フロセミド、スピロノラクトン、サイアザイド、トラセミド 3、強心剤 ジギタリス、ピモベンダン、 4、βー遮断薬 アテノロール、カルベジロール 5、カテコラミン剤 ドバミン、ドブタミン 6、その他 テオフィリン、ジピリダモール、プレドニゾロン、食餌療法 最初にあげた基本的な戦略の考え方の説明があって、その後に用いられる薬剤の説明と使用のポイント説明があります。 さらさんがお書きになっている1年9ヶ月を経過していてその心拍数であれば、ACEIは充分に効果を発揮していると考えられる数値です。臨床的な症状の進行はこの病気の性格からいって、いたしかたないように思います。ここから先の強心剤や利尿剤の使用は、さらさんと主治医の先生がどのように利用していくかということのように思います。 これらの薬が「怖い」とか「難しい」とかではないと私は考えます。使用にあたって、どのくらい患者の傍でモニターしていることができるかだと思うのです。 体内動態における半減期の短い薬剤を選択すれば、過量ということはあまり考えなくてもよいのですが、反面、頻繁な投薬が必要となります。半減期の長いものであれば、この逆ですね。 慢性心不全という病気については、5〜6年後の生存率を考慮しておつきあいしていかなくてはならなし病気であって、気がついたときにはすでに登場の機会すらない薬剤もあります。どのステージでどのような薬剤を使用していくか、各々の獣医師も悩むところです。また、そのポイントがすべての患者に等しく意味をなすということでもありません。 耳にする目安、口にする目安が異なるのも当然のように感じますし、これがオールマイティと言われても逆に不安に思います。我々街の臨床医とすれば、さまざまなデーターをもっているわけではありませんから、手探りでもやってみるしかないということになります。 少し前の犬BBSなんかを見ると、私はどうも他の先生方よりも利尿剤を積極的に使用している部類に入るようです。文献的には他の先生方の方が正当のようなのですが、T先生も使用されているようで、少し安心したくらいです。このような治療には絶対的な正解などありませんし、時が過ぎていけばまた変わっていくことでしょう。 今、どのように臨んでいくかということにつきるのではないでしょうか。
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